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上野文
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#悲しい
シジミン
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kirisu
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畝澄ヒナ
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「……ひ、酷い……っ、言いがかりはやめてください!」
小鳥遊さんは半歩身を引き、被害者ぶった顔で言う。
私はさらに半歩彼女に迫り、その耳元に囁いた。
「嘘つき」
瞬間、小鳥遊さんが鋭く息を吸う。
「もうバレてるのに、見苦しい言い訳すんのやめたら? 盗聴罪って罪はないけど、プライバシー侵害には十分なり得る。篠宮さんは一旦保留にしたらしいけど、クビにならずに済んだ事を感謝するでもなく、しらばっくれるってどういう神経してんの? 次、何かやらかしたら、盗聴器の証拠はしっかり押さえられてるし、一発退場だよ。分かってんの?」
彼女は表情を歪め、泣きそうな顔をする。
小鳥遊さんは、顔だけは可愛い。
清楚系の雰囲気で、色白で可憐な顔立ちをしているし、今流行りのシースルー前髪とか、ちょっと後れ毛を巻いているところとか、流行を押さえながらも、やり過ぎ感を出さずナチュラルな魅力を出している。
最初に朱里に近づいた時のように、人なつっこい妹ポジションで近づかれたら、大体の人は気を許してしまうだろう。
近づいてくる人があまりに美人だったり、可愛かったりすると、警戒してしまう人もいるけれど、小鳥遊さんは親しみやすさや愛嬌でカバーしていて、私たちもそれにまんまと騙された。
そういう彼女だから、目を潤ませている姿を見ると、傍から見れば完全に私が悪者なんだけど、そのウルウル攻撃に負ける私じゃない。
〝男みたい〟と言われた学生時代から、その手の女は見飽きた。
「……し、知りません。私、急いでるので……」
小鳥遊さんが横をすり抜けようとした時、私は個室の境にある壁にドンッと手を突き、通せんぼする。
「まだ時間はある。最後まで話をしようよ」
「いい加減にしてください」
「いい加減にしてほしいのはこっちだよ。朱里の純粋さを弄んで、プレゼントするふりをして盗聴器? やってる事がクソヤバイのに、ちょっと言及されたら被害者ぶるの? あんたの本性、秘書課の奴らに教えてやろうか?」
もうこの際、悪役でも何でもいい。
威圧的に言ってジロリと睨むと、彼女は逃げるのを諦めたのか、数歩下がる。
そのまま黙っていたけれど、恨みがましそうな顔で私を上目遣いで見て、呟く。
「……だって、ずるいじゃないですか」
(はい、出たー。こういう奴がお得意の『ずるい』)
私は真顔のまま、心の中で抑揚をつけずに突っ込みを入れる。
「お局には敵わないかもしれませんが、私だってずっと秘書課で働いていたんです。なのに他部署の上村さんが、いきなり副社長秘書に抜擢? 私のほうがずっと仕事ができるし、気が利くのに、他部署の人に副社長秘書が務まるはずがありません」
「自分なら、立派に副社長秘書を務められると?」
「当たり前じゃないですか。こう見えて私、仕事できるんです」
「……その割には役員秘書になれてないみたいだね」
サラッと返すと、物凄い顔で睨まれた。
「お局がいるからですよ!」
トイレ内に、小鳥遊さんの声がキンッと響く。
いいぞ、もっとやれ。
あんたみたいな性悪は、可愛子ぶってるより本性剥き出しにしていたほうがお似合いだよ。
「あの人達は自己中心的で、上の人たちは事なかれ主義だし、私が気を回してあげないと、秘書課は円滑に動かないんです」
そこまで「私、重要人物なんです」って言えるの凄いね。
「……そうやって『私、仕事できるんです』アピールしてるけど、ぶっちゃけ、小鳥遊さんって副社長秘書狙いなんでしょ? 社長秘書じゃ駄目なの? 正妻の子じゃない弟より、兄のほうが有望だと思うけど」
篠宮さん、すまん。
私は心の中で彼に謝り、小鳥遊さんにカマをかける。
すると、予想外の反応があった。
「どうしてそんな酷い事を言うんですか!? みんな副社長にばっかり当たりが強くて、可哀想だと思わないんですか!? 副社長は速水部長だった頃から、仕事ができるし部下に気を配れる人だし、器の大きな人でした。中村さんだって分かってるでしょう?」
「まぁ、有能だとは思うけど。……でも、玉の輿狙うなら、兄のほうが強くない?」
さらに掘り下げると、小鳥遊さんは「っっっっはぁー…………」と大きな溜め息をついた。お、なんだなんだ?
彼女は言いたくなさそうな顔をしていたけれど、私が「納得できないと動かない」という態度をとっていたからか、渋々と打ち明けた。
「……傘をもらったんです」
「はい?」
「大雨が降っていた日、傘を忘れてエントランスで雨脚が弱くなるのを待っていたら、外での用事から戻ってきた速水部長が、ビルの一階にあるコンビニで傘を買ってくれて、『お疲れさん』って言ってくれたんです」
速水~!!
コメント
1件
わああ!この展開熱すぎる!!😭💕 主人公が小鳥遊さんを完全に追い詰めててめっちゃカッコよかった…!! 「嘘つき」って耳元で囁くシーン、想像しただけで震える!!👏✨ しかも小鳥遊さんの本性剥き出しになった時の「ずるい」連発、あるあるすぎて笑ったけど、その裏に隠された速水部長への想い…!傘もらったエピソードがまさかの伏線だったなんて!! 朱里ちゃん守りたい一心で悪役覚悟で立ち向かう主人公、推せる…😭🔥 次話も楽しみすぎるよ!!臣桜さん最高!!💖