「今日金曜日っしょ?」
「あ…うん、そうだね」
キヨくんはそう言ってスマホを取り出す。するとどこかに電話をかけ始めた。
「あ…俺違うとこにいよっか…」
グイッ
「ちょっ…!」
「いいから」
スマホを耳に当てている。どうやら電話相手は母親だったらしく、俺と話すときよりも少し砕けた喋り方で笑っている。その時の顔が印象に残っていた。ふわっと笑ったり大声で笑ったり。
なぜか隣に座らされた俺の方をちらっと見ながら会話を楽しんでいる。俺はドキッとして目を逸らした。別になんてことないんだけど、この距離感からのこれは、ちょっと心臓に良くないんじゃないかなんて思ったりして。
「でさ、話は変わるんだけど…」
その後も口調が悪くなってはいたが、楽しそうに話していた。
「じゃ、そういうことだから」
終始明るい声で喋ったあと、電話を切る。ふぅ、と一息ついたかと思えば、ずっと立ち上がって俺を見た。あの視線から開放されたと思ったのも束の間。
「今日、泊まってくわ」
「ん?」
「だから、母親に連絡したんだよ。今日友達んち泊ってくって」
「は…え…?」
「コンビニいこ。飯買いたい」
話のスピードが速すぎて全くついていけない。何を言っている?泊っていく?誰が?
「待ってって!」
「え?だめ?親御さん帰ってこないんでしょ?」
「そうだけど…そんないきなり…」
「もう仲良くなったし良いかと思って」
この人の行動力には驚かされるばかりだった。俺が困惑しているのをよそに、財布を持って外に行く準備をしていた。頼まれたら断れない性格の俺は、あまりの自由さに呆れつつも、キヨくんの後を追うように外に出た。
さっきまで降っていた雨は小降りになっていて、今なら外に出ても濡れることはなさそうだ。
「止んだね」
「…うん」
近所のコンビニまで歩いて10分。緊張した俺はほとんど言葉を発せなかった。それに気づいたか気づかないかわからないけれど、キヨくんもあまりたくさんは喋らなかった。
To Be Continued…