「あっ、恵からメッセだ」
リビングでゴロゴロしていたら、ピコンとスマホが鳴り、私は飛び起きる。
尊さんはキッチンでお昼の準備をしていて、手伝うと言ったけれど「簡単な物だからいいよ」と断られてしまった。
【ただいま。やっと家に帰った。セレブの家と自分の家とのギャップが酷くてクラクラする】
彼女らしいメッセージを見て、私は思わず笑顔になる。
【うまくいきそう?】
【涼さんはすぐにでも同棲したがってる。ご家族にも会わせたいと言ってて、気持ちはありがたいけど急展開すぎて。自分としても気持ちが盛り上がってしまっていて、今は冷静な判断がくだせないと思ったから、一旦逃げ帰ってきた】
確かに恵の言う事には一理ある。
【それでいいと思うよ。会社で働いていつも通りに過ごして、日常に戻ってから冷静に考えてみるのもアリなんじゃないかな。私もランドに行って『わーっ!』となっちゃったけど、シラフでラビティーカチューシャは被れないわ】
【マジそれな】
ランドでの高揚感、魔法にかかった感は凄い。
【朱里先輩、今度恋バナ聞いてよ】
【勿論! エミリさんと春日さんも召喚しちゃう?】
【そういえば春日さん、神くんとどうなったか気になるね。よし! 女子会だーっ!】
恵は某有名ロックバンドの曲名のように宣言し、キャラクターがドラムを叩きまくっている動くスタンプを送ってくる。
「朱里、飯」
その時、キッチンから尊さんの声がし、私は「はーい」と返事をする。
【ご飯食べてくるね。恵もちょっとゆっくり休みなよ】
【分かった】
そのあと、私は二人にも連絡しておく旨を伝え、一旦メッセージを終えた。
「わぁ~! お肉~!」
ダイニングテーブルの上には三田(さんだ)牛のローストビーフ丼があり、赤身のお肉と卵黄との対比が美しい。
側にはワカメの卵とじスープがあり、上には白ごまがあしらわれている。
「……下手すると、花束をプレゼントした時よりテンション高ぇな」
「お肉だって花びらみたいなもんじゃないですか……」
私は今にも涎を垂らしそうな表情で椅子に座り、「はぁ~……」と吐息をついてからスマホで写真を撮る。
「いただきまーす!」
私は胸の前で手を合わせてから、自分用の赤いお箸を手にとってご飯を食べ始めた。
「恵、涼さんといい感じみたいです。もう同棲も迫られてご家族にも会わせたがっているとか。でも、流されるのが怖いから一旦冷静になるって言ってました」
「そのほうがいいかもな。涼はいい奴だし、中村さんを裏切る事はないと思う。でも、いきなり三日月グループの御曹司と付き合う事になったら、普通はビビるだろ。三ノ宮さんみたいな人ならあり得る話かもしれないが、中村さんにとっては青天の霹靂だし、及び腰になってもおかしくない」
「ですねぇ……」
私は頷きながらお肉と白米をモグモグと咀嚼する。
お肉も上等だし、ローストビーフのタレもこれまた……! おいち~!
「でも前向きな姿勢ではあるみたいですけどね。また春日さんたちと女子会する予定なので、第三者の意見を聞いて背中を押されたいんだと思います」
「いいかもな。彼女たちなら忌憚ない意見を言ってくれそうだし。……いや、酒飲んだらウザ絡みするんだっけ?」
尊さんは以前の事を思いだして少し渋い顔をする。
「グダグダになるぐらい楽しい人になりますけど、人に意見を言う時はちゃんと真面目ですよ。無責任な事を言う人たちじゃないので」
「ん、ならいいけど」
ご飯を食べ終えて食器を片づけたあと、尊さんはルイボスティーを飲みながら言う。
「涼はこの上なく真剣だと思うよ。いちいち金を使うから、中村さんから見たら〝金持ちの気まぐれ〟に見えるかもしれない。……でも、俺も同族だから分かるんだけど、本当に好きになれる女性になかなか巡り会えないから、いざ見つかったあとに嬉しくなってジャンジャン金を使うんだと思う」
同族と聞き、私はツンツンと尊さんの腕をつつく。
「尊さんも割とお財布の紐が緩いタイプですもんね」
コメント
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尊さん&涼さん♡ 群がる女性には塩対応だけど....😎 漸く現れた本命の彼女には激甘で😍💘、ついつい色々買ってあげたくなっちゃうのもソックリ🤭💕💕