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キュルノ
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#学園
キュルノ
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蒼月
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「……着いたぞ」真夜中の〇〇大学医学部附属病院。
街灯の光すら届かない重厚な白亜の巨塔を見上げながら、俺は車内で火のついていない煙草を噛み砕いた。
深夜のナースステーションは、異様な静けさとピリついた緊張感に包まれていた。
監視カメラの映像に不審者は映っていない。電子カルテのアクセスログにも異常なし。点滴や投与された薬剤の成分検査も潔白。
それなのに、ICU(集中治療室)で順調に回復していた患者が、これまでに4人、まるでろうそくの火が消えるように突然死している。
「……峯岸さん。ここ、すごく寒い」
俺のスーツの袖を小さく掴む渚の声が震えていた。
病院特有の消毒液の匂いに混ざって、あの子の鼻腔には「目に見えない冷たい澱み」が届いているらしい。
「大丈夫だ。俺のすぐ後ろについてろ」
俺は渚の前に立ち、誘導してくれた心臓血管外科の主任教授と看護師長を鋭い目つきで睨みつけた。
「教授。亡くなった4人目の患者……今日の夕方に急変したっていうICUの部屋に案内してもらおうか」
「ええ……ですが警察の方、本当に事件なんですか? 監察医の初見でも心不全としか……それに、そのお連れの少女は?」
「俺の特別協力者だ。余計な口挟んでねぇで案内しろ」
俺が一喝すると、教授は顔をひきつらせて奥の特別ICUへと足を進めた。
◇
電子ロックの重いドアが開き、無機質な医療機器の電子音が響く無人の個室に入る。
ベッドは綺麗に整え直されていたが、部屋の空気だけが異常なほど重く、皮膚にまとわりつくように冷たかった。
「……佐藤、ドアの前で張り込め。誰も近づけるな」
「了解です、先輩」
部屋に残ったのは、俺と渚の二人だけ。
渚はゆっくりとベッドへ近づき、まだ死者の温もりがかすかに残るシーツの端に、震える素手を伸ばした。
「渚、無理はすんなよ……」
「ん……大丈夫」
渚の指先が、シーツに触れた——その瞬間。
**「あガっ……!?」**
渚が息を詰まらせ、両膝から床へ崩れ落ちた。過呼吸を起こし、胸元を掻きむしるように苦しむ。
「渚ッ!?」
俺は慌てて膝をつき、渚の小さな肩を抱きかかえた。冷や汗が渚の額から噴き出し、瞳の焦点が定まっていない。激しいサイコメトリーのフラッシュバックだ。
「……息……吸えない……胸が、苦しい……っ!」
「落ち着け! 俺の手を見ろ、渚! ここにいる、俺がついている!!」
俺は渚の手を強く握りしめた。渚は俺の手にしがみつきながら、断切れ途切れに、だが確実な真実を口にし始めた。
「……毒……じゃない……」
「なに……?」
「心臓を……直接……『止められた』……。冷たい……機械みたいな手で……胸の上から……っ」
渚の視線が、ベッドの頭上にある『心電図モニターと薬剤の自動投与ポンプ(シリンジポンプ)』へと向けられた。
「……真犯人は……人じゃない……ううん、人間だけど……『離れた場所』から……この部屋の機器を操作してる……。電子の波に乗って……命を……消してる……っ!」
「……サイバー攻撃(ハッキング)かッ!?」
俺の脳裏で、バラバラだったピースが一瞬で組み合わさった。
監視カメラに不審者が映らない理由。
点滴に毒物が混入していない理由。
電子カルテに侵入痕跡がない理由。
犯人はICUの医療機器のネットワークに外部から侵入し、心拍ペースメーカーや微量投与ポンプのプログラムを遠隔操作で書き換え、痕跡を残さずに致命的な不整脈を意図的に誘発させていたのだ。
医療知識と高度なハッキング技術を併せ持った、身内の「透明な殺人鬼」。
「……見えたよ、峯岸さん」
渚が俺の腕の中で、激しい頭痛に耐えながら天井の一点を見つめた。
「……4人目の患者さんが息を引き取る直前、視界の端に……白衣を着た男の姿が映ってた。右手の甲に……大きな『火傷の痕』がある男……」
「火傷の痕……!」
俺は渚を優しくベッドの脇に座らせると、ドアを蹴り開けて廊下に飛び出した。
「佐藤ッ!!」
「は、はいッ! 先輩、どうしました!?」
「今すぐこの病院の『医療情報システム部』と『心臓血管外科』の全医師・技師のリストを出せ! 右手の甲に『火傷の痕』がある奴だ!!」
「火傷……!? わかりました、すぐ照会します!」
俺は胸ポケットから火のついていない煙草を吐き捨て、ぎりと奥歯を噛み締めた。
命を救うはずの病院で、神にでもなったつもりで画面越しに人の命を弄ぶクソ野郎。
渚の平穏を脅かし、死者の無念を嘲笑う奴を、俺は絶対に許さない。
「待ってろよ、サイバー気取りの殺人鬼……。その面の皮、引き剥がして地獄に送ってやる」
俺たちは病院の暗闇の奥深くへと、捜査の舵を切った。
コメント
1件
うわ、めっちゃ面白かった! 病院って「命を救う場所」なのに、その医療機器を逆手に取った殺人って設定がもうゾクゾクするね。ICUの不気味な空気感とか、渚ちゃんのサイコメトリーの描写が臨場感あって引き込まれた。しかも「遠隔操作で心臓を止める」って、現実味ある怖さだよ…。火傷の痕のある男、早く峯岸さんに捕まってほしい! 続きが気になる〜!