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阿炎快空
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リユ
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どうも皆さん、こんにちは! はじめましての方もいるかもしれないので、まずは自己紹介を。
私の名前はオーマ。
恩人である中学生、守谷修さんの家で飼われている雌のサビ猫です。
とは言っても、こうして自己紹介ができていることからもおわかりの通り、ただのサビ猫ではありません。
皆さんの暮らしている世界とは異なる〝堺の世界〟という場所で生まれた私は、こうして皆さん同様、言葉を喋ることができるのです。
その他にも〝堺の世界〟の猫には、死んでも蘇ることができたり、口の中に広がる異次元に物を収納できたりといった便利な力があります。
しかし——まあ詳細は省きますが、いろいろあった末(本当にいろいろありました)、私は皆さんの世界の猫と異なるのは勿論のこと、〝堺の世界〟の猫とも異なる第三の存在へと生まれ変わったのです。
結果、残念ながら先程あげたような力は失ってしまいましたが、代わりに新しく得たものもあります。
まず、一つ目は背中の翼。
天使のようなこの翼は、普段は体内に収納することができます。
今の私はこの翼の恩恵によって、鳥のように自由に大空を飛ぶことができるのです。
そして、もう一つは透明化の力。
私は自分の意志によって、体を透明にすることができます。
しかも、その状態では幽霊のように、物体を通り抜けることも可能なのです。
どうです、ちょっとしたもんでしょう?
——さて。
今回お話するのは、そんな私の、とある休日のお話です。
休日といっても、ご存知の通り私は猫ですので、「お前は毎日が休日だろうが」と思われるかもしれません。
それは実際その通りなのですが、私は修さんのご両親の前では、所謂〝普通の猫〟の振りをしています。
なので、二人が家に居る土日(修さんの家は共働きです)は、私はうっかり喋ったりしないように気を張っている状態です。
即ち私自身の感覚では、家で留守を任されている月曜から金曜の五日間こそが休日なのです。
その日——私は一匹きりの居間で、器用にリモコンを操ってドラマの鑑賞を楽しんだ後(今ハマっているのはドロドロとした昼ドラです。私の見立てでは、主役の女優さんはこの先大物スターになりますよ)、ちょこっとお散歩に出かけることにしました。
体を透明化して、家の壁を通り抜けます。
まさかパパさんもママさんも、私がこうやって休日に外を出歩いているとは夢にも思わないでしょう。
背中に真っ白な翼を生やすと、私はふわりと宙へ浮かび上がりました。
こちらの世界に来たばかりの頃は、こっそり修さんの学校へついて行ったりもしていたのですが、他の生徒さん達の前で修さんと話をするわけにもいかないので、すっかり飽きてしまいました。
なので最近は、少しずつ行動範囲を広げ、何か面白いものがないかを探しているのです。
私は住宅街の上空を飛び続け、まだ行ったことのない隣町を目指していました。
空は快晴。
真っ白な雲が、私の進行方向とは逆の方へと流れていきます。
と——暫くすると前方から、私と同じような翼を生やした白黒猫がこちらに向かってくるではありませんか。
少しだけ迷った末に、私は透明化を解除し、姿を現しました。
白黒猫は一瞬ビクリと体を震わせて硬直した後で、私の近くまで翼をせわしなく羽ばたかせて近寄ってきました。
「びっくりしたー。いやー、初めてっスよ。自分みたいに翼の生えてる猫に会ったのは」
どうやら彼——声から察するに雄猫のようでした——には、私のような透明化の力は無いようでした。
「初めまして。私はオーマ。〝逢魔時〟のオーマです。この毛の色が、昼と夜が入り混じっているように見えるでしょう?」
「ちょ、何スかそれ——めっちゃ格好いいじゃないっスか」
ずるいなあ、と白黒猫は悔しそうに溜息をついて言いました。
「自分の名前はモノ。〝モノクローム〟のモノっス。どうぞよろしく」
話を聞いたところ、モノさんには私のような、透明化の力は無いとのことでした。
道理でびっくりするわけです。
その代わり、彼は私にはない特殊な能力を持っていました。
それは、相手の認識に作用する力。
彼が飛んでいる姿を見ても、大半の人は「あー、猫が飛んでるなー」と思うだけで、それが異常なことだとは気が付けないらしいのです。
「まあ、流石に話しかけたりすると悲鳴をあげちゃいますけどね。あと、霊感が強い人とかには効き目が薄いみたいっスねえ」
モノさんは私とは違い、元々こっちの世界で生まれた野良猫だったそうです。
気が付いたら、翼を生やしたり、言葉を喋ったりできるようになっていたんだとか。
「なんとなーく、車に轢かれたような記憶はあるんスけどねー。気が付いたら、こんなことになってて」
「あ、車にだったら、私も轢かれたことがありますよ!」
「お、マジっスか!?」
「なんかアレ、ぶつかる直前に世界がスローモーションになりません?」
「めっちゃわかるっス!『あ、これは避けられないなー』って、どっか俯瞰で眺めてる自分がいますよねー」
あるあるトークでひとしきり盛り上がった後、モノさんは私に言いました。
「そうだ——これから『猫会議』があるんスけど、オーマさんも来ませんか?」
コメント
1件
わあ、猫の一人称でここまで世界観がすんなり入ってくるって、すごく自然な語り口ですね!オーマの軽妙な感じとか、「あるあるトーク」で盛り上がる場面とか、思わずにっこりしちゃいました。モノさんの認識に作用する能力も気になるし、猫会議ってなんだろう……続きがすごく楽しみです!