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「六月十三日」
凪宮雛千(ナギミヤヒナユキ)は今の状況に安堵していた。
家庭の都合と言う形で母方の実家に越して来た、東京から来たとのことでクラスで注目の的だった。一応自分が通う学校舎とは言ってない、制服も最近デザインが変わりお洒落になったと女生徒こ間で人気だ。梅雨の時期で髪が上手くまとまらない、偏頭痛がするとにかく重たい体をしてリビングに向かう。
祖母と母が朝食準備をしていた、台所を覗くと卵焼きが切られていた。早々に朝食を済ませて学校の準備をする、夏服をハンガーから取り袖を通す。変わったデザインだ、学校では東京の話をよく聞かれる。だが生れつきのコミュ障でまだ友達と呼べる相手はいない、今日も学校行き窓際の席で空を見る。嫌になる程曇っている、頭が痛い。後方から何かが落ちる音がした、振り向くと、このクラスの女王的存在の女子に鞄を落とされたらしい。相手はいかにも大人しい子の風貌をした女生徒がいた、鞄のデザインが気にくわないらしい。確かに水色のドラゴン見たいなぬいぐるみバックでかわいいが何故気にくわないのかは自分には理解できない。やはり女とはわからない、周りも所詮傍観を決めているだけで何もしない。この時何を思ったのかいつもなら同じく傍観を決めているはずの自分が動いていた、気付くと落とされた鞄を拾い渡していた。そのタイミングで担任が入って来た、女王的な女生徒が「チッ」と軽い舌打ちをして嫌そうに席に戻った。大人しドラコン女子は鞄をあさり包みを渡して席に着いた、自分も席に着き中身を確認するとアイスの当たり棒だった。どうやら買った店もメモしてあった、少し…いやだいぶ衛生的に良くないのでは?とも思ったがきちんと洗われていた。その後何もなく放課後になり早速交換しに行った、ご丁寧に地図も書いてあったのですぐ着いた。どうやら駄菓子屋で買ったらしい、店番していたおばあちゃんに伝えて引き換えてもらった、そこでいきなり後方から声が聞こえてきた。「ダブルソーダ生産終了!」
と驚いた声が聞こえた、こちらの方が驚いたがそこにはなにやら見たことある鞄があった。水色のドラゴン、朝に鞄を拾い渡した大人しドラコン女子だ。どうやらダブルソーダと言うアイスが生産終了らしい、名前を聞く前にわかった、ドラゴンの鞄に幼稚園で着けるサクラ型のネームバッチに名前が書いてあった。円木 綴(まどき つづる)ちゃんと読み仮名が書いてた、やはり変わっている。綴は頭を悩ませていた、学校とは違い変なカチューシャを付けていた。綴はこちらの存在に気付いて詰め寄って来た、気付かれたのだ。自分が交換ついでにラスイチのダブルソーダらしい、仕方ないので店先の古いベンチに座って分けることにした。綴は無表情のまま目をキラキラさせてペコッと一礼して食べ始めた、半分ほど食べたときその手が止まった。不意に立ち上がり、「秘密発見」
と言ってをオッケーの形にして、手の穴を覗いた。最初はなにやってんだこいつと思った、ダブルソーダの片割れを一気に食べ、頭が痛いとばかりに軽く叩いてどこかに走り出した。好奇心は猫も殺すとはこの事だと後から後悔した。
綴の足はそこまで早くないので追い付くのも簡単だ、走って数分程で綴は息を切らしながら止まった。着いた先は港のテトラポットだ、波が少し荒いからいつもより釣り人がいない、なんなら誰もいない。綴はテトラポットに駆け寄り覗き大声で叫んだ、「大丈夫かー!助けに来たですよー今人呼びますですよー!」
どうやらテトラポットの隙間に誰かぎ落ちたようだ、幸い近くが漁港だったので漁師達が手伝ってくれ無事に落ちた人は助かった。
翌日全校集会が開かれた、どうやらテトラポットの事故で人命救助をしたとのことで、綴ではなく何故か自分が表彰された。どこか腑に落ちない気持ちだった、自分は何もしていない。この世が正しいことを謙遜しなければならないこと、しないと自慢などと言われる。
綴は翌日から何事も無いように登校してきた、相変わらず変わったカチューシャでつい話し掛けてしまった。「なんで昨日全校集会で人命救助の表彰断ったの?良いことのはずだろ。」
綴はわからないと言った表情だった「別に普通じゃない?我輩の表彰なんて誰も見ないし興味だって無いでしょ。」
昨日は一人称がわからなかったがまさかの我輩とは思っても見なかった、笑いより興味が湧いた。
これ程に人に興味が湧くことはなかった。