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#ファンタジー
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#ファンタジー
リディアが天使種族の少女を連れ帰ると、アルマが出迎えた。
「リディア様、お帰りなさいませ。……その方は?」
「森で倒れていたの。横にさせたいから、布団を敷いてもらえる?」
「はい、かしこまりました。キング、綺麗にしてあげて」
アルマが指示を出すと、居間でぼよんぼよんとしていたキングが、浄化スライムを生み出した。浄化スライムはぽよんぽよんと少女の元に向かい、汚れた肌を綺麗にしていく。
「はぁ……。こんなこともできるんですね……」
「アルマはいろいろ、考えて動いてくれるから。ふふっ、頼りになるわよ?」
「……あたしも頑張ってますよぉ」
リディアが治癒薬を取りに行っている間、アルマは布団の準備を終え、少女を静かに運んだ。翼があって仰向けには寝かせられないので、ひとまずは横向きで寝かせることにする。
「ぼよんぼよん」
「ぼよんぼよん」
「……ヘルミナ、何をしているの?」
「いやぁ……。何をやっていいのか分からなかったので、キングと一緒にリズムを刻んでいました……」
「それじゃ、包帯の準備をしてくれる?」
「はい!」
少女の汚れを取り終わった浄化スライムは、キングに再び吸収されていった。その様子に目を奪われながらも、ヘルミナは包帯を巻く任務を終わらせる。
「――ふぅ。そのうち目を覚ますと思うけど……。こういうときのために、診療所みたいな場所が欲しいわね」
「それはいいですね。緊急の案件は、リディアさん担当……みたいになっていますし」
「まぁ、さすがに珍しい来訪者は、すぐに教えてもらいたいけど……」
「リディア様、わたしは栄養のとれそうなものを作って参ります」
「あら、ありがとう。固形の、食べやすいものも用意しておいてくれる?」
「承知しました」
そう言うと、アルマはキッチンの方に向かった。床の振動から察するに、キングも一緒に付いていったようだ。
「アルマちゃんとキングって、なかなか良いコンビですよね」
「どちらも可愛いわよね」
「キングって、可愛いですか? まぁ……可愛い、のかなぁ……」
「ふふっ。見た目もそうだけど、仕事をこなしてくれる子は可愛いじゃない」
「……あたしも頑張ってますよぉ」
「はいはい、可愛い可愛い」
そんな話をしていると、布団に寝かされた少女の口から、小さな声が聞こえてきた。ふたりが注目している中、少女は静かに目を開ける。
「――うぅ……。こ、ここは……?」
「目が覚めた? ここはオルトゥスっていう――開拓を始めたばかりの土地よ。あなた、近くの森で倒れていたんだから」
「オルトゥス――聞いたことのない名前……。わたくしは――ああ、故郷がヒルのような魔物に襲われて……、それで、みんな錯乱して……。それで、みんなを置いて、逃げてきて――」
「まずは落ち着いて? ここは安全だから……。私の名前はリディア。オルトゥスの主よ」
「……リディア様。助けて頂いて、ありがとうございます。……わたくし、シャロンと申しますわ」
金色の長い髪に、青く透き通る瞳。優しさと穏やかさを持つ彼女の雰囲気は、争いごととは全く無縁のように思えてしまう。
「あたしはリディアさんの仲間のヘルミナです! シャロンちゃん、よろしくね!」
「ヘルミナがあなたを見つけてくれたのよ。彼女、森で拾ったり拾われたりするのが得意なの」
「……リディアさん。その紹介には少し文句を言いたくなりますねぇ……」
「うふふっ。ヘルミナさんは面白い方なんですね。助けてくださり、ありがとうございました」
しばらく話してから、一旦は大丈夫そうだということで、全員で食卓に移動する。そこにはアルマが用意したスープとパンが置いてあり、シャロンは申し訳なさそうに食べ始めた。
「……そういえば、素敵な浄化スライムがいるんですね」
「ぼよんぼよん」
「ええ、オルトゥスのマスコットよ。可愛いでしょう?」
「はい、とっても!」
「そっかぁ……。あれは可愛いのかぁ……」
シャロンの言葉に、ヘルミナは考えながら声に出す。徐々に、ヘルミナもキングのことが可愛く見えるようになっていった。
シャロンの食事が終わると――彼女が外に出たいというので、リディアはそれに付き合うことにした。アルマとキングは家事に、ヘルミナは森の巡回に戻っていった。
「――わぁ、広い場所ですのね」
