コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
任務の集合は古い教会の地下だった。
薄暗い石階段を降りていくと、蝋燭の灯りが揺れ、地下礼拝堂の空気は湿って重い。
そこに、深紅の環のメンバーたちが集まっていた。
「おいおい、やっと来たのかよウサギ野郎」
灰色の髪を乱暴にかきあげた**百鬼(なきり)**がこちらをにらむ。
「うるせえ雑魚。てめぇの顔見たら夏バテ悪化すんだよ」
俺が即答すると、百鬼のこめかみがピクッと動く。
「はぁ?今ぶっ殺していいか?」
「やれるもんならやってみろよ。三秒で泣かせてやる」
「やめぃやめぃ。喧嘩は任務終わってからにし」
ロディが二人の間に入り、穏やかに笑った。
――この男、こういう時だけは本当に便利だ。
やがて、前に立っていた黒衣の人物が口を開く。組織をまとめる暗部の司祭、セイレン神父。
「本日の任務は情報奪取と拠点破壊。標的は――“教会”だ」
その一言で空気が変わった。
「……は?」
思わず声が漏れた。後ろで百鬼も顔をしかめる。
「教会って、普通の?信者がいる、あの――」
「そうだ。西区三番街の聖堂。聖職者が出入りするあの教会だ。」
なぜだかわからないが、ロディの気配が一瞬だけ揺れた気がした。
(……教会……?)
胸にチクリと嫌な予感が走る。けど理由はわからない。ただ、背中がざわつく。
セイレン神父は淡々と続けた。
「標的の教会には《敵》が潜伏している。表向きは孤児院を併設する慈善施設。しかし裏では“とある人物”を匿っている――」
「誰だよ、そのとある人物ってのは」
「――名を、聖明《せいめい》という」
ロディの肩が、わずかに揺れた。
俺は気づいて横を見たが――ロディはいつもどおりの穏やかな顔に戻っていた。
ただ、笑っているのに目が笑っていなかった。
(……ロディ?)
初めて見た表情だった。