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いつも通り幸にバイクで学校まで送られ
「いってらっちゃいませ」
「うん。行ってくる」
と正門から昇降口まで歩く司。バイクに跨る幸の横を栗夢が通る。
そのままヘルメットを被って帰ろうかと思った幸だったが
司と栗鼠喰さんはクラスメイト。関わりがないとも言い切れないし
なにより司と幼馴染の美音の友達ということは…一応挨拶しといたほうがいいな
そう思い、バイクから今一度降りて
「おはようございます。栗鼠喰様」
と頭を下げて挨拶した。
「あ、おはようございます鷺崎さん」
「覚えてくださっていたんですね。光栄です」
「執事さんなんて珍しいので。それにお綺麗な金髪で長い髪」
と栗夢が言うと
「たしかに珍しいですね」
クスッっと笑う。そのクスッっと笑顔で
「え。カッコい」
「え。笑顔かわよ」
と女子生徒の目を釘付けにしていた。
「よかったら今度うちの店いらしてください。甘いのがお好きでしたらケーキプレゼントさせていただくので」
と栗夢が言うとまた微笑んで
「甘いの好きなのでぜひお邪魔させていただきます」
と言うとまた
「あ、また笑ってる」
「ヤバ!微笑み金髪ロン毛イケメン執事とか2次元かよ」
と女子の視線を釘付けにしていた。
「では」
「はい。栗鼠喰様もいってらっしゃいませ」
と幸が頭を下げる。
「い、いってきます」
少し照れくさそうにして頭を下げて昇降口へ向かう栗夢。
幸はしばらく頭を下げ、頭を上げてバイクに跨り、ヘルメットを被って家へと帰って行った。
後ろのほうから幸と誰か女の人の喋り声が聞こえていた司は振り返って
幸と栗夢のやり取りを見ており、歩いてきた栗夢に
「おはよう栗鼠喰さん」
と挨拶した。
「あ、おはようございます鴨条院さん」
「幸く、うちの執事と仲良さそうに話してたけど、幸くんのこと知ってたの?」
「あぁ、はい。以前に校門でお会いして、挨拶と丁寧に自己紹介までしていただいて」
「そうだったんだねぇ〜。幸く、うちの執事が他に人と楽しそうにしてるの
ひさしぶりに見たからなんか新鮮だったー」
「そうなんですか?」
「うん」
「怖い感じの方…?」
「ううん。栗鼠喰さん話してて怖いと思った?」
「あ、いえ。全然。すごく物腰が柔らかく、低姿勢でスマートな印象でした」
「そのまんまの人だよ。でも僕に付きっきりだからあんまり他の人と話してるとこ見たことないんだよね」
「なるほどですね。執事さんですもんね」
「そうなんだよぉ〜」
と仲良さげに話している司と栗夢。
「あ、幸くんだ」
と呟く帆歌(ほか)。バイクで走り去っていく幸の後ろ姿が運転席から見えた。
「嘘。いつも同じくらいに着くじゃない」
ウザいくらいに疑う
「はぁ!?」
…すごく慎重なほど疑う美音。車が止まり、帆歌が後部座席のドアを開け
「いってらっしゃいませ」
と帆歌が見送る。
「うん。いってく…」
と美音の視線の先には仲良さげに話す司と栗夢が。
2人を指指して帆歌を見る美音。帆歌も視線をそちらへ向ける。
「あぁ。司様ですね。女生徒仲良さげに話してらっしゃいますね」
「あ、あわわわわわ、あれ」
「はい?どうかなされました?」
「つつ、つ、つつ、司のか、か、彼女?」
「…いえ。違うんじゃないでしょうか。司様の恋人関係の話は聞いたことがありませんので」
と言うと美音は潤んだ目になり
「嘘ぉ〜」
と言って帆歌に抱きつく。
「どうされたんですかお嬢様」
