テラーノベル
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灰色の霧が立ち込める魔界の道を抜け、アゼリオン・ルシオンはついに冥府の門にたどり着いた。
巨大な石の門には威圧的な魔紋が刻まれ、周囲には試験に挑む数多の悪魔たちがひしめき合っている。
空気は重く、鉄の匂いと魔力の気配が入り混じり、足を踏み出すたびに心臓が高鳴った。
羽を封印したネックレスの重みを胸に感じながら、少年は意図的に震えを抑えて歩き出す。
一歩一歩が、自分の覚悟を確かめるようで、耳に響く鼓動が緊張感を増していく。
門の近くで、騒がしい声が耳に入った。
「おい、田舎者め、冥府の試験に来る資格なんてねぇだろう!」
周囲の悪魔たちが嘲笑い、小柄な悪魔を取り囲んでいる。
その小柄な悪魔は気が強く、反撃しようと歯を食いしばるが、力が足りず、すぐに押し負けそうになっていた。
胸の奥には悔しさと誇りが混ざっている。必死に立ち上がろうとするが、素直に助けを求めることはできず、顔を真っ赤にして俯く。
少年がゆっくり近づき、周囲の悪魔を威圧する様子を見た瞬間、小柄な少年の胸に小さな火が灯った。
「…す、すごい……」
声には出さず、視線だけで憧れを伝える。
強がりながらも、その目は純粋な尊敬と信頼で輝いていた。
少年は盾や剣を使わず、力強く敵を押し返す。
小柄な少年は思わず口をつぐみ、頬を赤らめた。
「大丈夫?」
少年は声をかけ、手を差し伸べる。
その手は、敵を押しのけるためでも、自分の力を誇示するためでもない。ただ、困っている者を守ろうとする純粋な意思からのものだった。
だが、小柄な少年は怒りと照れで目を真っ赤に染める。
「くっ…、べっ、別にあんたのせいで助かったわけじゃないんだからな!」
そう叫ぶと、勢いよく手を振り払って走り去った。
少年はその後ろ姿を見つめ、微かに笑む。
手は届かなくても、少年の心には、自分の覚悟や行動が届いたことを感じていた。
門の向こうには、さらに強力な試練と、魔王を含む冥府の権力者たちが待っている。
今、アゼリオン・ルシオンはただの少年ではない。
羽を封じ、名前を背負い、他者を守る覚悟を持った者――誰もが憧れる存在だ。
一歩を踏み出すごとに、霧の奥で待ち受ける試練が静かに彼を呼んでいた。
そして、田舎出身の小柄な少年も心の奥で誓う。
「くそっ…俺も、強くなりたい……!」
照れ隠しの言葉に騙されず、その胸にある純粋な憧れは確かに燃えていた。
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