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――それから数週間後。
遥のリハビリがひと区切りつき、快気祝いを兼ねた「5人の外出」の日がやってきた。行き先は、成瀬先輩が「ここなら遥くんの足も疲れないでしょ」と選んでくれた水族館だ。
待ち合わせの駅前。私服の小谷先生は、黒のシンプルなセットアップで、学校の時より少しだけ肩の力が抜けて見えた。
「お待たせしました。……わ、先生。私服だと、全然怖い先生に見えないですね。普通にカッコいいじゃないですか」
成瀬先輩は少し悪戯っぽく笑いながら、先生の横に並んだ。部長としての凛とした雰囲気はそのままに、先生を見つめる瞳には、あの日助けられた時から変わらない想いが静かに宿っている。
「成瀬、お前まで茶化すな。……遥、足はどうだ」
「……大丈夫です。ご心配おかけしました」
遥はぶっきらぼうに応じたが、その視線はすぐに私の隣にいる凌先輩を鋭く射抜いた。
「紗南ちゃん、人混みで足踏まれないように気をつけて。俺の横にいて」
「兄貴、さりげなく距離詰めすぎ。紗南、俺の服掴んでていいから、こっち来いよ」
凌先輩はいつもの涼しい顔で私の肩に手を添えようとし、遥はそれを意地でも阻止しようと間に割り込む。
数週間前、病院の廊下で先生に話した私の不安をよそに、二人の執着はさらに深まっているようだった。
「……賑やかになりそうだな。行くぞ」
先生の言葉を合図に、私たちは水族館の薄暗いエントランスへと足を踏み入れた。