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#地雷系
尾津嘉寿夫 ーおづかずおー
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◆◆◆◆
仰向けで眠る俺の左側ではミィがいつも以上に俺の腕に抱き着いている。それどころか俺の足を自身の足で挟み込み、顔も俺の肩に押し付けている……お前それ……せっかく塗ったスキンケアクリームが剥がれ落ちてしまうんじゃないか?
一方のアイさんは自分の腕を俺の腕に絡ませ、身体を横にしてこちらを向き目を瞑っていた。二人の温もりが心地よい……が……刺激が強すぎて全然眠れる気配がしない……。
確かに俺も女性経験はある。しかし、魅力的な女性二人に挟まれながら普段通り眠れる程、俺の女性経験レベルは高くはない。しかも今日のミィはどこかおかしく、いつも以上に俺にくっついて眠っている。俺の左腕には、ミィの呼吸に合わせて上下する柔らかでハリのある胸の感触が伝わりっぱなしだ。
アイさんも、立派なものを持っているせいで、少し離れているにもかかわらず少しだけグラマラスな山脈が当たっている。シングルベッドに2人で眠るのも大概だが、ダブルベッドに3人で眠るのもかなりギリギリだ。まあ、”シングル”ベッドは1人用だからシングル、”ダブル”ベッドは2人用だからダブル――考えるまでも無く当然だ……。
暫く眠れないでいると、左側からリズミカルな寝息が聞こえてきた。ミィが熟睡したようだ。そういえば彼女は今日、撮影に行って来たと言っていたな。慣れない仕事に疲れているのだろう。そんなミィの寝顔を眺めているとアイさんに小声で囁かれた。
「ねえ、起きてる?」
俺はミィを起こさないように首だけ曲げてアイさんを見る。鼻と鼻が付きそうなくらいアイさんの顔が近くにある。
「こんなに近いと、ちょっと恥ずかしいね。」
アイさんは少し顔を赤らめながら囁いた。暗がりではあるが至近距離で見る彼女の顔は、やはり整っており肌もキメ細やかで、彼女の肌はシルクのような触り心地であろうことが、視覚から伝わってくる。俺は目を閉じて彼女に囁いた。
「もう眠いので、おやすみなさい。」
「もう眠っちゃうの? そっか……じゃあイタズラしちゃおうかな?」
イ……イタズラって……!? 俺は思わず瞼を開いた。視界一杯に、クスクスと笑う彼女が広がる。
「あの時のお礼、言っていなかったでしょ? だから……改めてありがとう。」
ありがとうか……俺はミィと会話をした時も、アイさんが自殺未遂をするほど追い詰められているなんて微塵も思わなかった。しかしミィは気が付き俺に助けを求めた。だから、あの場に駆けつけられたのは、完全にミィのおかげだ。
「お礼ならミィちゃんに言ってください。ミィちゃんが気が付いたおかげなので。」
「そうね――じゃあ、2人にありがとうを言わないとね。」
アイさんは少しだけ身体を起こしてミィを見る。
「ミィちゃん、ユウト君にべったりね。それに今日はお風呂上りにも香水を纏っていたみたい……まるで、『ユウト君は私の物だぞ!』ってマーキングしているみたいね。」
マーキング……そういえば、店長の使っている香水の香りに気が付いてからミィの様子がおかしくなったんだよな……まさか……。
「考え過ぎですよ。ミィちゃんとは、ただの友人ですし。」
俺がミィの方を向きながら囁く。
「ふ〜ん……」
あからさまに疑っていることが分かる声色だ。彼女の顔を見なくても、どんな表情を浮かべているか分かりそうだ。
「そう言えばユウト君、『私のことをもっと知りたい。』って言ったよね——少しだけ教えてあげる。」
そう言うと、アイさんは身体を寄せて俺の腕にしがみつく。
「私は自分勝手で……。」
俺の耳元に唇を寄せ囁く。
「独占欲が強くて……。」
俺の耳たぶを甘噛みをした。俺はアイさんから逃れるため、ミィの方に首を傾ける。
「ちょっと意地悪……。」
アイさんはまるでネコ科の猛獣が獲物に襲い掛かるような動きで、俺の首筋に唇を這わせた。首に歯を立て、少し痛みを感じるくらい吸い付く。
「もし私がマーキングをするのなら、ミィちゃんみたいに香りを付けるだけなんて生易しい事はやらないわ。全身にキスマークを付けて、絶対に、離れられないようにしちゃうんだから。」
アイさんの足が俺に絡みつく。ミィの足は何というか……カニばさみといった感じの力技で俺の左足を挟んでいる。一方アイさんは、力は入っていないのだが……ねっとりと……確実に……こちらが逃げる意思を折るかのように足が絡ませる。
「私はもう、好きな人を絶対に逃がさない……。そんな女なの……。」
「アイさんに、それほどまで思って貰える男性は、きっと幸せでしょうね。」
アイさんは俺の首筋から唇を話すと、俺の目を見て声を押し殺しながらクスクスと笑った。俺……何かおかしなことを言ったか……?
アイさんは呆れたような溜息を吐く。
「ごめんなさいね。眠る前に変な話をしちゃって……。」
そう話て瞼を閉じた。俺も改めて天井を向き、心を無心にして目を閉じる。左右の温もりを感じながら……。
コメント
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第53話、読み終わりました。三人でダブルベッドという物理的な距離の近さが、心理的な距離の変化を如実に映し出す構成、巧いですね。特に「マーキング」というワードを挟んで、ミィの無意識な依存とアイさんの戦略的な独占欲の違いが浮き彫りになったのが印象的でした。アイさんの「逃がさない」という台詞のゾクッとする危うさと、それに気づかないユウトの鈍感さのギャップが絶妙です。