テラーノベル
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「妖精様、これをお納めください。これでお怒りをお鎮めください!」
そう言って人間共が持ってきたのは。
「え、それって魔理沙?」
魔理沙だった。
身になんら覚えがなく、ひたすらに戸惑うチルノ。
必死な形相で村人は続ける。
「どうか…どうか、村をお護り下さい!妖精様!!」
魔理沙は殺された。
怒ってもないチルノの怒りを収めるために。
『魔力の高い人間』に当てはまったから。
霊夢がこれまで、間接的にでも守ってきた村の人間に、手出し出来ないから。
抵抗出来ないって。
反撃もできないって、分かっていたから。
だから、存在しないチルノの怒りを鎮めるために殺された。
霊夢が守ってきたものが、霊夢の大切なものに牙を剥いたんだ。
村は滅びた。
もう、変な文献を信じる村人もいない。
博麗の巫女に守られてきたことを盾にして、到底敵わない相手を意味なくねじ伏せた村はもうないんだ。
村が滅びることを恐れ、チルノの逆鱗に触れて。
その件に関して、霊夢はチルノをお咎めしなかった。
「…霊夢」
「何」
「ごめんね」
「何が」
「あたいのせいで魔理沙が死んだことに関して」
「…はっ、あんたのせい?違うわ、私のせいよ」
自嘲気味に笑う霊夢。
「ううん。それも違うよ。悪いのはあの人間たちなんだからさ」
「あら、知らないの。人間はいつだって理不尽なのよ」
チルノは目にためた涙を振り払う。
「霊夢だって、今ショックうけてるんでしょ」
「そうね…正直、自分の守ったものが自分の友達を傷付けるなんて、生涯許さないわ」
「めっちゃ怖いね」
「だけどね…チルノがここまで怒ってくれたの、ほんとはちょっと嬉しかった」
「…そ。あたいは気まぐれなんだよ」
「知ってる。じゃあね、バカ妖精」
霊夢はチルノのもとを去る。
雪が降り始めた空を見上げた。
「…まだ、勝手にしろなんて言ってないじゃない」
返答はない。
「助けを求めるなり、何なりすれば良かったのよ」
霊夢の足が止まった。
灰色の空は太陽を覆い隠したまま。
「あんたが守る必要なかったのよ、あんな村人なんて…」
霊夢には分かる。
お互い長年連れ添った友達だから。
相手が大事にしていたから、魔理沙は反撃できなかった。
いや、きっと。
「反撃…しなかったのね。ほんとめでたい頭だこと。正真正銘本物のバカね。」
霊夢の後ろで、見えない魔理沙が笑った。
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