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#魔道具職人
こはる
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フユめん
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#幻想郷入り物語
KOKO💖💫🦊
51
「──……で、やらかしちゃったって、何をしたの?」
しゃがみ込んだアオイを引っ張り上げて、ソファに座らせたカレンはそう尋ねた。
カレンは現在、出来の悪い弟を持つお姉さんモードに入っている。
「……王様…にね」
「うん」
「急いで……プティングを持って行ったんだけど、ね」
「うんうん」
「部屋に入った瞬間、勢いあまって……」
「あまって?」
「王様の顔にぶちまけちゃった」
「っ……!!」
それは確かに、大変なやらかしである。
想像を絶するアオイの告白に、カレンは言葉を失った。しかし、その肩はプルプル震えている。
(ちょっと、なにそれ!見たかった!)
あの無駄に美しい顔に、プティングがべったり付いた姿を想像して、カレンは笑いをこらえるのに必死だ。
しかしアルビスは、この帝国にとったら畏怖の権化。
彼の機嫌一つで、人一人の人生など簡単に左右されてしまう。
アオイだってこの帝国の人間だ。例にもれず、自分が犯した失態にガクガク震えている。
(……悪いことしちゃったなぁ)
カレンは、アオイにお遣いを頼んだことを、ものすごく後悔した。
とはいえ実際のところ、カレンより遥かに運動神経がいいアオイが、そんな失態をするわけがない。
アルビスだって、飛んできたプティングを避けるなり、魔法で消すなりできたはずだ。
冷静に考えれば、そんなことすぐにわかる。
しかしカレンは、アオイを慰めることに全神経を注いでいて、そこまで気が回らなかった。
「ねぇ、アオイ。一つ訊いてもいーい?」
「……うん。なぁに?」
「一応、アイツに謝ったんだよね?」
「も、もち……ろん……。あや、謝った。うん、謝った……はず」
何やら歯切れの悪い返事であるが、カレンは深く考えなかった。
「なら、いいじゃん」
「は?……はぁぁぁ!?」
まさかの返答に、アオイは素っ頓狂な声を上げた。続いて、カレンにぐっと顔を近づける。
「いいじゃんって、何がいいの!?ってか、それだけ?それで終わり??」
「う、うん」
アオイの剣幕にたじろぎながらも、カレンは何度もコクコクと頷いた。
そうすれば、アオイはカッと目を見開いた。
「終わりなわけないじゃん!僕、首がなくなるよ!?いいの?首のない僕になっていいの!?カレン様!!」
血走った目でまくし立てられたけれど、カレンは「うーん……」と曖昧な顔をする。
だってアルビスは容赦ないところはあるけれど、変なプライドは持っていない。ドジった程度なら、謝りさえすれば許してくれるはずだ。
それに彼は、アオイを殺さない。自分が「殺さないで」と願ったから。
……と、カレンはアオイの身の安全について絶対の確信を持っているが、当の本人は不安で仕方がないらしい。
少し悩んだカレンは、こんな提案をした。
「なら、しばらくここに居たら?」
「……は?」
「ここならアイツはやってこないし。ほとぼりが冷めるまでここにいなよ。次のバザーの打ち合わせもしたいから丁度いいじゃん」
ね?と、カレンは同意を求めるが、アオイは無表情で首を横に振った。
「カレン様……本妻の部屋に側室が居座るって、普通に考えてナシよりのナシでしょ」
「そう?別にいいじゃん」
「良くないし。っていうか、そんなん王様にバレたら、僕、本当に首飛ばされるよ……」
「だから、そうならないために、ここにいなよって言ってるんじゃん」
呆れ声を出すカレンに、アオイはこんなはずじゃなかったと言いたげに、「ぐぬぬっ」と呻いた。
*
一方その頃、ソファの後ろで、二人のやり取りを見守っていたリュリュは、アオイの企みに気づいていた。
おそらくアルビスとカレンを、直接会わせたいのだろう。
何のために?という疑問はあるが、アオイはカレンとアルビスに恩がある。刷り込みのように懐いている。
そして、無条件に慕う二人を結び付けたいという、子供みたいな願望を持っているのも知っている。正直、「やめとけ」と言いたい。
しかしアオイは、縋るような眼差しをリュリュに送り続けている。無視しても、ずっと送り続けてくる。
これがヴァーリからだったら「ウザい、死ね」と笑顔で言える自信があるが、色々世話をしてあげた手前、アオイには少なからず情を持ってしまっている。
そんな理由から、カレンのためだけの侍女リュリュは、葛藤した。無表情を貫きながらも、ものすごく悩んだ。
そして、一度だけアオイに助け舟を出すことを選んだ。
「アオイ、陛下はどのようにお叱りになったのですか?」
感情の乗せぬ声で尋ねれば、アオイは待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
「あのね、王様に食堂に呼び出されちゃったんだよっ。ものっすごく怖い顔をして!だからカレン様、一緒に来て!お願い!!」
ガバッと勢い良く頭を下げたアオイを見つめるカレンは、とても嫌な顔をしてる。
「……無視でいいんじゃない?」
「カレン様ぁー」
そんな殺生なと、アオイは泣き言をいう。しかしこのチャンスを逃がしてたまるものかと、アオイは説得を試みた。
「僕はカレン様のものじゃん。僕が呼び出されたら、カレン様も一緒に行かなきゃ駄目なんじゃない?」
なんだその持論。意味わかんない、とリュリュは心の中で突っ込みを入れた。
カレンもリュリュと同じ気持ちのようで、不可解な顔をして首を傾げている。
「……私、アオイの保護者になったつもりはないんだけど」
「いいじゃん。あんま深く考えないで、チャチャッと済ませてこようよ!」
最終的に説得を放棄したアオイは、ゴリ押しをした。
異世界に強制的に転移させられたカレンにとって、アオイの存在は大きい。加えて元の世界で弟になるはずだった冬馬に面影が似ている。
そういった理由があり、ついアオイを甘やかしてしまう。
「わかった……嫌だけど、一緒に行くよ」
しぶしぶ立ち上がったカレンを見て、アオイは、ぱぁぁぁっと顔を輝かせる。
ついさっきまでこの世の終わりのような顔をしていたのに、アオイは散歩に行くワンコのようにウキウキを隠せない。
「……アオイ、気づかれますわよ」
お節介だとわかりつつ、リュリュはアオイに忠告をする。そうすればアオイは、テヘッと舌を出して笑った。
その調子の良さが、義理の兄に似ていて──リュリュは、なんかちょっとイラッとした。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。番外編③、拝読しました。 アオイがまさかのプリン顔面直撃!って思わず笑っちゃいました。カレンが笑いをこらえてるシーン、めっちゃ可愛くて好きです。でも「首がなくなる」って全力で怯えるアオイと、それを「いいじゃん」で流すカレンの温度差が絶妙でしたね。 リュリュがアオイの企みに気づいてるのに、つい助け舟を出すところ、「ヴァーリだったら『♡♡♡』って言えるのに」って心の声がリアルで…。確かにちょっとイラッとするタイプの調子良さだ(笑)。でもそんな憎めないキャラがこの作品の魅力ですよね。 次も楽しみにしてます🌙