「嘘ぉ〜司の彼女だよあれぇ〜…あんな楽しそうだしぃ〜」
とほぼ泣いている美音。その声に振り返る司と栗夢。
「あ、美音だ」
「美音ちゃ…美音だ」
まだ呼び捨てが定着しない栗夢。
「あ、ほらお嬢様」
と美音の肩を叩いて見るように促す帆歌。
「へ?」
「栗鼠喰様ですよ」
「…うぐっ…ほんとだ…。っ!ってことは栗夢が司の彼女ぉ!?」
とまた帆歌に抱きつき泣く美音。
「違うーとー思いますけどー」
「嘘だぁ〜…」
という騒ぎに司と栗夢が寄っていき
「帆歌ちゃん、美音どうしたの?」
と帆歌に聞く。
「あ、いえ。そのぉ〜」
「美音ちゃん、大丈夫?」
「栗夢が司の彼女だったなんてぇ〜」
「えぇ!?」
栗夢が大きく驚く。
「え?」
司も静かに驚く。
「いやいやいやいや!違うよ!美音ちゃん!」
「嘘ぉ〜照れ隠しでしょぉ〜」
「そうだよ美音。そんなこと言ったら栗鼠喰さんに失礼だよ」
という司をチラッっと見る美音。少し焦っていつもと違う表情をする司に
「司もいつもと違う顔してるもぉ〜ん」
と言う美音。
「いや、私には失礼にはならないですけど…」
と余計なことを言う栗夢に
「ほらぁ〜」
とさらに加速する美音。
「でも付き合ってないです!私鴨条院さんのこと全然知りませんし!」
と否定する栗夢。
「でもお金持ちだし、家柄も良いし、優しいし
ぼんやりしてるからなんか守ってあげたくなる感じだし、顔もブサイクではないし」
と美音は思っていることを並べる。褒められて嬉しくなり、笑顔になる司。チラッっと司を見る美音。
「ほらぁ〜嬉しそうじゃんん〜」
また帆歌に抱きつく。
「ち、違いますよ!なんで鴨条院さんも笑顔なんですか!」
「えぇ?いやぁ〜いつもは褒めない美音が褒めてくれたからぁ〜」
あ、鴨条院さんはアテにならない
と思った栗夢。
「あぁ〜…えぇーっと…そう!」
思いついたことを言うために美音に近寄る栗夢。美音の耳元で
「私好きな人いるから」
と言った。しかしそれは嘘。美音を落ち着かせるために思いついた嘘である。
「嘘!」
見破られた。
「え」
「ほら!その反応!きっと付き合っているのを周りに隠すための嘘だわ!」
いつもは的外れなのに、こんなときに限って鋭い美音。
「あ、いや。ほんとだよ」
「じゃあ誰?」
「え?」
美音の潤んだ目で見つめられる栗夢。
「えぇ〜っと…」
パッっと思いついた顔があった。
「えぇ〜…」
美音の耳元で
「法鹿(ほうじか)くん」
と言った。するとさすがの美音も具体的な名前が出たということもって
「ほんと?」
と少し信じる姿勢が出た。その隙を逃すまいと
「ほんとほんと」
とブンブンと首を縦に振る栗夢。するとやっと帆歌から離れ
「…信じる…」
と言った。
よかったぁ〜
とホッっとする栗夢。
「おはぁ〜。なんの騒ぎ、これ」
光が登校してきて、正門のところで騒いでいる栗夢たちに話しかける。
「あ、光ちゃ…おはよう!」
「ん。栗夢おはよー。鴨条院くんもおはよ」
「あ、宝孔雀(ホウクジャク)さん。おはよぉ〜」
「なんか幸せそうだな」
「わかるぅ〜?」
「ダダ漏れだね。あ、猫ノ宮さん、おはようございます」
と帆歌にも挨拶する光。
「はい。宝孔雀様、おはようございます」
「で?なに?この騒ぎ」
「あ、いや、私と鴨条院さんが恋人だって勘違いされて」
「…」
目元を拭う美音を見て、視線を上に向けて考える光。
栗夢と鴨条院くんが恋人同士だって勘違いして美音が泣いて騒いでた?…
…ん?ということは?
