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3人の夏

1 - 訪ね人

2022年06月12日

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ミーンミンミンミンミン……

「ん”ん”······」

うるさい蝉の声に目を覚ます。

見覚えのない天井に疑問を抱いたが2分もすればぼんやりとだが脳が覚醒していき、自分が例年通り祖父母の家に泊まりに来ているのを思い出す。

見覚えがないとは言ったが毎年来ているのに不思議な事だ。

重たい体を起こしメガネを持って顔を洗いに洗面所へと向かう。

顔を洗ったあとは歯を磨いて大雑把に髪を整えてメガネをかける。

洗面所にメガネを置いておけばいちいち持ってくる手間が省けるのにという意見もあるかもしれないが自分は酷く目が悪く挙句乱視と近視なため遠近感が分からない。

故にかけていないとまず洗面所にたどり着けないのだ。

全く不便で仕方ない。

両親は別段悪くないのに何故自分と兄だけは目が悪いのだろうか。不公平だ·····。

そんな事を考えていれば朝食が出来たと祖母が自分を呼びに来る。

「分かった〜!」

と返事を返し居間へ向かう。

多分あんなに大きな声をだすのは祖父母の家だけだろう。

居間へ行き新聞を読んでいる祖父とご飯を盛っている祖母に「おはよう」と挨拶をすれば2人から優しく「おはよう」と返ってくる。

いつもの定位置に着いたら「いただきます」と一言言い食事をする。

やはり祖母の料理は美味しい。母の料理ももちろん美味しいのだが何故か祖母のものは比べ物にならない程に美味しい。

そんな事をぼんやりと考えながら食事を済ませ「ご馳走様でした」と言えば祖母が「お粗末さま」と優しく笑って食器を片付けだす。

いつもの事だが食器ぐらい自分で片付けると言ってもやらせて貰えないので諦めた。

そうして暇になって宿題をしようかとも思ったが思うように手は進まない。

こうなったら散歩でもしに行くか。

財布とスマホ、祖母が持たせてくれた簡単な軽食を持って家を出る。

家を出て数分もしないうちに

「暑っつ·····」

と言葉が漏れる。

だって仕方ないだろう普段からインドアな自分は外に出ることの方が珍しいのだ。

なんて誰に言うでもない言い訳を自分の中で並べながら歩を進める。

しばらく山へ向かって歩けば長いような短いような石段へと辿り着く。

石段を上がれば人気の無い、不思議と涼しい神社。

丁度いい、ここで祖母が持たせてくれた軽食でもとろう。

持たされた包みを開ければ今どき珍しい竹の葉に包まれたおにぎりと梅干しが出てきた。

一体いつの時代だろうか·····

「いただきます。」

本日2回目の挨拶をする。

母が握るのよりも父が握るのよりも一回り大きいおにぎりを1口頬ばれば直ぐに具が口に入る。

モグモグ…モグモグ……

うん。美味しい。

程よい塩加減に程よい握り加減そして多目に入れられた具材。

全てが丁度いい。

そうしている間に4つあったおにぎりのうち2つをペロリとたいらげてしまった。

やはり普通のものより一回り大きいため腹にたまる。

残りの2つはとっておこう。

少し食休みを済ませたら少し駆け足で神社の奥へと足を進める。

早く行こう。

2人の所へ。

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