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そのじん
「ん」
事務所に入ってくるなり、目の前に差し出されたパックと、それを差し出した仁ちゃんの顔を交互に見る。
「なにこれ?」
「え、スイカ。」
「いや、それは見れば分かるけど…」
パックに入っている、切り分けられたスイカを見つめながら呟く。なんで急にスイカ?
話を聞けば、どうやら別番組の収録の時にケータリングとして出たもののようで、持って帰ってもいいよと言われたからいただいてきたらしい。
「それなら仁ちゃんが食べたらいいやん」
「いいよ、舜太にって思ってもらってきたんだし」
「え、なんで??」
「だって舜太果物好きじゃん。なんかちょうどいいかなって思って。赤だし」
赤だし?俺のメンカラが赤だからってこと?
「なんなんその変な理論。ちなみに仁ちゃん、スイカって細かく分けたら果物じゃなくて野菜やで」
「え!そうなん!?」
知らんかった、おっきな目をまんまるにしてびっくりする仁ちゃん。
うっかり口に出してしまいそうになった言葉を飲み込んで、仁ちゃんに笑いかける。
「でも嬉しいわ。ありがたくいただくね?」
「ハイめしあがれ〜」
プラスチックのパックを開けて、ひとかけらをいただく。
「あまくておいひい!」
「ふははっ!お前はほんとかわいいなぁ!」
スイカを頬張る僕を見て、仁ちゃんは大きな口を開けて笑う。何だか今日の仁ちゃんは上機嫌のようで、こっちまで嬉しくなる。
「せっかくやから仁ちゃんも食べなよ、ほら」
あーん、パックからもうひとかけらを取り出して口へ持っていくと、仁ちゃんは素直に口を開けてぱくりとスイカに齧り付く。
「ほんとだ、おいひいわ」
両手を口元に当てて目をぱちくりさせる。あざといなぁとも思うし、やっぱり。
「仁ちゃんもほんと可愛いねぇ」
「バカにしてんのかお前」
すかさず頭に飛んできた平手を甘んじて受けながら、バカになんかしてないよと心の中で思う。
だってあなたは僕にとって、可愛い可愛い大好きなひと。
end.