ピコリン!っと点と点が線で結ばれ、名探偵ロナンくんのように頭が冴え渡った光。
はー。なるほどな
ニヤッっとする。すると
「おはよーございます。…なんなんですか?この集まり」
と助(たすけ)も登校してきた。栗夢は“思いつき”ではあるが
好きな人の名前で助の名前を挙げてしまったという事実から助の顔を見てなぜか赤面した。
それを見逃さなかった光。
ほおぉ〜?栗夢は法鹿くんかぁ〜
「おはよー法鹿くん」
「あ、おはようございます、宝孔雀さん」
「法鹿くんって彼女いるの?」
「っ!」
赤面しながらも目を見開く栗夢。
「え。なんですか急に」
「あ、私が法鹿くんを好きだから偵察とかそういうことじゃ、まっっ……たくないから」
「めっちゃ強調しますね。いや、いないですよ」
「そっかそっか。へぇ〜」
「なぁ〜に盛り上がってんのぉ〜」
と遊も登校してきた。
「おぉ。おはよ遊」
「おはぁ〜助。司もおはぁ〜」
「おはよー遊くん」
「皆さんもおはよーございます」
それぞれが遊に挨拶をする。
「でー?朝っぱらからなんで集まってんの?」
「いや、よくわからん。オレもついさっき来たとこだし」
助が答え、司を見る遊。
「ん?僕もよくわかんない」
笑顔で答える司。
「もー。なんでそんな笑ってんのよ!」
「えぇ〜?だって美音が僕のこと褒めてくれたし」
「嘘!」
「嘘じゃないよー。優しくて顔も良いって」
「私そんなこと言ってない!」
「言ってたってー」
「!そっ、空耳よ!」
「そうかなぁ〜」
「そうよ!」
と言い“合って”いるわけではない司と美音。
「熟年夫婦みたいだな」
とクスッっと笑う光。
「宝孔雀さん、なんか知ってるんすか?」
遊が下から光の顔を覗き込む。
「んー?なんも」
「って顔じゃないんだよなぁ〜」
「女子の秘密ってやつよ」
と昇降口に向かって歩き出す光。ついていく遊。その2人が動き出して自然に歩き出す栗夢、助、司、美音。
「皆様、いってらっしゃいませ」
と帆歌が頭を下げる。
「いってきまーす!」
「「「「「いってきます」」」」」
それぞれがそれぞれの言い方で帆歌に「いってきます」を行って改めて昇降口へと歩く。
その後ろ姿を見た帆歌は
「うわ。アニメの最終回みたい。…アニメあんま見ないから知らないけど」
と言って車に乗って家へと帰って行った。教室につき、男子組は遊が
「めっちゃ気になるわー。宝孔雀さんからどう聞き出そう」
とイスを斜めにして悩んでいて、女子組は
「栗夢、好きな人いるでしょ?」
「いっ!いないよ!別に!」
「あぁ〜やっぱり嘘だったんだぁ〜」
と光に抱きつく美音。
「あ!違う違う!嘘じゃなくて」
と光のせいで少しカオスっていた。担任の先生が入ってきて朝のホームルームが始まった。
一方、家に帰った幸は爆睡こき麻呂になっており、帆歌からの
帆歌「今日お昼一緒にどお?」
というメッセージにも気づくことはなかった。
「…こーくん寝てるのかなー。今日は一人で食べるか」
白樺ノ森学院でも1時間目から4時間目が終わり、お昼ご飯の時間へ。
「んじゃ、私お昼買ってくる」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「栗夢ー帰ってきたら覚悟しておけー」
「なにもー!早く行ってきて!」
と今朝の出来事で一気に距離が縮まったように見える女子3人。
「んじゃーお昼買ってくるわー」
遊もお昼を買いに立ち上がる。
「うん。いってらっしゃい」
「いってらー」
「いってきー」
遊も教室を出る。少し先に光の後ろ姿が見えたので駆け寄っていく。
「ほーくーじゃーくーさーん」
「長っ」
「いや自分の苗字」
「伸ばして呼ぶには長い苗字だな。私の苗字」
「そうですね。…てか今朝のマジでなんだったんですか?」
「しつこいなぁ〜。秘密だってば」
「恋バナ的な?」
と遊に核心を突かれると光はニカッっと笑顔で
「どおかな?」
と言った。いつも見せない笑顔に
うおっ…。可愛い
と面食らう遊。
一方、スマホのアラームで目覚めた幸。
自分の部屋からリビングへ行って、テレビをつけ、テレビを見ながらバナナを2本ほど食べる。
「ボディービルダーとかガチで鍛えてるわけじゃないからラーメンとか食べてもいいんだけど…。
ま、たまには鍛えないとな」
と呟いてバナナの皮をソファーから立ち上がらずにキッチンのシンクにバナナの皮を放り投げる。
