テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
魑魅魍魎
2,380
魑魅魍魎
1,296
137
コメント
1件
ああ、読んだ読んだ……。第3話、めちゃくちゃ刺さったよ。夕焼けのグラウンド越しにキヨくんを見てるレトルトの視点が、もうね、静かに切なくて。新しいマネージャーの話を聞いたときの「――そうなんだ」、あの一呼吸の間が痛いほど伝わってきた。頭撫でられたのを見た後に「俺もあんな可愛かったら」って自分を責めるあたり、青春のどうしようもないもどかしさがぎゅっと詰まってた。次の展開が気になる……!
3話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
レトルトは教室で頬杖をつきながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
放課後の校庭。
オレンジ色に染まり始めたグラウンドには、サッカー部の賑やかな声が響いている。
「ナイス、キヨ!!」
「キヨ、決めろー!!」
笑い声と盛大に響くシュートの音。
風に乗って届く声援に、レトルトは自然と視線を向けた。
その先にいるのは――キヨ。
サッカー部のエース。
足も速くて、運動神経も良くて、顔もいい。
しかもやたら目立つ。
いつだって人の中心にいる。
今も仲間に囲まれて、楽しそうに笑っていた。
汗で少し乱れた髪。
夕陽に照らされる横顔。
ボールを追いかけて走る姿。
その全部が、やたら眩しい。
「……はぁ」
レトルトは小さく息を吐いた。
そして誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
「キヨくん、今日もかっこいいなぁ……」
その瞬間。
まるでタイミングを合わせたみたいに、キヨがふと校舎の方を見上げた。
視線が、合う。
『レトさーーん!!今のシュート見てたー?』
グラウンド中に響く大声。
サッカー部の視線が一斉にレトルトへ向く。
(見るに決まってるやろ)
そう思いながら、レトルトはキヨに手を振った。
しばらくして、練習が終わる。
キヨはタオルで雑に汗を拭きながら、校舎の方を見上げた。
すると窓際のレトルトと目が合う。
レトルトは小さく手を振った。
キヨも嬉しそうに大きく手を振り返す。
まるで“帰ろう”の合図みたいに。
それを見たレトルトは、ふっと笑った。
レトルトはこの時間が好きだった。
特別なことなんて何もない。
ただ、一緒に帰るだけ。
コンビニ寄って。 くだらない話して。 笑って。
気付けば家の近くまで来てる。
そんな何気ない時間が レトルトにとっては
特別だった。
“部活が終わったら、一緒に帰る。”
それが、キヨとレトルトの日課だった。
夕焼けに染まる帰り道。
部活終わりのキヨは、いつもより少しテンションが高かった。
制服のネクタイを緩めながら、楽しそうに話し始める。
『そういえばさー、最近 新しいマネージャー入ったんだよ』
「へぇ?」
レトルトは隣を歩きながら何気なく返事をする。
するとキヨは、そのまま嬉しそうに続けた。
『その子、結構気ぃ利くんだよなぁ。 飲み物とかすぐ準備してくれるし、練習めっちゃやりやすくてさ』
「ふーん」
『しかもなんか懐っこいんだよ』
キヨは笑いながら空を見上げる。
『なんか、可愛いんだよなぁ』
――その瞬間。
レトルトの足がほんの少し止まりかけた。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられて、 でもそんなの顔に出せるわけがない。
レトルトは慌てて視線を逸らした。
「……そうなんだ」
なるべく普通に、 何でもないみたいに。
「よかったじゃん」
笑えているか、自信はなかった。
キヨは全く気付いていない様子で、
『いい子が入ってきてくれたわ〜』
なんて笑っている。
その横顔を見ながら、レトルトは小さく息を飲み込んだ。
なんでこんな苦しいんだろう。
ただマネージャーの話をしてるだけなのに。
ただ、“可愛い”って言っただけなのに。
(――そんな顔で、他の人の話しないでよ。)
言えるわけない言葉を、レトルトは心の奥へ押し込めた。
昼間は、いつも通りだった。
キヨと一緒にふざけて、 授業中にくだらないことで笑って 先生に怒られて。
クラスのやつらに「さすが全身組だな! 」
と笑われる。
騒がしくて、くだらなくて、でも楽しい。
それがキヨとレトルトの日常だった。
放課後。
いつものようにレトルトは窓際の席に座り、教室からグラウンドを見下ろしていた。
夕焼けに染まる校庭にキヨの声が響く。
いつもなら自然とキヨを目で追ってしまうが
――今日は少し違った。
レトルトの視線は、キヨではなく 昨日聞いた“新しいマネージャー”へ向いていた。
部員全員ににこっと笑って飲み物を渡す。
(確かに、可愛いなぁ)
キヨも普通に笑いかけてる。
それを見るたびレトルトの胸の奥がざわついた。
「……なに見てんやろ、俺」
小さく呟く。
キヨが誰と話そうが、誰を可愛いと思おうが自由。
そんなこと分かってる。
なのに….。
グラウンドで笑うキヨを見るたび、胸が苦しくなった。
その時、 マネージャーの子がキヨにタオルを渡す。
キヨは「さんきゅー!」と笑った。
その笑顔を見た瞬間、 レトルトは静かに視線を逸らした。
何を話しているのかまでは聞こえない。
でも、 キヨが楽しそうに笑っていることだけは遠くからでも分かった。
マネージャーの子が差し出したタオルを受け取って、 何かを言い合って。
二人で笑って。
そして次の瞬間一一。
キヨが、ぽんっとその子の頭を撫でた。
優しく。
自然に。
その光景を見た瞬間、レトルトの胸がぎゅっと痛んだ。
苦しい。
悲しい。
なんでこんな気持ちになるのか、自分でも分かっている。
でも認めたくなかった。
レトルトはぎゅっと制服の袖を握る。
――俺も、あんな可愛かったら キヨくんは頭を撫でてくれるのかな。
そんな考えが浮かんでしまった瞬間、自分で嫌になる。
比べるなんてダサい。
嫉妬してるみたいで嫌だ。
でも、目を逸らせなかった。
しばらくして レトルトは静かに席を立った。
鞄を持って 誰にも気付かれないように、そっと教室を出た。
続く