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「そ、そうだね。これは、僕も初めて見たなぁ」
「悪霊とかなんでしょうか!?」
「うーん、人の霊ではなさそうだね。精霊のような……。でも、初めて見るからはっきりわからないな。そうだ、もしよければ、webカメラで君の部屋を見せてもらえないだろうか。どんな存在なのか、確かめてみたいんだ」
「わかりました」
おいおい、見ず知らずの人間にそんなことをしてもいいのか、と思わなくもない。よほど俺を信用しているんだろう。まあともかく俺は、あの存在が写真だけでなく、カメラにも映るのか、確認してみることにした。
画面に映し出された女の子の部屋は、ごく普通だった。ごく普通の女子部屋といった感じだ。
「……どうですか?」
「いや、うーんと……」
あの不気味な触手の姿は見えない。彼女が寝ているときにだけ姿を現すのだろうか?
「もしかしたら、君が寝ているときにだけでてくるのかもしれない。どうだろう、君さえよければ、カメラをつけっぱなしにして、一晩中僕が見張るというのは?」
「わかりました、お願いします!」
こうして、俺は彼女との奇妙な約束をとりつけ、カメラ越しに一晩中見張ることになった。
そして……その夜。彼女が眠りはじめると、どこからともなくあの触手が出現し、少しずつ女の子に近づいて行った。彼女は気づいていない。俺は録画のボタンをクリックした。
……しばらくして触手は女の子の体に巻き付き始めた。彼女の体をぐるぐる巻きにしていく。しかし、彼女は全く起きようとしない。触手はどんどん数を増していき、やがて完全に女の子を拘束してしまった。そして少しずつ彼女の服をずらし始めた。
「んっ……」
彼女が小さく声を漏らした。俺は生唾を飲む。触手は少しずつ彼女の服を脱がし、やがて小さな胸があらわになった。カメラ越しにもその先端が固くなっていることがわかる。さらに触手はついに下着にまで手をかけ、完全に彼女の服を脱がしてしまった。
「うっ……ううっ……」
彼女が苦しそうにうめく。だが、触手はそんなことを気にもとめず、ついに彼女の下半身へと迫っていく。俺は食い入るように画面を見つめた。
彼女が……俺の見ている前で、触手に犯されようとしている……。
「うっ!……うーん……」
彼女が苦しそうな声をあげると同時に、触手が彼女の未発達な秘所に入り込み、激しく動き始めた。彼女の顔は真っ赤に染まっている。息が荒い。感じているようだ……。
「……んんっ!」
しばらく経つと彼女は喘ぎ始めた。顔が上気している。触手は激しく動き続け、彼女の割れ目から滴る液体がシーツを汚していく……。
「んっ!んんっ!!」
そして彼女は絶頂を迎えた。カメラ越しにもはっきりとわかった。
彼女がぐったりとして動かなくなると、触手はゆっくりと彼女の秘所なでまわした。どうも液体をすくい取っているようだ。そして、彼女の服を元に戻すと跡形もなく消えてしまった……。
俺は唖然としていた。あれはいったいなんだったのか。もし、本当にあの触手が俺にしか見えていないのなら、今の光景は他の人にどう見えるのか。確かめたかったが、やめておいた。もし本当に触手が見えないのなら、これはただのやばい動画だ。他人に見せる訳にはいなかい。
翌日、彼女からDMが来たので返信することにした。
「どうでした?」
「そうだね……やはり、アレが悪夢の原因のような気がする。でもアレは君の部屋にとりついているようだから、例えば友達の家に泊まりに行く、とかどうだろう? そしたらおそらく、悪夢を見ないんじゃないかな? 根本的な解決にはならないけれど、とりあえずの対策としてね」
「わかりました、やってみます!」
その次の日。ふとスマホを見ると彼女からDMが来ていた。
「友達の家だと全く大丈夫でした!」
「よかった! そうすると、やはりあの部屋がよくないと思うので、別の場所で寝るとよいと思うのですが……」
「今日からはお母さんといっしょに寝てみます」
「同じ家だとどうでしょうね……」
「あっ もうすぐ春休なので、一週間くらいおばあちゃんの家に行ってみます」
「それはいいですね。もしかしたら、その一週間のあいだにアレがいなくなるかもしれませんし」
しかし、それにしてもアレはいったいなんだったのか? なぜ俺にだけ見えたのか? 俺に霊感はない、はずだ。少なくてもこれまでの人生でおかしなものを見たことはない。それなのに突然、どうして……?
もしかしたらこれは、「チャンネルがあった」ということなのかもしれない。霊感など特にない人間が、たまたま異質な存在とチャンネルがあってしまう、そういう話はオカルト話に多い……だがそれは、俺が視聴者を騙すためのもっともらしい説に過ぎないと思っていた。まさか実際に自分の身の上に起こるとは……。
彼女からはその後、悪夢を見なくなったというDMをもらった。アレがどこかにいってしまったのだろう。それはよかったのだが、だとしたらアレはどこにいったのだろう? さらにいえば、もしかしたら「チャンネルがあっていない」だけで、アレのようなものは俺たちのすぐそばにもいるのではないか……。
いや、考えるのをやめよう。もし、もう一度ああいうものに出会うことがあったら、俺はyoutuberを辞めようと心に誓った。(終り)