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・【20 オレオレ詐欺】


今日は長谷さんの家にソーくんとサキちゃんを呼んで野菜料理パーティ、といったところで、ミョッシーから「暇だよっ」という謎の連絡が入り、じゃあみんなで行きましょうということになった。

「私はミョッシー! 気軽にミョッシーって呼んでね!」

そう、ソーくんとサキちゃんに言ったミョッシー。いやだとしたら最初のほうは本名を言えばいいのに。

ミョッシーが笑顔でソーくんとサキちゃんを追いかけている。

サキちゃんは楽しそうだけども、ソーくんはミョッシーの鬼気迫る楽しそうにちょっとビビっているようだった。

ソーくんが本気で逃げ出しそうになったところで回り込んだ真澄に捕まっていた。

女子高生の子供好きは時に狂気だな、と思いつつ、僕は台所へ向かった。

長谷さんは既に野菜の収穫を終えていたようで、台所にはミニトマトやピーマン、ナスに大葉、バジルなどのハーブも摘んで置いてあった。

食パンがあったので、ピザっぽい感じもいいなぁ、とか思っていると長谷さんが喋り出した。

「いやぁ、また妻がご近所さんと旅行に出掛けてなぁ、ほら、余ったジジイ同士で集まっても歯茎の話しかしないだろ?」

「そのあるあるは全然知りませんが、また呼んで頂き、有難うございます」

「こっちの台詞だよ、全く……あの嬢ちゃんたち、ずっと追いかけまわしているけども、大丈夫なんかな?」

「あとで勉強も教えなさいと言っておきます」

そんな世間話をしていると、長谷さんがふとこんなことを言い出した。

「そう言えばワシの知り合いが、オレオレ詐欺に遭ってなぁ」

「それは大変ですね、大丈夫だったんですか?」

「何かギリギリで止めてくれた人がいたんだって、悪い人も居れば良い人もいるもんだなぁ」

「そうですねぇ、でも止めるって結構大変ですよね、郵便局の人が止めてくれたんですかね?」

すると長谷さんは首を横に振ってから、

「いやいや、何か普通の、ホント、高校生くらいの嬢ちゃんに話し掛けられたって話なんだ。挙動がおかしかったって。そんな分かるもんかねぇ、へぇーって思って聞いたんだよ、この話」

「それはすごいですね、挙動で分かるというのは」

「……と言いつつ、佐助くんなら分かるんじゃないのぉ? このこのーっ」

そう言って肘で僕のことを突いてきた長谷さん。

いやいや、

「挙動だけではなかなか分からないものですよ、よほど注意深く観察していたんでしょうねぇ」

そんな話をしていたところで、村井さんと村井さんの息子のタカシくんがやって来た。

新しい男児の投入にテンションが高まった真澄とミョッシーさんはキャッキャッと喜んでいる。

村井さんは二人の女子高生に自分の息子を預けて、こちらの台所に来た。

「私も料理作りますよ! 最近人を魅せる料理というのを勉強しているんです!」

「魅せる料理ってどういうことですか?」

「知ってる? 最近廃墟だった小学校にカフェができたの。私たまにヘルプで手伝いに行くんです!」

廃墟だった小学校にカフェ、ということは撮り鉄の時の和香子さんのところかな?

