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フィーサの機嫌を取りながらおれたちは城の中を一通り見て回っている。サンフィアとは途中ですれ違った。しかし一緒に見て回る気が無いのか、別の所を見て回っている。
「アックさま。やはりイデアベルクへ帰した方がよろしいのでは?」
「んー……それは考えているが……、ここからどうやって」
「そうですわね……」
専用の精霊魔石を得たことで、サンフィアは戦力の一つとして考えられるようになった。しかし、ルティと似て別の意味で暴走しかねない恐れがある。
そう考えると、その力をイデアベルクの為に使って欲しいと思ってしまった。彼女を旅に連れて行くことを頼まれたとはいえ、どうしたものだろうか。
「アック様、アック様。その剣はどうしちゃったんですか~?」
「ん?」
魔剣ルストは完全に沈黙していて、音も動きも出していない。神剣であるフィーサと相性の問題なのかは不明だが、廃城の中を歩き回っていたら静かになった。
「フィーサが人化したら静かになりましたけど~、ずっとそのままなんでしょうか?」
「今のところは問題無いな。それよりも、この城は本当に何も無いんだな?」
「はいっっ! 何せ孤島にぽつんとあるお城ですから! 大昔は精霊さんが多く住んでいたみたいですし、危険なことになるようなものは残さなかったじゃないかなぁと」
ルティの話によると、かつて王国だったこの城は孤島の中にあるらしい。イデアベルクのように多種族が居着き、精霊や獣人が治めていた国だったようだ。
その話を聞いて確信したが、廃城に来てから彼女たちは気楽そうにしていた。地下倉庫は違ったが、他の部屋からは精霊に似た気配があった。恐らくそのことで気分的に違うんだろうな。
「外へはどこから出られるんだ?」
「こっちですよ~! さぁさぁ、こっちへ~!」
「いや、引っ張らなくても……」
寂しい思いをさせすぎたせいか、ルティのスキンシップがやたらと増えた。しかし嫌という程でも無いので、これについてはなるべく強く言わないことにした。
「ウニャ? 外に行くのだ?」
「そうみたいだ。シーニャはミルシェたちとついて来てくれ」
「分かったのだ!」
廃城の中を歩き回った限り、特に気を付けるものが無かった。強いて言えば、サンフィアが使った精霊が魔剣ルストに刺激を与えたくらい。
フィーサは剣に戻ることなくついて来ている。魔剣との違いは両手剣と片手剣ということになるが、使い道はそれぞれで考えるしか無い。
毎回暴走されても困るが、それについては他の場所で試すしか無いだろう。
ルティに連れられて外へ出た。廃城を外から見ると、岩をくり貫かれて作られた城のようで視界上からは岩しか見えない。神族国ヘリアディオスに似てもいるが、ここは完全に外界から遮断された孤島のようだ。
空もしくは、移動魔法でしか来られないことが分かる。
「ここへはウルティモが連れて来たんだったか?」
「そうなんですよ~。うちの常連さんでして」
「何か言ってなかったか?」
「精霊竜の言葉を頼ってここにたどり着いたとか何とか……」
アヴィオルが何か知っていそうだな。どちらにしてもここから飛び立つには精霊竜である彼女の力が必要となる。
「ルティちゃんとイスティさま、アヴィを呼んだ~?」
シーニャとミルシェは動き回っているが、アヴィオルだけはすぐ近くにいた。ルティが思っていたことが伝わっていたようで、彼女はすぐに話を理解した。
「――ってことで、遺跡に関してもし君に何らかの役目があるならそれを使ってもらえると助かるんだけど……」
おれたちは遺跡の地下から廃城に上がって来られた。しかしザームの連中に出遭えず、魔導士と遭遇しただけで大して進むことが出来ていない。
このままでは追い付けないどころか似た場所にしか進めない可能性がある。それもあってアヴィオルに話してみたが、彼女は無言の笑顔で頷いた直後、竜に変化してみせた。
「イスティさまから言われたらその通りにしろって言われてたから、みんなを乗せて移動するよ~!」
「言われた? それってウルティモに?」
「そうだよ~! ここから飛んでいかないと入れない遺跡があるんだって~!」
「やっぱりそういうことか」
ザームの連中には盗賊剣士であるジオラスがついている。恐らく遺跡の進み方は誰よりも分かっているはずだ。
「あれれ、アック様? アヴィに乗るんですか?」
「ああ。ここから移動する。シーニャとミルシェ、それとサンフィアを探してきてくれ」
「はいっっ! 分かりました~!」