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毛布越しにお腹をポンポンと叩かれ、私はアイマスクを外して目をしょぼしょぼさせる。
すると仕切りの間から尊さんが顔を覗かせ、「朝」と言った。
大きな欠伸をしてから、モソモソと〝巣〟を解除しようとすると、客室乗務員さんが気づいて手伝ってくれた。
「はぁ……。寝たらお腹空いちゃった」
「マジか、元気だな」
尊さんと朝の挨拶をしたあと、通路を挟んでの恵にも手を振る。
すでに起きて映画を見ていたらしい彼女は、またヒラヒラと手を振り返してくれた。
客室乗務員さんが朝食のオーダーを取りに来たので、私はオムレツメインの洋食を頼み、ついでにパスタなどのプラスアルファも無事頼んだのだった。
スマホを見て時刻を確認すると、すでに現地時間に時計が合っていた。
これも以前に母が言っていたけれど、昔は海外に着いたら自力で現地の時刻に時計を合わせなければならなかったが、今は衛生を介した通信機器の発達で、自動的にスマホの時刻が変わるんだそうだ。
と言っても日本とシドニーは二時間しか時差がなく、さらにケアンズに行けば時差は一時間だ。なので今回、時差ボケの心配はしなくていい。
現地のほうが少し時間が進んでいるので、一日をちょっとゆっくり過ごした程度で済む。
ご飯を食べたあと、少ししてから飛行機は降下し始め、現地時間六時二十分にシドニー国際空港――キングスフォード・スミス空港に着いた。
「うわぁ……。地上だ」
長時間飛行機に乗っていたからか、私はまだどこかフワフワする感覚を抱きながら、飛行機と空港を繋ぐボーディングブリッジを歩く。
「あー、安心して水分とれるかも」
恵が言うと、涼さんがハッと心配した顔で尋ねる。
「トイレ我慢してた? 水買ってあげるから、沢山飲んで!」
「いや、そんな我慢してたってほどじゃないんで」
建物の中とはいえ、もう冬になっている南半球に来たので、みんな上に一枚羽織っている。
「次の乗り継ぎまで三時間あるから、ゆっくりしよう。免税店が開いてるなら、買い物もいいし」
涼さんの言葉を聞き、「はっ……、コスメ……!」と一気に眠気が覚める。
「ほしい物があるなら、なんでも買うぞ」
「あぁ~……、尊さん甘やかさないで……」
「もしもほしい物があるなら、後悔しないように買っておけ。日本では税金がかかる」
「マジそれ……」
私はうめくように言い、両手で頭を抱える。
「とりま、どこかに座ったらeSIMを有効化するか」
「SOREDA」
恵に言われ、私は両手の人差し指で彼女をビシッと指す。
海外でスマホを使う場合、幾つか方法があり、たとえば日本のキャリアの海外プランに入るなどもあるけれど、割と値段が高い。
あとはレンタルWi-Fiを借りる方法もあるけれど、本体が結構大きくて重たい上、毎晩充電も必要なんだそうだ。
ちなみにこの場合、事前にプランを決めてお金を払うと、自宅までレンタルWi-Fiが送られてきて、帰りは日本の空港にある専用のボックスに返却するだけでOKらしい。
あとはSIMだけれど、物理のSIMカードの場合、プランを決めて空港などで売っている物を購入し、大抵は現地スタッフさんが設定をしてくれる。
けれどこの場合、SIMロック解除が必要だし、もともとのSIMカードをなくさないように気をつけなければならない。
今回私たちはeSIMを事前にオンラインで申請していて、QRコードを読み込んだら、あとはちょいちょいと手元で設定をし、現地で回線を有効化して終わり。スマホさえ対応していれば、一番簡単な方法となる。
今回はデータ量無制限の一週間プランを申し込んでいて、費用は約六千円だ。
私たちはシドニー空港を物珍しく見て、写真を撮りつつ進み、入国審査をパスする。
つい先日、八月に入ってから『入国審査』という映画が公開になった。
グリーンカードが当選したスペイン人の彼女と、事実婚しているベネズエラ出身の男性がアメリカに移住しようとするけれど、別室行きになって執拗な質問をされる……、という内容で、考えただけで気持ちがヒリヒリする。
どうやら監督が実際にそういう体験をしたから、映画を作ろうと決心したらしいけれど、日本のパスポートは世界的に信用度が高いみたいなので、そういう話を聞くとありがたいなぁ……と思うのだった。
ケアンズまでは国内線の利用なので、国際線のターミナル1から、無料シャトルバスに乗って五分ほどの移動し、カンタス空港が発着するターミナル2へ向かう。
例によって尊さんと涼さんは、航空会社でセレブな待遇を受けられる立場だけど、海外の航空会社でもアライアンス――提携、同盟――によって、似たようなサービスを受けられるらしい。
主力アライアンスは三つあり、ワンワールド、スターアライアンス、スカイチームがあり、二人はワンワールドのエメラルドクラスの会員らしい。よく分からん。
なので、用事が終わったあとは、羽田空港のラウンジのような場所で寛げるらしい。