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白山小梅
12
──事後は必ずお風呂がセット。エコだからと、一緒に入るのが柊 碧音流(?)らしい。はじめは抵抗さえしたものの、最近は抵抗する気力もない。最後まで抗うと、担がれて強制連行されてしまうのだから。どうしても一緒、らしい。
「水、飲む?」
「うん、飲みたい」
「飲ませてやろうか」
「……ひとりで飲めます」
「そ。ざーんねん」
ペットボトルの飲料水を受け取る。ちゃぷん、と雫が滴る音と熱気が籠る浴室内。白く濁ったお湯船から漂うのは、ふんわりと弾けるミルクの香り。
ひとりでは悠々と入れるだろうバスタブは、大の大人二人では、どう足掻いても手狭だ。
なので、背後から抱えられて、柊の膝の間にちょこんと膝を抱えて座っているという状態。
対面?いくら慣れたとは言え、無理である。
にごり湯、無し?以下同文である。
やっと体力が回復してきたあたしとは違い、バスタブの縁にどかりと腕を置いた柊は、呑気に鼻歌を歌っている。
「柊って、毎回余力のこしてるよね?そういうの、なんか、ずるい」
「余力……?そうかな、普通じゃない」
「普通じゃない!ちょっとは妬いてくれても、バチは当たらないよ?」
「なるほど、ほとりちゃんは俺に妬いて欲しいわけだ」
「そういうこと」
「絶対いや」
「はぁぁん?妬いてよ!」
「気が向いたらね」
この感じは、向かないパターンだと勝手に推測する。
妬いてくれなくても良いですよー、だ。
こう見えてあたし、居酒屋のお客さんから、たまーに連絡先聞かれることがあるんですよ。
でも、柊に自慢しても、かすり傷にもなりやしない。
逆に、カウンターが怖いので、言わないでおく。
──そうだ。もし、今後本当にナンパされることがあって、その人が超絶イケメンだったら柊に自慢してやるんだもんね。
ヤキモチのことは、勝手に今後の目標にする。そうする。
「妬くこと以外で俺にして欲しいことはありますか、お嬢さん」
ひとりで決意表明をしていれば、柊は何故か執事風に聞いてくる。今日はそういう遊びらしい。
「して欲しいというか、したいことはありますわよ」
お嬢さま言葉が分からないので、変な語り口調になっていれば「したいって、何を?」と、柊は失笑するから「フェラでございます」と、ど直球に言ってみる。
「そっちかよ」
「だって、えっちの時も柊ばっかりで……あたしには、させてもくれないし」
さっきも、1から10まで柊のペースだったし。ちょっとはあたしが余裕な柊くんを乱してやっても良いかなって思うんです。
ぶくぶくと湯船に沈んでいくと、柊はあたしの肩口に顔を乗せてくる。
「べつ、柴崎にしてもらわなくても良いかな」
「……なんで?」
「教えない」
これも、どうやっても教えてくれないパターンだと推測してやる。
つんつん、ふにふに、柊はあたしの頬で遊んでいる。あたしは食べ物役と、おもちゃ役まで兼任しているらしい。
「……でもね?」
「なーに、今日は次々に出てくる日ですね」
「うん。今日の柊はいつもより優しい気がするから、たくさん言う日に決めた」
「統計とったのかよ」
「柴崎ほとりの脳内には柊碧音専用のデータベースがあって、常に更新されているんです」
ドヤってみたのに「へー」と柊は興味無さそうに呟くので、肩透かしにあった気分である。こういう時も、あたしと柊の温度差は激しいのだ。
──ちょっとは、焦ってくれても良いのにさ。
「……たぶん、柊よりもあたしのほうが好きだから、別れる時は絶対あたしが振られるパターンだって思ってるもん……」
優しい日だと決めつけて、ちょっぴりメンヘラ要素も吐き出してみると、
「く、ははっ、まじかよ。うけるわ〜」
見事、爆笑に終わってしまった。むねん。
「わ、笑うことないじゃん!」
「いって、腕抓るのやめろ。つーか俺、逆上せそうだからそろそろ上がるわ」
「え?早くない?」
「普通じゃん。なに、一回風呂場でヤる、ですか?」
「あ、あとで、しましょう、です……」
ぶくぶくぶく、敗者は大人しく湯船に浸かる。
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