「ナイッシュー(ナイスシュート)」
まずはテレビを見ながらストレッチ、柔軟。脚を開いて左右に前屈をするように足先に両手を伸ばす。
そして開いた脚の間に前屈する。ベターっとはいかないもののそこそこに柔らかい。
そして両脚を揃えて前屈。足の裏が触(さわ)れる。立ち上がり前屈する。床に触(さわ)れる。
今度は脚をソファーの背もたれに乗せ、もう片方の脚を限界まで開く。
そして背もたれに乗せたほうの脚側に体重をかける。それを左右行う。
下半身が終わったら上半身。肩を回し、両腕をクロスして伸ばす。
そして両腕を背中側に回し、背中で握手する。それを左右変えて行う。
「よし」
ストレッチ、柔軟を終えたらようやく筋トレへ。まずはスクワット。
50回を終え、テレビを消して庭へ出る。腕立て伏せ100回に腹筋100回を行う。
「ふぅ〜…」
庭に置いてある台を持ってきてそこに両脚ジャンプで飛び乗るというのを限界までやる。
「脚…ヤッバ…」
脚を摩りながらリビングに置いたタオルを取るためにガラスのスライドドアを開ける。
タオルで顔から滴る汗を拭く。
「ふぅ〜…」
脚にきているので、また腕立て伏せと腹筋を100回ずつ行う。
「おぉ〜…キッツ…」
完全回復はしていないが、腕立て伏せと腹筋の時間で多少脚が回復したので
リビングに戻ってスクワットを50回行う。
「キッツぅ〜…」
そしてまた庭へ出る。そして庭の端にあるサンドバッグでトレーニングを行う。
オープンフィンガーグローブと足首のサポーターをつけ、スマホのアラーム3分中に殴れるだけ殴る。
そしてキックもロー(下段)、ボディー(中段)、ハイ(上段)とキックしていく。
「はあ…はあ…はあ…」
汗に太陽が反射して、まるで部活動をしている高校生の青春の汗のようだ。
筋肉も筋トレ直後でパンプアップ、引き締まり
いつももそこそこいい体をしているが、今はより一層いい体である。
顔、そして体の汗をタオルで拭きながら
ふんふんと鼻から大きく息を吐きながらガラスのスライドドアを開けリビングへ入る。
するとそのタイミングでガチャっと玄関の鍵が開いて
「お邪魔んぬぅ〜!っつってもこーくんしかいない…」
波歌が訪れた。「いないか」と言いかけて、筋トレ直後の幸と目が合う。
波歌の目には下着のパンツ一丁でいつもよりいい体でイケメンの幸が
その体に光る汗を纏わせ、息を切らしている姿が写って
「すまん!エロいことしてたのか!」
と目を逸らした。幸はツッコむ余力もなく(いつもツッコんでいるわけでもないが)
「あ?」
と言った。いつもよりヤンキー感が強い。その後波歌に事の経緯を説明した。
「なぁ〜んだ。筋トレかぁ〜」
「そ」
「私はてっきり…」
「んなわけねぇだろ」
「そうか。だからいつもよりなんか…こう…妖艶だったわけだ」
「妖艶?」
「艶やかっての?」
「あぁ…。汗かいてるから当たり前っちゃ当たり前だな。シャワー浴びてくるわ」
「いやん!エロいセリフ」
「はいはい」
幸はシャワーを浴びて、ドライヤーで乾かすこともせず
タオルでテキトーにぐしゃぐしゃと髪の水分を取ってタオルを肩にかけたままリビングへ行く。
「わお!セクスィ〜」
という波歌をスルーしキッチンへ行き、プロテインの袋とシェイカーを同時に取り出し
シェイカーの中にプロテインの粉を入れ、牛乳、ヨーグルト、はちみつを入れシェイクする。
シェイクを終えたらその容器のまま飲む。
「エロいって」
幸がプロテインを飲む姿を見て波歌が呟く。
「お姉さん、襲っちゃおうかなぁ〜」
と冗談混じりで言う波歌。
「やめとけ。今の筋力で拒んだらなみ姉コ○しちゃう気がする」
「怖っ!」
っと言うのと同時に
私は拒むのね…。別にこーくんのこと好きじゃないけど、なんか…こう…女としては落ち込むというか…
と思っていると
「あとなみ姉はオレなんかよりいい人がいるよ。
好きでもない人にそんなことするような勿体無いことしないでほしい。一応…大事な人なんだから…さ」
と照れくさそうに言った幸に、不覚にもキュンっとする波歌。
もおぉ〜はやく帆歌に告れよこのイケメンが!
と思う波歌の顔に何かを感じたのか
「ま、大事な人とは言ったけど恋愛的好意は一(い)っっ……切ないから。よろしく」
と言った。
「おい!いい話で終わらせよ!」
と賑やかだった。