「母の日か…」
朝、駅前を走っていたらカーネーションのチラシを渡された。
そういえば今日は5月12日。
母の日。
小さい頃は父と一緒にカーネーションを買ったり色々したけど、この年頃になると…少々抵抗がある。
お母さんには感謝している。
毎日働いてくれて、大変だろうに、家事まで。
うーん。
カーネーションや手紙を渡すのは、恥ずかしいけど。
家事とかなら……
……うん。
「お母さん」
「んー?どうした?」
「今日はゆっくりしてていいよ」
「あとは俺がやっとく、休日だし、」
「えー?いいよ?私が……あ、ふふっ」
「じゃあ、お願いしようかな?」
「うん」
皿洗い、掃除、洗濯物。
普段お母さんがやっていることをこなすだけ。
キツイ。
いつの間にか夕暮れ。
お母さんはこの作業を仕事前と仕事終わりにしている。
掃除は確かに祝日だけとかだけど、
それでもかなり疲れる。
有難みが身に染みる。
……。
ふと、寛いでいる母さんに目がいく。
バライティ番組を見ている母さんはの笑み。
夕暮れと絵になる光景。
気が抜けると微笑んでしまいそうだ。
「お母さん」
「いつもありがとう。」
「あら、急に改まっちゃって」
「嬉しい…ありがとう」
お母さんが俺に向けたその目。
とても絵になる優しい目。
いつもありがとう
大好きな母へ
息子が母の日を意識してくれただけで嬉しかった。
夫に今日の話をしたら、「俺も…」といって花束をくれた。
なんて恵まれているんだろう。
私の母も、私からのプレゼントをこんな気持ちで受け取っていてくれたのかもしれない。
母の日。幸せな日。
そう思いながら私は、自分の部屋に戻った。
照明を付けると
その暖かい暖色が特徴の
赤い『カーネーション』がひとつ。
照明の光で輝き、明るみが増したお花。
なんて綺麗な花。
夫から貰った花束と一緒に花瓶に生けようと思い、花を取ろうとした時。
手に感じた紙の質感。
そこには不器用にとったメモ帳の切れ端。
私はその大切な暖かい花を持ったまま
椅子に倒れるように座った。
「ありがとう、、」
静かに落ちた涙が花に垂れ、
光を反射させた。
『お母さん、いつもありがとう』
この暖かい瞬間を、美しい日々を噛み締めて。