テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ドアがゆっくり開いた
入ってきたのは、LANだった
ー
LAN、……よぉ、飯、持ってきた
ー
軽い調子で笑みを浮かべながらも、
どこか探るような視線
なつは壁際に座ったままLANを見上げる
ー
暇72、……
LAN、無理に話さなくていい
けどお前……前より表情が柔らかくなったな
ー
LANはそっと、トレイを置いたあと
自分のコートを脱いで──なつの頭にぽん
と手を伸ばす
その瞬間
ー
暇72、ッ!─触んなッ!!
ー
ビリついた空気が炸裂する
LANの手を、なつが思い切り叩き落とした
ー
LAN、ッ……!?
ー
LANが驚いて目を見開く
なつの目は怒りと恐怖で揺れていた
ー
暇72、……誰が、許可したんだよ
ー
LANは一瞬、口を開けかけるが言葉が
出ない
ただ、静かに距離を取る
ー
LAN、……悪かった
ー
そう言って、コートを取りLANは部屋を
出ていった
──その後ろ姿を、なつは見なかった
けれど
部屋の角、監視カメラの死角で──
なつは膝を抱えながら、唇をかみ
しめていた
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
監禁部屋
静かに軋むドアの音
ー
いるま、おい、また髪濡れっぱなしで寝ようとすんな
ー
バスタオル片手に入ってきたのは
いるまだった
風呂上がりのなつは、濡れた髪を放置して
ベッドにうつ伏せていた
ー
暇72、うっせ…俺の髪くらい
俺がどうしようが
いるま、風邪引くだろ ただせさえ身体
弱いんだからさ
ー
タオルが無理やり頭にかぶせられる
不意打ちに、なつが少しもがく
ー
暇72、……なにすんだよ
いるま、乾かしてやんだよ
ー
バスタオルの下でごしごしと優しく
乱暴な手つき
その指の感触になつの体がぴくりと
反応する
ー
暇72、ッ!…(……なんか、知ってる)
いるま、昔もよく、こうしてやってたな…
ー
いるまの低い声が、ぽつりと落ちた
ー
いるま、お前、すぐ風呂出て
走りまわって……そのたびに俺が捕まえて、タオルで無理やり拭いてた
暇72、……そんなの、知らねぇし
いるま、覚えてなくていい…
俺が覚えてるから
ー
静かで、やさしくてでもどこか切ない
その言葉になつは言い返せなくなった
ー
暇72、(なんでだよ……わかんねぇのにまた
涙出そうになるんだよ……)