「最初は私とシオンだけだったんだけどね。今は、住んでくれる人を募集中なの」
「シオン……さん、というのは?」
「ああ、ごめんなさい。私と一緒に暮らしている男の子よ。きっとあなたも気に入ってくれるわ。……今は少し、出掛けていてね」
「なるほど……。ところで、リディア様は……人間なのですか?」
「あら、見ての通りよ?」
「それにしては……闇の臭いがするな、と……」
「それは仕方ないわね。私、死霊術を使うから」
そう言うと、リディアは足元からスケルトンを呼び出した。スケルトンはシャロンに手を挙げて挨拶をしてから、そのまま地面に戻っていく。
「……ゆ、愉快なスケルトンさんでしたわね……?」
「私が呼び出すものは、何かヌケてるのよねぇ……」
「でも、夜中に遭ったら……やっぱり怖いと思いますわよ?」
「そう言うシャロンは、光の臭いがするわ。そういう魔法を使うのかしら?」
「わたくし、魔法が苦手で……。照明くらいの光なら出せるのですが……」
さて、それなら何に役立てられるか――そんなことを考えてから、リディアは軽く頭を振った。立場上、どうにも開拓の話に紐付けてしまう。
「まぁ、適材適所よ。できないことは仕方ないんだし、できることをやるしかないもの」
「そうですね。素敵な考え方だと思いますわ」
涼しい風が吹く中、ふたりはオルトゥスを静かに眺めた。広大な土地に、ほどほどの畑が広がり、遠くには建物が少しだけ集まっている――
「……うーん? 不思議な感じですわね……」
「え? 何が?」
「この場所を、街にするおつもりですよね? その割に、中心部に畑が広がっておりますし……」
「ああ……。これは最初の頃の名残りね。私が自分のために、家のまわりに畑を作っていたのよ」
「なるほど……。中心部はリディア様のお屋敷にするか、あるいは広場のようにした方が……。さすがに、畑のままはもったいないような……」
何となくは分かっていたが、改めて言われると、そうとしか思えなくなってくる。今はこの程度の畑だが、いずれはもっと、たくさんの人口を支えなければいけないのだ。
「シャロンって、そういうことには詳しいの? 街の作りとか、構造とか」
「いえ、専門知識は無いです。ただ、わたくしは翼があるでしょう? だから、いろいろな街を空から眺めて……スケッチするのが好きでしたの」
「へぇ? 絵を描けるの?」
「天使種族は人口も少なくて、娯楽も少ないですから……。一般的に、絵や歌が得意なんです」
「それは素敵ね!」
「……あの。期待値だけ……どんどん、上げないでください?」
そうは言うものの、リディアは大きな期待を抱いてしまった。すぐにスケッチブックと鉛筆を持ってきて、シャロンに手渡す。彼女は少し困りながらも、翼を広げて空に舞い――空中で器用に描き始めた。そしてスケッチが終わると、優雅に地面に下りてきて、そして――
「――ゴブゥッ!!?」
……口から盛大に、血を吐いた。
「ちょ、ちょっと!? 大丈夫!?」
「……お、おかしいですね? 故郷で怪我をして、自分でだましだまし治してきたのですが……上手く治療ができていなかったのでしょうか……」
見る限り、表情は深刻ではなさそうだが――リディアはすぐにアルマを呼んで、シャロンを再び布団に寝かせた。突然の出来事に慌ててしまったが、居間でスケッチブックを見てみると、そこには見事な上空図が描かれていた。感覚的に、実際のものとかなり近いような気がする。
「……真上から見ると、オルトゥスってこうなっているのね。それなら、ここに水路を通して、この一帯を職人の地区にして、それで――」
リディアの頭には、今後の構想が生み出されていった。この上空図を元に、シャロンが見てきた街の要素を加えていけば――オルトゥスでも、それなりの開発計画を立てられるかもしれない。
「……シャロンの健康は心配だけど」
それを含めて、やはり診療所のようなものも作っておきたい。
ただ、誰に任せても素人仕事になってしまうだろうから……ここはいっそ、次に移住してきた人に任せてしまうか――リディアは何故か、雑な思考に陥っていた。
コメント
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読んだよ〜!!😭💕 今回、シャロンちゃん登場で一気に世界観が広がったね!!空からの視点で街の絵を描くなんてエモすぎるし、リディアの“開拓者脳”も相変わらずだな〜ってニヤニヤしちゃった🥺 最後の吐血シーンはちょっとビビったけど、まだまだ謎も多いし、これからどうなるのか気になりすぎる!!続き楽しみにしてるよ〜🌸📖