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side のん
とりあえず今この目に写っている様子を見て安堵する。
一時はどうなるかと思った。
バキッ と隣で音がした。
横を見るとロゥが何食わぬ顔で手錠を破壊していた。 そのロゥの様子に少し驚く。
「・・・意外。ロゥは未雨さんを殺すと思った」
思ったことをそのまま言う。
声が少し小さかったかも。独り言のように聞こえたかもしれない。 しかし、ロゥはこちらに視線を向けた。
「・・・そう?」
聞き返されたが何を言うでもなく視線を前に戻した。 その様子を見てロゥも視線を元に戻したが程なくして口を開き 「・・・まぁ、そうかもな。」 と静かに言った。
「この人達は悪人じゃない。そう思ったからかな。」
ロゥの方をもう一度見た。
相変わらず何を考えているのかわからない横顔だ。でも、 ロゥのいつもとは違う言い回しに何かを感じて口角が少し上がった。
視線を少し落とす。
あの日の記憶が不意に蘇る。
この世のものとは思えないたくさんのぐちゃぐちゃになった屍が道や壁に張り付いている地獄絵図。街と呼べる大きさの人狼の集落が、家々がもう誰も住んでいないことを静かに伝えている。もともと広場であっただろうそこの中央に大きな耳と尾の付いた男が呆然と立っている。 顔が誰かの紅で染まった絶望に満ちた表情。憎悪に満ち、誰かを呪うような抑揚のない声。何かに取り憑かれたように資料を漁っていたあの頃のロゥを縛っていた誓い。
『魔法使いをこの世から消し去る』
キアノースに魔法使いがほとんどいないのはそのせいだ。自分は今までロゥが魔法使いと仲良くしてるのを見たことがない。なんならこの国ができる前は陰で相当な数の魔法使いをロゥが消し去っているのを知っている。そんなロゥが命を狙われても魔法使いを殺さないなんて驚きだ。
ゆっくり瞬きしてドアの方を向いた。
「じゃあ、もう自分はみんなのとこ戻ってるわ」
「わかった」と背中側から声が聞こえる。
あ、、、 そうだ。
「ロゥさ〜未雨さんの部屋この隣に移動してって〈叶〉に頼んどいて〜」
ドアノブに手をかけドアを開きながら振り返る。
ロゥは思いっきり「え?」って顔をしているが気づいていないフリをして 部屋から出た。 そのまま自分の部屋に向かう。
自分が外交のために国を出て以来あまり寝ていないことを思い出した。
一日何時間睡眠してたっけ。 覚えてないわ。 いい加減眠たいな。
ボフッと勢いよくベッドに飛び込むと マットが少し軋んだ。 そのまま布団に顔を埋める。 少し無理をした体から一気に力が抜ける。
早く寝たいなんて思ってロゥに部屋の移動を任せたのが失敗だった。 絶対ロゥの方が楽だったじゃん。
あの後 〈 誠 〉と〈 塁 〉が城内を駆けずり回って自分達を探してくれていたところにエンカウントしてしまった。
2人にさっきあったことを説明し、なんとか部屋に戻って来れたが かれこれ30分くらいかかった。
なんで警備班の2人が昼間なのに城にいるのかよくわからないけど、自分は叶に呼ばれてるからそれ関連かもしれない。
・・・そういやマフラーとカーディガンと手袋つけたままじゃん。
なんか寝る時は外さないとダメって言われてた気がする。「 外行ってたんだから汚いでしょ?」って
・・・ゔぅぅぅ・・・起き上がれない
ベッドが自分の体を離してくれない。
寝っ転がったまま気合いでカーディガンを脱いだ。 マフラーはベッドに飛び込んだタイミングで勝手に取れたんだろう。視界の端にマフラーが落ちているのが見える。 手袋も取ってテーブルの上に投げた。両方ともテーブルの上に乗ったのでとりあえず大丈夫だろう。
そこまできてついに力尽きた。 瞼が下がってくる。 もう起きてられない。
布団かけてないけど今日あったかいから風邪は引かないだろう・・・
そのまま眠りについた。
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