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雲ひとつない秋晴れの下
父の遺した土地に建てられた「ルーツ・ガーデン」は、晴れやかな開園の日を迎えた。
集まったのは、かつて行き場を失っていたシングルマザーたちと、その子供たちの弾けるような笑顔。
私は、父の形見の万年筆を胸ポケットに差し、壇上に立っていた。
「……ここは、誰かの支配を受ける場所ではありません。自分自身の人生を誇れるようになるための場所です」
拍手が沸き起こる中、私は会場の端で、異様な殺気を放つ一人の女性を捉えた。
安物のコートのポケットに深く手を突っ込み、肩を震わせて私を睨みつける女。
それは、かつて莉奈の「取り巻き」の一人であり
直樹と莉奈が仕組んだ架空投資に全財産を注ぎ込み、家庭を壊された被害者の一人だった。
セレモニーが終わり、私が一人で裏庭の植栽を確認していたとき、彼女は音もなく近づいてきた。
「……あんただけ、どうしてそんなに幸せそうなの?」
彼女の手には、錆びついた果物ナイフが握られていた。
「私の夫は借金を苦に失踪したわ。子供は施設。全部、あんたの旦那とあの女のせいよ!なのにあんたは、その加害者の妻だったくせに、今じゃ聖女様気取り!? 許せない……!!」
彼女が突き出したナイフを、私は避けることもせず、ただ静かに見据えた。
「……殺せば、あなたの人生は取り戻せるの?」
私の冷徹な問いに、彼女の動きが止まる。
「……私の元夫、直樹があなたから奪ったのは、お金だけじゃないはずよ。自分を信じる力、未来を描く権利」
「……それを奪ったのは直樹だけど、今、それを『殺人』という最悪の形で復讐しようとしているのは、あなた自身だわ」
「うるさい! あんたに何がわかるのよ!」
「わかるわ。……私も、1円の重みに震え、死ぬことばかり考えていたから。…でも、私は決めたの。最高の復讐は、自分が幸せに生きてやることだって」
私はゆっくりと彼女に歩み寄り、その震える手からナイフを取り上げた。
「……彼女をオフィスへ。…彼女の失った資産と、今後の就労支援の計画を、1円の誤差もなく算出してちょうだい」
「詩織さん……いいんですか? 彼女はあなたを……」
「ええ。……復讐の連鎖を止める方法は、相手を叩き潰すことじゃない。…私はそれを止められたらそれでいいわ」
彼女はその場に泣き崩れた。
【残り39日】
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