インテリの迷走

色恋の相手がグループ内と限らないのは当然のことだ。

例えばラウール。

ショーで出会った、デザイン関係の仕事をしている現地の男性と頻繁にやり取りをしていい感じらしい。

聞かれてもわからないと思われているんだろう、楽屋でもビデオ通話をしてフランス語でやりとりをしている。随分と上達したようで、それは流暢だ。

みんなで子どもだと思って守ってきたラウールが恋。もう放っておくのは暗黙の了解だ。

唯一、ふっかさんだけがたまに母親のようにソワソワしては岩本くんに窘められている。

一方で、阿部ちゃんにも共演で知り合った先輩俳優さんがいる。

こちらはもう付き合ってもうすぐ半年になるようだけど、3ヶ月を過ぎたあたりから阿部ちゃんからは何となく幸せな雰囲気が消えたように思っている。

倦怠期か？と思ったけど、それともまた違うようだ。

あまり自分のことを話さない阿部ちゃんだから実際何か聞いたメンバーはいない。でも、どう見てもその人と付き合っている事が悩みの種になっている気がするのだ。

岩本くんに話してみると『人のプライベートを詮索するのは良くない』と言いつつ

💛「でも、俺も気になってる。あの人が好きって言ってたからって喜んで食べてお土産にもしてたあそこのロケ弁、こないだ手をつけなかったから」

🖤「そうだったんだ」

また何か気付いたら教えて、俺からも声かけてみるからと言われて『わかった』と答え、阿部ちゃんを飲みに誘った。

個室の居酒屋。

いい感じにお酒が入ったくらいのタイミングで『最近彼とはどうなの？』と聞いてみると、黙って首を横に振った。

💚「今は話したくなくて。うまくいってはないとだけ」

🖤「そっか、ごめん。色々あるよね。もし何か力になれる事があったら言って」

💚「うん……」

阿部ちゃんは何か考えているようだったが、パッと笑顔を作って『ありがと』と言うとグラスに残っていたお酒を一気に飲み干した。

💚「湿っぽくなっちゃったね、飲も」

🖤「うん」