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フィーサたちとようやく再会出来る――そう思っていたのに、その場所に近づくにつれシーニャとミルシェが更に激しく慌てふためきだした。
「危ないのだ、危なすぎるのだ!! アックはこれ以上進んだら駄目なのだ~!」
「駄目です! 駄目ですわ!! きっと良くないことが起きる前兆なのでは?」
彼女たちしか気づかなかった魔剣の震えはおれにも分かるようになった。さすがに魔剣自らが音を出して激しく揺れ出せば、身に着けている身としては無視も出来ない。
「むむ……、これはただ事じゃなさそうだな」
噛みついてくるといったことにはならないと思われるが、勝手に振り回しそうな気配がある。二人があまりに怯えているので、腰から外して手に持つことに。
「アック様~! この先の大広間にいます!! フィーサとアヴィが――あれっ!?」
嬉しそうなルティの声が届き、地下から上がってすぐの大広間に近付く。
そう思っていたが――何故かおれの目の前には、剣を手にしたアヴィオルがいて彼女に剣を向けていた。しかもお互いの剣で火花を散らしている状況だ。
「あわわわっ!? えぇっ? イスティさまがどうしてっ!?」
「アヴィオルか!」
「ど、どうしてフィーちゃんに斬りかかっているの!?」
「それはこっちが聞きたい! くっ、ルストが勝手に……」
何故か一瞬で別の部屋に移動していた。目の前にはアヴィオルがいて、フィーサを手にしている。フィーサからは何の声も聞こえてこない。
それもそのはずで、声を出す間を与えないくらい魔剣ルストがフィーサを強い力で押し続けている。ギギギギと音を出したつばぜり合いが続いているが、攻撃が収まる気配が無い。
「どうすれば止まるの~!?」
「せめてフィーサが人化すれば!」
手にしている剣同士が勝手に動いているだけにどうするべきか。そう思っていたら、ルティたちが部屋に入って来た。
「あーー!! アック様、何してるんですか~!? フィーサをいじめちゃ駄目じゃないですか~!」
「どうしてフィーサと戦っているのだ?」
「……いなくなったかと思えば、そういうことですのね」
どうすれば解決するのか、ミルシェだけは知っていそうだ。なったことが無い状況だし彼女に聞くしかない。
「ミルシェ!! 何か策は無いか?」
「そのままお手を離されては?」
「何っ? しかしそれだと……」
「えぇ? 離しちゃっていいの~?」
離したところで剣同士の戦いが永久に続きそうな感じだ。しかしそうするしか無いのか。
「そのままではアックさまもお力を使えませんし、そうした方がいいかと」
ミルシェの言うとおり、魔剣ルストの動きは一向に止まる気配が無い。フィーサと違い、魔剣はおれの魔力を介して力を倍増する剣。
尽きることの無い魔力を注がれていては、いつまでたっても攻撃が止まることが無いだろう。
「分かった。そういうわけだ、アヴィオルもフィーサを手から離してくれ」
「そうするね~!」
特に掛け声を発しなかったが、おれとアヴィオルはほぼ同時にそれぞれの剣から手を離した。するとその直後、魔剣ルストは力が抜けたように床に落ちていた。
そしてフィーサの方は――。
「ひどいなの、とんでもないなの!! イスティさまが浮気者なの~!」
人化した状態で怒りながらおれに体当たりしまくっていた。どうやらフィーサが人化したことで、魔剣の攻撃が止まったらしい。
「……それは違うと思うが。まぁ、何というか……ごめんな、フィーサ」
「途中まで一緒にいた小娘も勝手にいなくなるし、置いてけぼりにされる身にもなって欲しいなの!! 全く全く、イスティさまは自覚が足りなさすぎるなの!」
ふとルティの方を見ると、まごまごした表情で気まずそうにしている。フィーサの怒りはもっともなことで、おれの体を叩きまくっているフィーサに何も言えない。
言えないが、状況を整理する為に話をすることにした。
「置いてけぼりにしたことはごめん。これは本当におれが全面的に悪いというか……」
「ふんっ! なの」
「と、ところで、どうして魔剣とああなったんだ?」
「イスティさまの浮気だからに決まっているなの!! それ以外に無いなの!」
浮気はともかく、気付いたらフィーサの所に移動していた。まるで金属同士が引き寄せたような感じだったが、ルストにも”シュレイン”のようなスキルがあるということなのだろうか。
魔剣ルストはフィーサと違って、意思疎通が出来そうな感じには見えない。何にしてもフィーサをなだめて聞いてみるしかなさそうだ。
「アックさま。エルフの問題もありますし、小娘を甘やかすのも程々に」
「そ、そうだな」