「げんかくん、待ってよぉ。」
「ひまり!早く来いよー!! 」
これは数年前の記憶。
俺が思い出して、感傷に浸っているだけのものだ。
「絃歌ー!!学校一緒に行かなーい?」
毎朝絃歌を学校へと誘うのが俺のルーティン。
まぁ、誘っても滅多に来ることはないのだが、趣味のようなものになりつつあるので毎日毎日律儀に絃歌の家へと来ている。
「…またお前か、灯鞠。いくら誘っても行かねぇって言ってんだろ。灯鞠みてぇな優等生には俺、なれねぇの。諦めたら学校行きな。」
そう、こうやって毎回あしらわれてしまう。
絃歌は、変わってしまった。
小さい頃は毎日のように一緒に遊んで、いつも一緒で、周りからは双子と間違われるほどだった。
絃歌が変わったのは、中学二年生の頃、 ちょうど 絃歌のお母さんが亡くなった年。
癌で、気づいた時にはもう遅かったそうだ。
その年から、なにか張り詰めていたものが切れたかのように、絃歌は荒れだした。
夜遅くまで家を出て、年上の方ともつるむようになって。
そこから今へと至る。
「絃歌、お前また酒飲んだだろ!!あれほどやめろと言ったのに…絃歌のお母さん、歌さんが悲しむぞ。 」
「お前に何が分かんだよ。俺の事なんかほっとけ。」
絃歌はそう言うと、家へと入ってしまった。
こうなってしまうと、絃歌はもう出てこない。だから学校へ来ないのだ。
(空の歌さんに、安心してもらいたいだけなんだけどなぁ…)
歌さんのため、絃歌のためにと、頭を抱えるばかりだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!