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陽光が差し込む午後のダンスホール。
シャーロット様は、私の腰を抱き寄せたまま意地悪く口角を上げた。
「お仕置き」以来
彼の独占欲は隠されるどころか、より露骨に、そして愉悦を孕んだものへと変わっていた。
私が恥じらって視線を逸らしたり、強引な彼を拒もうとしたりするたび
彼は満足げに目を細めて私の反応を愉しむ。
(本当に……性格が悪いんだから)
そう毒づきながらも、レッスンが終わった後、ふと思ったのだ。
彼に救われ、こうして世話を焼かれているのも事実。
そこでコミュニケーションがてら
今日くらいは私が彼にお茶を淹れてあげよう、と思った。
「……シャーロック、少し休憩にしない? 私がお茶を淹れてあげる」
「お前が? …ただのお湯にするなよ」
彼は意外そうに眉を上げたが、反対はしなかった。
私は不慣れな手つきでワゴンに向かい、熱いお湯をポットに注ごうとした。
その時───
「あつっ……!」
手元が狂った。
沸騰したてのお湯と茶葉が混ざった液体が、盛大にワゴンの上で跳ね、私のドレスの裾へと降りかかる。
「きゃっ!?」
「おま、何やってるんだ…っ!」
鋭い声と共に、シャーロット様が瞬時に駆け寄ってきた。
彼は苛立ちを隠さず、私のドレスに広がった茶渋をこれ以上肌に浸透させないよう、ハンカチで乱暴に、けれど手早く拭い取った。
「火傷は……ったく、余計なことをするからだ。さっさと着替えてこい。ここは俺が片付ける」
「ご、ごめんなさい……!」
彼の冷たい一瞥に射すくめられ、私は逃げるように部屋を飛び出した。
急いで新しいドレスに着替え、震える足でホールへと戻る。
床は既にきれいに拭き取られていたが
中央に立つシャーロット様の背中からは、凍てつくような拒絶のオーラが漂っていた。
「……ごめん、シャーロット」
「エルサ…お前は自分が何をしたか分かっているのか」
振り返った彼の瞳は、いつにも増して険しかった。
「不慣れな者が熱湯を扱うなど、無謀を通り越して愚行だ。もし火傷を負って、その肌に消えない傷でも残ったらどうするつもりだったんだ。お前の不注意がどれほどの損害を招くか、少しは考えたらどうなんだ」
「……っ!」
思わず肩が跳ねた。
向けられたのは、ただの「叱責」ではなかった。
突き放すような、底冷えのする冷たい言葉。
私はただ、彼と少しでも穏やかな時間を過ごしたかっただけなのに。
あんなに熱く抱き合って、少しは距離が縮まったと思っていたのは私だけだったのか。
そのあまりの冷徹さに、張り詰めていた糸がプツリと切れてしまった。
「……っ……ぅ……」
視界が歪み、一粒、また一粒と、大粒の涙が頬を伝って落ちる。
「泣くな」と怒鳴られるのを覚悟して、私は顔を伏せた。
ところが。
「っ? ……エルサ?」
シャーロット様の声が、驚いたように裏返った。
「…っ、な、なんでそんな酷い言い方しかできないのよ…っ!た、たしかに…不注意した私が悪かったけど…そんなに言われたら…辛い」
次の瞬間、強い力で肩を掴まれ、私は彼の胸の中に強引に引き寄せられた。
ドクドクと、彼の心臓が驚くほど速く波打っているのが伝わってくる。
「…っ?、シャーロット……っ?」
「…っ、言い過ぎたのは、謝る……」
あんなに傲慢だった声が、今は激しい動揺を隠しきれずに震えている。