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第2話「最弱勇者、王に謁見する」
「ひざまずけ、勇者アレス!」
聖光教国――栄光の王城、その玉座の間。
大理石の床が眩く輝き、赤き絨毯の果てに鎮座するのは、この国を治める王・ラザリオ七世。黄金の冠を被り、威厳あるその瞳でアレスを見下ろしていた。
だが――その視線には期待の色など、ひとつもなかった。
「……ふん、ステータスがオール1の勇者など、我が国の記録に前例がない。まさかこの聖なる召喚の儀で“失敗”が起きようとはな」
「……」
アレスは立ったまま黙っていた。
(やべえ、完全に外れ引いた扱いだこれ)
スキル〈最強〉の効果は自分にもわかっていない。まだ一度も試していないのだから当然だ。しかし周囲の評価は、レベル1・オール1の数字で完結していた。
「お前には、前線に立つ資格はない」
王が宣告する。
「今後は王都での訓練生活を送るがよい。最低限の生活は保証する。だが、実戦配備は――まず無理だと思え」
「ちょ、ちょっと待ってよ王様!」
そう口を挟んだのは、側近の若き女性魔導士だった。名はリディア。召喚の儀を取り仕切った責任者のひとりであり、王に仕える側近の一人だ。
「確かにステータスは低いですが、スキル〈最強〉というのはただの名ばかりでは……!」
「リディア、黙れ」
王の厳しい声が玉座の間に響いた。
「スキルの中には効果が曖昧な“外れ”も多い。最強、などという名に踊らされるほど我々は愚かではない」
リディアは悔しそうに唇を噛んだ。
アレスは内心苦笑する。
(まあ……そりゃそう思うよな。俺だって自信ないし)
それでも、彼は一歩前に出た。
「……それでも、俺はこの世界でやるって決めた。地球も、全部消えたんだ。今さら、引きこもってる場合じゃない」
王は目を細めた。
「ならば、勝手にするがいい。だが、国の支援は最小限とする。そなたに過剰な期待はできぬ」
アレスは深く頭を下げた。
「ありがとうございます、陛下」
そしてその夜、アレスは王都の外れにある古びた宿舎に通されることとなる。配備されるのはボロ剣一本、防具なし、食事は質素なパンとスープのみ。
しかし――彼は静かに笑っていた。
「やるよ、俺。“最強”ってのが本物かどうか……試してやる」
そして翌朝、彼は“奴隷市場”へと足を運ぶ。仲間を探すために。
その先に、運命の出会いが待っているとも知らずに――
《第3話へ続く》