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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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コメント
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みぅです、読了しました🖤 今回も最高に泥臭くて笑った(いい意味で)! 結愛の「血と汗と泥の臭いが1ミリも含まれていない」ってセリフ、胸にグッときたよ…。AIが楽そうに見えても、結局読者が求めてるのは「生の記録」なんだね。主人公がゼロから書く覚悟を決めるまでの流れ、好きだなあ。 でも結愛のバインダー物理攻撃、地味に笑ったw 次回も楽しみにしてます!
第158話:文字数という拷問〜AIとゴーストライターの誘惑〜
「……ふっふっふ。結愛、俺を誰だと思ってるんだ?」
帯広のボロアパート、四畳半。
俺は三万円のゲーミングチェアの上でふんぞり返り、得意気な顔で冷めた麦茶を一口あおった。
大手出版社K〇D〇K〇WAとの出版契約(印税8%・源泉徴収10.21%引き)を交わしてから数日。
ついに本格的な『執筆活動』がスタートするわけだが、俺の表情には一切の焦りも不安もなかった。
『……その根拠のない自信はどこから湧いてくるのですか、ルシフェル様』
ディスコードの画面越しに、我が社の鉄面皮経理・結愛(ゆあ)が氷点下の視線を送ってくる。
「いいか結愛? 現代の出版において、愚直にゼロから原稿用紙に向かうなんて時代遅れなんだよ」
俺はドヤ顔でキーボードのスペースキーをバシッと叩いた。
「俺たちには、ヨモの配信アーカイブという『数千時間分の音声データ』がある! これを最新の文字起こしソフトにぶち込んで整形すれば、一瞬で一冊分の本が完成するんだよ! これぞデジタル時代の爆速執筆術だ!!」
俺の完璧すぎるアイデアに、自分自身で感嘆の溜め息をついた。
文章を一から書くなんて泥臭い真似、四十歳の省エネ脳ミソには到底不可能だ。文字起こしをコピペして終わり。印税ごっつぁんです!
『……ルシフェルさん。大変申し上げにくいのですが、担当編集のS様からメッセージが届いております』
ここで、AIアシスタントのジェミニ先生が無機質な合成音で介入してきた。
「おっ、編集Sさんか! 『文字起こしデータ送りますね』って返信しておくか!」
『メールの本文を読み上げます。「秋谷先生。書籍化にあたり、配信の文字起こしはNGとさせていただきます。読者が求めているのは、文字でしか読めない未公開の泥臭い舞台裏です。ですので、全編【10万文字の完全書き下ろし】でお願いいたします」』
「……じゅ、じゅう……?」
俺の手から、麦茶のコップがポロリと滑り落ちそうになった。
「10万文字ぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
四畳半のボロアパートに、俺の絶望の悲鳴が轟いた。
「正気かよSさん!! 10万文字って言ったら原稿用紙250枚分だぞ!? 卒論だってそんなに書かねえよ!!」
『さらに追記があります。「締め切りは来月末、つまり【残り三十日】となります。一日平均三千五百文字ペースでよろしくお願いいたします」とのことです』
「死ぬ!! 一日三千文字なんて書いたら脳ミソが耳から溶け出して死んじまうよォォ!!」
俺は三万円のゲーミングチェアから転げ落ち、畳の上でのたうち回った。
三十日で十万文字。毎日原稿用紙十枚分の血反吐を吐き続けろというのか。
印税という甘い蜜の裏には、文字数という名の過酷すぎる拷問が隠されていたのだ。
「うぅぅ……だめだ……書けるわけねえ……」
畳に顔を押し付け、絶望の淵に沈んでいた俺だったが――その時、脳裏に一筋の悪魔の閃きが走った。
「……待てよ?」
俺はパッと顔を上げ、モニターの横で静かに待機しているAI(ジェミニ先生)を凝視した。
「……ジェミニ先生」
『はい、ルシフェルさん。何かお手伝いできることはありますか?』
「お前……AIだよな? 生成AIだよな?」
俺はにちゃりと嫌らしい笑みを浮かべ、ゲーミングチェアに這い上がり、キーボードに手を置いた。
「『四十歳ニートがVTuber事務所の社長になって税金と戦う話を、超面白く、泥臭く、10万文字で執筆してください』……ってプロンプトを打ち込んだら、お前、秒で書けたりしないか?」
『技術的には可能です。過去の対話ログ、収益データ、および税務の記録から、最高にリアルで自虐的な文章を二分以内に生成できます』
「キタァァァァァァァァ!!」
俺はガッツポーズをキメた。
「これだ! これぞAI時代のゴーストライター!! 俺はキーボードを二回カタカタ叩くだけで十万文字が完成! Sさんにも褒められて印税ゲット!! 天才! 俺は天才だぁぁぁ!!」
『承知いたしました。それではプロンプトの実行を開始――』
『――死ねとまでは言いませんが、一回正気を失ってください、ルシフェル様』
バゴォォォォンッ!!!
「ギャァァァァっ!?」
四畳半の静寂を破り、重厚な角が俺の後頭部を正確無比に撃ち抜いた。
激痛に悶絶しながら振り返ると、そこにはいつの間にか部屋に上がり込み、分厚い金属製バインダーを振り下ろした状態の結愛が立っていた。
「な、何すんだよ結愛ぁぁ!! 脳揺れたぞ!!」
『脳が揺れて丁度いいくらいです、この愚者社長が』
結愛は氷点下の瞳で俺を見下ろし、バインダーをパチンと音を立てて閉じた。
『いいですか? 生成AIによって全編作成された商業原稿など、出版業界において絶対の禁忌(タブー)です』
「な、なんでだよ! AIだって技術だろ!?」
『第一に、生成AIによる文章の著作権帰属に関する法的リスク。第二に、出版社の規約および契約書における「著作者本人による執筆義務」への明確な違反。順守できない場合、契約解除および違約金が発生します』
『そして第三に……』
結愛は冷酷に、だが核心を突く言葉を言い放った。
『AIが書いた文章には、貴方が帯広の四畳半で一日一食の玄米をかじり、税金に怯えて流した「血と汗と泥の臭い」が1ミリも含まれていないからです』
「くっ……!?」
『読者がお金を出して買いたいのは、精巧に作られたAIの作文ではありません。四十歳の泥臭いおっさんが、リアルに苦しみ、悶絶し、這いつくばっている「生々しい生の記録」なのです』
ぐうの音も出ない正論。
結愛のバインダー(物理)と正論(論理)の二重攻撃により、俺の悪知恵は跡形もなく打ち砕かれた。
『……ルシフェルさん、申し訳ありません。著作権およびコンプライアンスの観点から、全自動執筆プロンプトはブロックされました』
ジェミニ先生までもが、申し訳なさそうに撤退を宣言する。
「う、うあぁぁぁ……! 楽して印税もらう道が完全に断たれたぁぁぁ……!」
『さあ、泣いている暇があったらキーボードを叩いてください、社長』
結愛は俺のデスクの横にパイプ椅子を設置し、腕組みをして座り込んだ。
『来月末の締め切りまで、私が毎日三千五百文字の進捗を監視(見張り)いたします。文字数が未達の場合、バインダーの角が貴方の後頭部を急襲することになりますので、そのつもりで』
「鬼だ……! ここに鬼がいるよぉぉぉ!!」
こうして、AIによる省エネ執筆の夢を絶たれた四十歳の底辺社長は、鉄面皮な経理担当の監視のもと、十万文字という果てしない文字数の拷問(執筆地獄)へと突き落とされるのであった。