金豚視点
「…ん〜で、何があったん」
ソファに座っていながら頭を下げた紫色の彼に話しかける。
「…勝手に入ってこないでよ」
「ええやろ。減るもんでも無いし」
「僕が嫌なんだよ」
苛立っているのか、少し強い口調をする彼に俺は少し苛立ちを移される。
「あのなぁ、俺はらっだぁが出ていった理由を知りたいねん」
部屋のことなんてどうでもいいわと切り捨ててやれば、彼は紫色の瞳を鈍く光らせた。
「僕らの問題。突っかかって来なくていいから」
また距離を置かれ、話そうとはしない彼。
腰を上げ、そのまま部屋を出ていこうとする紫色の腕を掴む。
「良いから」
「…しつこいと、嫌われるよ?」
掴んだ腕に、何か得体のしれないものが巻き付いてきた瞬間、俺の視界は暗闇に呑まれた。
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目の前の状況に、なんと説明をつけて良いのかがわからなかった。
行き場のなくなった両手の指先が、凍えるように冷たくなっていくのがわかる。
「…ごめん、なさい、」
暖かい感触に包まれたそれは、大抵の人が味わったことがあるのだろう。
だが、小さい頃から母を亡くし、家を空けている父がいる僕は知らなかった。
鼻に当たる赤髪がくすぐったい。
「え…っと…」
僕は今、少年に抱きしめられている。
珍しい、赤毛の少年に。
こういう時、どうするのが正解なのだろうか。
「あの、ちょっとごめんね…?」
彼の体を持ち上げ、コンクリートの敷かれた地面に座らせる。
赤く、綺麗な瞳と目が合う。
まっすぐに見つめてくる視線に、思わず視線をそらしてしまう。
誰かと間違えていた様子の彼は、自分の姿を見た瞬間顔をボッと赤く染めた。
夕日なのかと思ったが、とうに沈んでしまったらしく、それらしいものは見当たらなかった。
「あ、すいませ…」
「大丈夫だから…」
慌てる彼に、自分の着ていたコートを被せる。
立ち上がらなければ見えない位置に、彼の足があった。
赤く腫れた足には、何も着せられていなかった。
「…家出?」
自分が言うと、彼はビクリと体を震えさせるも何処かへと走っていこうとした。
心より先に、体が動いてしまうというのを、僕は初めて経験した。
「ぇ」
「君、家無いの?」
帰る家
「…え、と」
「…よければ、なんだけどさ」
ホイホイ、知らない人を家に上げるもんじゃない。
そう言われたのはいつだったか。
寂しくて、辛くて、悲しくて。
そんな日々が嫌で、人を招き入れる。
あの「大きな館」に。
「うちに来ない?」
「…へ?」
コメント
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最初は赤髪のともかと思ったけどよくよく考えたらレウさんだわ