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清水が肩でハァハァと荒い呼吸をしながら、階段を駆け上った先は校舎の屋上と続く——階段室だった。
扉を押し開けて屋上に飛び出すと、清水はすぐさま出口の裏側に回り込み、建物の死角に隠れようと身を潜めた。
——まさか、屋上に逃げるとは思わなかったな。
階段室から出た俺は、清水が隠れているだろうと踏んで、建物の裏側に回った。
案の定、そこにいた清水は頭を両手で抱えて、ブルブルと身体を震わせていた。
そっと近づくと、清水はゆっくりと顔をあげて視線だけをこちらに向けた。
「うわぁああ! やめろ! なんで俺がお前にやられなくてはいけないんだ!」
清水は尻を床につけて後退りする。
俺が足を一歩踏み出すと——
「先生……? 何をしているのですか?」
警備員が立っていた。
「もう屋上の鍵を閉めますよ」
そう言った警備員に、清水は慌ててしがみつく。
「助けてくれ! 殺される! 梶原に殺される!」
俺を指差す清水だったが、警備員は俺の方を真っ直ぐに見て言った。
「梶原って……誰もいないですよ?」
警備員は困惑したように清水を見た。
「何言って……見えないのか? アイツを……梶原がいるだろう!」
叫ぶ清水を見て警備員は一瞬、嫌そうな顔をしたが
「いや、見えないですが……落ち着いてください」
そう言って、自分を掴む清水の手を外そうとした。
「とにかく……先生、ちょっと待っててください。他の先生がまだいると思うので、呼んできます」
警備員は慌てて階段室に向かうと、清水は
「待ってくれ! 置いていかないでくれ!」
そう叫んで警備員を追いかけようとしたが、俺は清水の前に立ちはだかり、行く手を遮った。
「——ッ!!」
清水は足を止めて、後ろに下がった。
「何故……おまえが見えないんだ」
清水が呟くように言った。
「さぁ? 俺の姿は、あなたしか見えないみたいですね」
俺が薄ら笑いを浮かべると、清水は絶望した顔になった。
よし、今だ!
と俺は思ったが……
あれ? 俺、どうやって清水から魂をとるんだ?
黒フードマントは着ているが、グリムリーパーみたいに鎌を持っているわけじゃない。
かと言って鎌を持ってたからと言って、魂をどう取るんだ?
困惑した俺に、清水は怯えた目で俺を見続けていた。
いや、まじで……どうしたらいい?
焦る俺は、ハッと気づく。
そうだ! ここから奴が、グリムリーパーが清水から魂を取ればいいんじゃないか?
そう思って俺は奴の名を呼ぼうと思ったが……
——奴に名前……あったっけ?
あいつ、自分のこと
『僕はグリムリーパー。死神だ』
って言ったよな?
じゃあ奴の名前は、グリムリーパー?
いや、意味は死神だから……
あー!めんどくせぇ!
「グリム! グリム! お前、いるんだろ?!」
大声で奴を呼んだ。
「……あのさ、名称を切って呼ぶとか、やめてくれる?」
俺の後ろから声がした。
グリムが呆れた顔で立っていた。
「仕方ないだろ! お前の名前、知らねーんだから!」
「僕には名前はない。呼ぶならグリムリーパーと言え!」
俺はチッと小さく舌打ちをした。
「長いんだよ! グリムでいいだろ!」
「はぁ」とグリムは小さくため息をついた。
「……樹って、すぐにめんどくさくなるよな」
「は? お前、何言って……」
「あー!もういいよ! グリムで」
グリムは投げやりに言って
「……で、なんで僕を呼んだ?」
俺を鋭い目で見た。
「なんでって……そりゃあ」
清水をチラッと横目で見て
「魂、グリムが……」
と言いかけたが、すかさずグリムが低い声で言った。
「僕は樹に魂を集めろと言ったが、魂を僕が取るんじゃない」
「え? でも……」
「樹が業を担えと言っただろ? 樹が取るんだよ」
グリムは冷酷な笑みを見せた。
その笑みに、俺は一瞬怯んだが
「俺は取り方とか、わからない! 魂を取れと言われてもグリムのような鎌もないし、あっても使えない!」
と叫んだ。
「だって、そうだろ? 俺は霊体で魂を取れと言われても、グリムのような死神ではない。
俺はまだ死んでないし、人間だ!」
そう言った俺をグリムは、冷たい目で見ていた。
そのやりとりを見ていた清水が
「霊体……? 死神……? なんだ?」
と呆然とした顔で小さな声で言ったが、すぐに
「ふふ……はは……アーハッハッハ」
と狂ったように笑い出した。
「なんだ……梶原。お前、幽霊なのか? お前が俺に何かするって、何が出来る?」
怯えた目をしながら、俺を馬鹿にしたように言う清水は、恐怖の中でも、なんとかして優位にたとうとしているのだろう。
——コイツは、どうしても俺を蔑みたいんだな。
俺が苛立ちながら清水を睨みつけていると、グリムはボソッと呟く
「左手の手のひらを、上に向けろ」
「え?」
「鎌が出るように、念じろ」
少し声を荒げたグリムに言われるまま、俺は左手を上に向けた。
——鎌を出す。出すんだ。よし!鎌……出てこい!
俺は目を閉じて強く念じた。
すると俺の左手から、蒼い炎が上がった。
炎の先は鎌の刃を形成し始めたのだが——
「——えっ?」
俺の左手に浮き上がってきた鎌は……
「なんだ……これ?」
グリムの鎌とは全く違う小さな鎌。
ホームセンターで売っているような——草刈り鎌だった。
「ど、どういうこと……これ?」
俺が呆然として呟くと、グリムは顔を下に向けると肩を震わして……
「ワーハッハッハ」
と、腹を抱えて大爆笑した。
「ちょっ、これ、どうするんだよ?!」
俺は慌ててグリムに向かって言うと、グリムは笑いを堪えながら
「樹の鎌だから、それで魂をとるしかないよね?」
と言った。
#ダークファンタジー