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「おい、浅倉」
学校の休憩時間、急に先生に呼ばれ振り返る。
「はい、なんですか先生?」
「いや、お前。有栖川絃歌の所へ毎朝行っているそうだな。…大丈夫なのか?いや、ほら。有栖川はいい噂は聞かないだろう?それでその、心配になってだな。」
ごにょごにょと言い訳を続ける先生に少し、苛立ちを覚えた。
先生の言いたいことを翻訳するならば、『絃歌は喧嘩ばかりしているからお前もなにかされているんじゃないか。』ということだ。
この先生は、俺という、浅倉灯鞠という生徒のことはとても心配するくせに、絃歌になると噂だけで目の敵のようにする。
確かに、絃歌は酒も飲んでるし、多分煙草も吸っている。不良の類に入るのだろう。だけれど、絃歌はいつも口で言い返すだけであって、殴られたことなど一度もない。
絃歌は今、荒れているだけであって元は優しい人なのだ。
それを、俺だけは分かっている。
この文全てをこの教師に言い返してやりたかったが、さすがにやめておこう。
皮肉ったらしく、にこりと笑ってこう返した。
「お気遣いありがとうございます、先生。ただ、あまり噂で話すのは良くないかと僕は思いますよ。 」
俺にしては留まった方だと思う。
いや、今気づいたが俺はなぜこれ程絃歌を庇っている?
友情?歌さんのため?小さい頃の腐れ縁?
いや、どれもがしっくり来ない。
いつか、この感情に名前をつけたいと唐突に思った。