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久瀬の刀が、俺のドスの側面を滑るように切り裂く。
金属同士が擦れ合う不快な高音が、ステージ上に響き渡った。
「和貴、お前の動きは読みやすい。…親父さんに叩き込まれたその型、三和会のシミュレーターで千回は殺したぜ」
久瀬の無機質な声と共に、補助装置が駆動する。
空気を引き裂くような加速で、奴の刃が俺の喉元を掠めた。
「シミュレーターだと?……笑わせるな」
俺は床を転がり、飛び散る花飾りの影に身を隠す。
「俺とあんたが路地裏で泥を啜りながら覚えたのは、計算で測れるような小綺麗なもんじゃなかったはずだ!」
俺は親父のドスを逆手に、自分のドスを正手に、不規則な構えをとった。
機械的な精密さを持つ久瀬に対し、俺は自らのリズムを崩すことで対抗する。
親父の型を捨て、ただ「殺す」ためだけの本能に身を任せた。
再び接触。
久瀬の刀が俺の右脇腹を浅く切り裂く。
だが、俺はその痛みを利用して奴の懐に飛び込み、親父のドスの柄で補助装置の関節部を力任せに殴りつけた。
「ぐっ……!?」
火花が散り、久瀬の右腕が不自然に跳ね上がる。
「……機械は裏切らねえが、壊れることもあるんだよ、久瀬!」
俺は追撃の手を休めない。
一撃、二撃と、奴の四肢を狙って刃を叩き込む。
久瀬の顔のケロイドが、怒りと苦痛で歪んだ。
その瞳の奥に、かつて共に夢を見た「弟分」としての光が、一瞬だけ瞬いた気がした。
その時、会場の隅で大きな爆発音が上がった。
「兄貴ィ!待たせましたね!」
ジャミングを突き破り、山城が大型の工事用トラックで仮囲いを突き破って突入してきた。
助手席には、ボロボロになりながらも銃を構えた志摩の姿がある。
「黒嵜!データを公開したぞ! 三和会の株価は今、紙屑同然だ!」
志摩の叫びが、混乱する会場に響く。
防弾ガラスの奥で、大河内が初めて顔色を失った。
「……貴様ら、どこまで私の計画を……!」
「大河内、これで終わりだ」
俺は久瀬の剣を弾き飛ばし、その喉元に刃を突き立てた。
だが、俺の視線は久瀬ではなく、その奥にいる老いた怪物に向けられていた。