テラーノベル
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遅い時間帯の新幹線は空いていた。
座席についてからも瑞奈に連絡を取り続けているのだが、相変わらず反応が無い。スマホ画面と車窓とに、交互に目を配ることを繰り返していた。
車窓は鏡のように車内の明かりを反射させていた。顔を近づけると、不安気な瞳が真っすぐに俺を見返してくる。
目を閉じかけた時、瞑目は逃げなんじゃないかと思い直した。瑞奈を支える俺がしっかりしないでどうする。
窓に映り込む自分を睨む。今度は鋭い視線が俺に『腹をくくれ』と迫ってきた。頷いた。
大丈夫、その表情だ。怖がるな。手を鉄砲のようにして、こめかみにあてた。心の中で「バン」と唱える。
長野駅で降り改札を抜けると、俺は脇目もふらずに駆けた。水気の多い空気が肌にじっとりまとわりついてくる。すぐに汗が全身から吹き出した。鼻腔をくぐる田舎都市特有の緑のこもった匂いが、昼間よりも強かった。
早く瑞奈に会いたい。
会って、大丈夫だ俺がいる、と伝えたい。
勝った、決勝に瑞奈を連れていける、とも言いたい。
日中あれだけ走った俺の足が、瑞奈の実家が近づくにつれて軽くなる。瑞奈に会える嬉しさで昂揚し、走っているうちに笑顔の瑞奈しか浮かばなくなっていた。声を聞きたかった。匂いを、温もりを感じたかった。
走る足の腿を高く上げ、アスファルトを強く蹴る、蹴る。腕を振る。いつしか俺は全力疾走していた。
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