テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

フリーズ

一覧ページ

「フリーズ」のメインビジュアル

フリーズ

6 - 第5話:裏切り

♥

1

2025年04月29日

シェアするシェアする
報告する

第5話:裏切り

ハート家の小屋は、他より少し大きかった。

元・軍人の母――**アリシア(38)**と、双子の息子たち、**ノアとルーク(13)**が暮らしていた。


アリシアは短く刈った金髪をしていて、いつも無言でドローンの動きばかり見ていた。

息子たちは瓜二つ。けれど、ノアの目は鋭く、ルークの目は揺れていた。




ある日、テレビが突然こう告げた。


「提出:不明」

「死者:1名」

「死因:命の提供による“許可”を確認」


マシロ家の父が唸った。「提出してないのに、誰か死んだ……?」


ゲブレ家のキブルが言う。「提出を“された”だけだとしたら?」


誰もが言葉を失った。


「他人の命を……差し出せる?」




その夜、ルークは兄・ノアの行動を見た。


ノアはセンサーの前に立ち、何かを口にしていた。

「対象:小屋南西・登録番号不明・女性」

「提出、命……他者」


――そして、センサーが反応したのだ。


「提出、受理」

「対象の命、回収完了」




翌朝、南西の小屋が沈黙していた。


テレビには、映像が流れていた。


ひとりの女性が、あのライオン像の前で顔を伏せて凍っていく姿。

見覚えのない人。けれど、この雪山に存在していたはずの家族。


マシロ家の母・ユミが声を震わせた。


「……こんなこと、許されるの?」




その夜、ライオン像が動いた。


いや、雪の下から音がしたのだ。

像の中で、何かが軋んでいた。


片目の光が数秒間点滅し、空気が震えた。

そして、短く歪んだ声だけが降ってきた。


「命、どのものか……判別せず……」

「提出、優先……祈り、判定……不能……」


無機質で壊れかけた声。

機構としての限界が、音の隙間に滲んでいた。




その時、ドローンが一機、突然急降下した。


マシロ家のすぐ近くにいた青年――**ノボトフ家の孫・アレクセイ(18)**の頭上で停止し、

警告もなく、氷の光を放った。


「まって!あの子は――!」


祖父の叫びも虚しく、アレクセイは一瞬で氷漬けになった。




その日の夜、誰も話さなかった。


テレビも、ライオンも、もう何も言わなかった。


ノアは無表情で寝袋に潜り、ルークは母の背に隠れて泣いた。


マシロ家のカナは、小さく呟いた。


「ここは……もう誰も信じられない場所になる」




信じるとは何か。守るとは何か。

選ばれた家族たちは、その意味を問われ始めていた。


次第に、雪山には“命の色”が滲み始める――。



この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