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3話!いっくよぉー!!!
放課後の校庭。
夕日が長い影を落とし、空はオレンジと紫に染まっている。
翔太はいつものように、無言で校門をくぐる。
灰色の世界に慣れたはずの彼の心は、少しだけ落ち着かない。
その理由は、もちろん――阿部が今日は先に来ていたからだった。
「おい、遅いじゃん」
阿部は笑顔で手を振る。
でもその目には、ほんの少しだけ心配が混じっていた。
「……別に、遅くはない」
翔太はつい口を尖らせる。
ツン、とした口調は変わらないけれど、どこか心臓が早くなるのを感じていた。
「じゃあ、一緒に帰るか」
阿部はそう言いながら、校庭の小道へ歩き出す。
翔太は仕方なくついて行く格好になった。
でも、その途中で――
校庭の小さな段差に足を取られ、翔太はバランスを崩してしまう。
「うわっ!」
必死で手を伸ばすが、次の瞬間、阿部が反射的に腕を伸ばした。
「っ…!」
翔太は、予想外に近い距離で阿部に支えられた。
その瞬間、二人の体温が重なり、心臓が跳ねる。
「……大丈夫か?」
阿部の声は、いつもより少し低く、真剣だった。
「……あ、ああ」
ツンとした口調を維持しようとする翔太。
でも胸の奥が熱く、手のひらまでじんわり温かい。
夕日が二人を包む。
校庭の影が二人の間に伸びる。
灰色だった世界に、ほんの少し色が差し込む――
翔太は、それが阿部の存在のせいだと、ようやく自覚した。
「ありがとう……」
小さな声が漏れる。
「別に、気にしてない」
阿部は少し照れくさそうに笑った。
二人きりになった時間は、まるで世界が止まったように静かで、
でも心は互いに近づいていた。
「なあ、翔太」
阿部がふいに言う。
「……何?」
翔太は少し戸惑う。
「俺、君の光になりたい」
翔太は目を見開く。
「……光?」
阿部は頷き、そっと手を差し出した。
触れることなく、手の気配だけで、翔太の心を揺らす。
「……わかった」
翔太は小さく息をつき、心の中で決めた。
灰色の世界でも、阿部の光を受け止める――
そして、もう一度、色を取り戻すことを。
夕日が沈む前に、二人の距離は確かに縮まった。
灰色の世界に、初めて二人だけの光が生まれた瞬間――
それは小さくても、確かな希望だった。
🌙 × 💙