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※学生パロです
周りの登場人物や生い立ちなどなど全て架空のお話です。
『君、なんで泣いてるの?』
『っ…か、帰りみち、わからな、く、なっちゃって…っ』
『おれが一緒に探してやるから』
『ほん、と?』
『だから、ほら。泣くなって。かわいい顔が台無しだよ』
『…うぅ、ぼく、おとこのこだよ、』
『えぇ!?女子かと思った!』
『……。』
『ご、ごめんって!』
ほら、おいでと優しい声と差し伸ばされた小さな手にいつの間にか涙は止まっていてその手を小さく握り返した。
子供の頃に僕は、あの男の子に生まれて初めて恋心を抱いてしまっていたんだ。
鳴り響く目覚まし時計を止めて時刻を確認する。まだ少し眠気があって欠伸をしながらも上体を起こす。カーテンを開けて部屋に日差しを迎える。
「懐かしい夢見ちゃったな」
起きたら大抵なんの夢を見たのか忘れるけど、今朝は鮮明に覚えている。昔、あの子と初めて出会った思い出の一つでもあるから。忘れたことはない。迷子になった僕を助けてくれたあの時以降もよく会って遊ぶようになった。
「ばぁうくん、元気にしてるかな」
いつの日かを境にばぁうくんから遊びを断られる日が何度かあって、最後に会った日には親の都合で引っ越すことになって会えなくなることを告げられてとても悲しかったことを覚えている。せめて見送りたいと言ったのも大丈夫と断られたからきちんとしたお別れも出来なかった。なんであの時連絡先とか引越し先とか聞いていなかったんだと過去に戻って子供の頃の僕に言ってやりたい。
ばぁうくんと会えなくなって気がついたら僕は高校生になっていた。否、今日から高校生デビューである。
「はあ…緊張するなー…」
初めの環境や知らない人たちと関わることがあまり得意ではない僕にとって最初の試練である。身支度を済ませて軽く朝ご飯も食べたらもう行くしかないと玄関のドアを開けて「いってきまーす!」と外へ端を踏み入れた。最寄りの駅から電車に乗り目的地である駅に降りて通学する。
「てーるちゃん!」
「あ!まひちゃんおはよー!」
「緊張してない?大丈夫?」
「緊張してるよ〜、まひちゃんが居なかったら行けてないよ僕」
「まあ、てるちゃんは恥ずかしがり屋さんだもんね!」
明るく声を掛けてきた彼は僕の唯一の親友であるまひとくん。優しくてお菓子が大好きで今日も今朝から棒付きキャンディーを咥えながら登校している。きっとあのカバンの中にもまひとくんお気に入りのお菓子が入っているに違いない。先生に没収されなきゃ良いけど。
2人で並んで歩いていると周りにも同じ制服の人たちが増えてきて、道の先に僕たちがこれから通う学校が見えてきた。校舎に入ると同じ場所に人集りが出来ていていた。おそらくクラス分けの貼られた紙をみんな見ているのだろう。なんとか人の分目を辿ってクラスの確認をする。
「まひちゃんの名前なーい…」
「でもでも隣のクラスだね!」
「えぇー…」
「ほら。落ち込まないの!お昼一緒に食べよ、ね?」
「…絶対ね!」
僕のクラスの人たちほとんど知らない人で不安が募る中、僕は目を疑った。“〇〇ばぁう”という表記があり、当時遊んでいたあのこと同じ名前を見つける。
ば、ばぁうくん!!?でも、名字違うし…人違いかな??
「どうしたの?てるちゃん?」
「え、あ、ううん!何でもないっ」
動揺しつつもまひとの前で平然を保つ。てるとの中はある人物で頭がいっぱいの中、自分のクラスの前までやってきたところで隣クラスのまひととここで別れる。教室に入ると顔見知り同士の子たちと話している姿や自己紹介をしている子も居たが、探していた人物の姿は見当たらない。
やっぱり、人違いだったのかな?
やがて、クラス担任が教室に入ってきて各自自分の席に着く。せめて隣の子に挨拶だけでもしようと隣を確認するが誰も座っておらず空席だった。あれ、来てない?
担任が出席を取る中、ばぁうの名前が呼ばれていたが返事がなかったので先生も休みかと呟いていた。おそらく僕の隣の席の子のことらしい。
来てくれなきゃ確認出来ないじゃん…。と、てるとのもどかしい気持ちだけが残る。
ー…ガラガラガラ!!
勢いよく教室の扉が空いた音にクラスの子たちもそちらに目を向ける。扉を開けて立っていたのは派手な赤髪をした男。学ランの前ボタンが全部空いて赤いシャツが目立ち、両耳にはピアスが空いている。高校生の校則を全て無視したような格好だった。しかし、その顔立ちはてるとが昔遊んでいた彼だった。
「すんませーん。遅れましたー」
「お前なぁ…新学期早々遅刻か?」
「10分くらいだから大目に見てよ先生」
「ったく、お前はまた留年したいのか?」
「はいはい、真面目に頑張りますよー」
そうだ、確かばぁうくんは一個上で居るとしたら上の学年だ。出席日数が足りなかったのか、成績の問題かは分からないけど。
先生から席に案内を受けてこちらへ近づいて来る。なんて声をかけよう。久しぶりって挨拶したら僕のこと気づいてくれるだろうか。
だけど、僕は何故か凄くドキドキしていて顔を俯いたままばぁうくんに顔を合わせられなかった。隣ので着席する音で、ばぁうくんとの距離が近くなり次第に顔も紅潮していたような気がする。
「……ねぇ、」
「!!」
隣から僕を呼びかける声に反応しゆっくりと顔を上げてばぁうくんを見つめ返した。
「な、何?」
「………あのさ、ペン貸してくんない?」
「…え?ペン?」
「家に忘れてきてさ、持ってる?」
「あ…うん…どうぞ。」
「どうも。」
ばぁうくんはペンを受け取ると前に向き直してしまった。僕と顔を合わせて話をしても気づかれなかった。単純に気づいていなかったのか。
もしかして、僕のこと忘れちゃったの、かな?
ショックを間に受けて同時に一気に恥ずかしさが込み上げてきてここから逃げ出したくなった。
続く。