「それってもしかすると和香子さんというかたのところですか?」

「何で知ってるの! 佐助くんって物知りだね!」

「あそこも前にさがしもの探偵で行ったことがありまして」

「すごい! じゃあこの話も知ってるかなっ! 最近あったオレオレ詐欺の話!」

ここで長谷さんが割って入り、

「ちょうどその話はワシがしましたよ、高校生くらいの嬢ちゃんが挙動のおかしい老人を止めたという話」

「えっ、違いますよ。あの話は男子高校生ですよ?」

「いやいや酒井さんのヤツは」

「じゃあ違います! 元々! 私の話は佐藤さんのおばあちゃんの話で!」

「あーじゃあ酒井んとこのジジイじゃないわ!」

いろんな老人の話をクロスオーバーじゃぁないんだよ。

というか、

「最近オレオレ詐欺多いですね、詐欺犯は同じ地区でやるもんなんですかね」

すると村井さんが手を叩いてから、

「そうなのよ! 私のほうはその酒井さんは知らなかったけども、佐藤さんと片倉さんちもオレオレ詐欺に遭って! 両方とも男子高校生にも止めてもらったんだって!」

僕は気になったことを聞くことにした。

「同じ人なんですか?」

「何か、違う人って話だよ。その人は両方ともすぐにその場を後にしちゃったせいで警察もお礼を言えないんだってさ」

長谷さんはうんうん頷きながら、

「悪い大人と良い若者か、こういう良い若者がいっぱいいるとこの世界も安泰だな」

「まあ早く悪いオレオレ詐欺犯が捕まってくれるといいんですけどねぇ」

そう長谷さんと村井さんが頷き合っていた。

そんな雑談をしながら料理を作っていると、長谷さんの家の電話が鳴ったので、長谷さんが電話に出た。

あまり人の会話を盗み聞きしちゃいけないので、料理に集中していたんだけども、段々長谷さんの声が小さく、か細くなっていくことに何だか違和感を抱いた。

一体どうしたんだろうと思って長谷さんのほうを見ると、完全に青ざめている様子だった。

長谷さんは最後、小さく「はい」と言って電話を切ったので、何だろうと思い、

「長谷さん、どうしたんですか?」

と言うと、長谷さんが言いづらそうに俯いた。

あんなに楽しそうだった長谷さんに一体何が、と思っていると、長谷さんは何だか外に出掛ける準備をし始めたので、村井さんが、

「あっ! じゃあチーズ買ってきてください! チーズ!」

と言ったところで長谷さんが、

「そういうのじゃないんだよ!」

と一喝するように叫んだ。

その場がシーンと静まり返った。僕はもしやと思い、

「長谷さんの息子さんが、何かしたんですか?」

と聞くと、長谷さんが震えだしたので、僕は言うことにした。

「それ、オレオレ詐欺じゃないですか?」

「「えっ?」」

長谷さんと村井さんがユニゾンしたがイントネーションはだいぶ違う。

長谷さんは喉の奥底から唸るような「えっ?」で、村井さんは急なことでキョトンとしている「えっ?」だった。

僕は続ける。

「複数人が関わっているような劇場型のオレオレ詐欺というのが最近増えていて、臨場感も増しているらしいんです。何だか大勢の方々と喋りましたか?」

「劇場型の、オレオレ詐欺……?」

僕の言ったことをオウム返しした長谷さん。

僕はさらに続ける。

「はい、今のオレオレ詐欺はより巧妙に、しっかり物語の輪郭が分かるようになっていて、まるでドラマのように役割ができているるらしいんです。ちなみに一人で大勢の役を演じられる人はちゃんと給料が高いらしいです」

村井さんはふ~むと息をついてから、

「そんな、演じ分けられたら給料が高いって、まんま劇の役者じゃない」

長谷さんは呆然とその場に立ち尽くしている。

いや、脳内で改めて反芻しているのかもしれない。

段々長谷さんの顔色は生気を取り戻していき、いつしか真っ赤になっていった。

「許せない! こんなことをするヤツ! とっ捕まえてやる!」

すぐさま村井さんが、

「それなら警察に連絡しましょう!」

「いいや! 時間を掛けていたら怪しまれる! ワシが捕まえる!」

長谷さんはもう怒り心頭といった感じで、立ちながらも貧乏ゆすりをしていた。

「時間指定はすぐだった! ワシはオレオレ詐欺に騙されているフリをして接触して捕まえてやる! 畑をやっている人間の腕力を舐めるな!」

そう言ってまた長谷さんは外に出掛ける準備をし始めた。

何だか止められそうな感じはしない。

ならば、

「僕も遠目から、着かず離れずでついていきます。いいですよね、長谷さん」

「それは勿論だ! 犯人が逃げ出したら捕まえてくれ!」

「それでは村井さん、村井さんは今作ってる料理の火をよろしくお願いします」

「分かった! そっちの熱い火! 頑張ってね!」

ちょっと上手いことを言う雰囲気じゃぁないんだよ。

でも村井さんは満足げな顔をしていたし、長谷さんも特に気に掛けていなかったので、それはスルーして僕と長谷さんは外に出掛けた。

出掛ける時に真澄が、

「何か買い出しに行くならアイス!」

と言っていたので、一応僕は手で応えた。

さて、長谷さんとはちょっと距離を取りつつも、一から110番に連絡しても確かに対応が遅いだろうからと、僕はホイッスルの時に連絡先を交換していた警察官の黒岩由梨さんに連絡を入れた。

黒岩由梨さんとはその後、さがしもの探偵としての活動を全て報告していた(してほしいと言われたので)。

こうやって呼び出すことは初めてだから、ちょっと緊張するけども、ここはそうしないといけない時だと思う。


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