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小学生の僕と強面占い師
第3話_僕のたのしみ
「ひゃ〜あれは傑作だったねぇ」
暫く笑っていた占い屋の老婆はフードを取る
そこに居たのは、誰が見ても優しそうだと答えるであろう見た目の、柔らかくイタズラっぽい笑みを浮かべたおばあちゃんが映っていたのだ
おばあちゃんは目尻に溜まった涙を指で軽く弾くと僕の方へと歩み寄ってくる
*おばあちゃん「いらっしゃいユウちゃん。今日は来ないと思っていたよ」*
この声を聞くと、僕は自然に笑顔になれる
*ユウト「どうしてそう思ったんですか?」*
僕は分かっていながらも嬉しそうにおばあちゃんに尋ねると、彼女もまた笑顔で答える
*おばあちゃん「今日は天候も悪いからねぇ…なんとなくさ」*
*ユウト「…変なの、何回でも来るよ。僕はここ大好きだからね」*
僕がおばあちゃんと出会ったのは2週間前だ
丁度タクヤによる肝試しの提案に乗った辺りの頃、 当然店の前を通るくらいにしか進展は無かったのだが…おばあちゃんと僕が出くわしたのは 僕が落し物をして取りに一人で戻った時だ
あの時も、おばあちゃんは同じ様に僕を驚かせてきた
「…ねぇおばちゃん、占い出来るの?」
「…!」
「そういうの僕、信用出来ないんだけどさ…もし信じられる程の力があるなら僕、見てみたいな」
それから僕は度々おばあちゃんの占い屋へ行くようになった
一緒に居るようになってから、噂の怖い老婆なんてものがバカバカしいものだとはっきりしたのだ
大人のくせにイタズラ心が強くて
それなのに沢山の知識やお話を聞かせてくれて、それが何より嬉しくて楽しいのだ
次第に僕も学校の話や友達、勉強
大好きなコンポタージュの話もするようになり
聞き上手なおばあちゃんは笑顔でそれを聞いてくれるのだ
___
*おばあちゃん「ほれユウちゃん,寒いだろう?温まるよ」*
占い屋の中へ案内された僕はいつものソファに腰を下ろしていると 奥から出てきたおばあちゃんからマグカップを受け取る
白い湯気がゆらゆらと揺れるそれはかつて僕が好きだと話したコンポタージュのいい匂いがする
*ユウト「…ありがとう!」*
*おばあちゃん「火傷しないようにねぇ」*
ニコニコ笑いながらおばあちゃんは近くの椅子に腰を下ろす
先程来ていた黒のケープは着替えてきたのか、ベージュ色のニットを着ていて暖かそうだ
*おばあちゃん「おや、今日は荷物が多いんだね」*
おばあちゃんの視線の先は僕の隣に置かれたランドセルにある
*ユウト「今日は金曜日なので…荷物が多いんですよ」*
*おばあちゃん「そうかいそうかい、ユウちゃんも大変なんだねぇ」*
*ユウト「ふふっ…ある意味そうかもしれないですね」*
些細なお話から少しずつ花が咲く
トントン拍子に時間が流れては僕は今日あった出来事をおばあちゃんに話した
給食のカレーが美味しかったとか
かけっこで1位を取れたとか
タクヤとアヤノはどうすれば仲良くなるだろうか…なんて事も
とにかくおばあちゃんと話す時間はあっという間で、いつの間にか帰る時間が迫っていた
*ユウト「今日もありがとうございました」*
ペコッと一礼するとおばあちゃんはにっこりと笑い僕の頭を優しく撫でてくれる
*おばあちゃん「いいのよいいのよ、ここはもう誰も来ないし,ユウちゃんみたいないい子が来てくれると嬉しいわ」*
そんな優しい言葉に僕は唇をキュッと噛む
*ユウト「……おばあちゃん…僕やっぱり…噂,止めるべきだと思う…前にも言ったけど,こんな酷い噂で、毎日嫌でしょ…」*
ここでお別れをする度に僕は同じ事をおばあちゃんに言っている
勝手に肝試しスポットとして扱われるおばあちゃんのお店は、噂なんかよりもずーっと暖かい場所で素敵な場所だ
*おばあちゃん「ユウちゃん」*
おばあちゃんに名前を呼ばれ,おずおずと顔を上げる
そこに居たのはおばあちゃんでは無く青白いお面をかぶった不気味な人物だったのだ
*ユウト「うわっ!?」*
思わず大きい声で驚いてしまい慌てて口元を抑える
その間おばあちゃんは肩を震わせながら顔につけた白いお面を取り外す
いつもの柔らかい笑顔が現れると僕は改めておばあちゃんにドッキリを仕掛けられたのだと理解した
*おばあちゃん「ユウちゃん、私と居る時は常に油断しちゃダメよ」*
*ユウト「おばあちゃん…」*
*おばあちゃん「私はこの場所にまた人が来てくれるのが嬉しいのよ。忘れないでちょうだいその代わり私もユウちゃんが私を心配してくれている優しい気持ちを持っているって事。忘れないからね」*
*ユウト「…ん、わかったよ」*
やっぱりおばあちゃんには敵わないな
また話が伸びてしまうと親に心配かけてしまうと思い、それ以上は何も言わず僕は来た道を戻り始めた
途中おばあちゃんの咳が聞こえた
前に来た時、病院行くって話をしていたけれど…行ったのかな…
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