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「できた!」
癒良のやってみたいことを書き終わった。
「…虹。」
癒良が浮かない顔で俺に話しかけた。
「ん?」
「なんも聞かなかったから言うけどさ、外出出来ないのに外出しないといけな
いもの書いたけど大丈夫?」
癒良は心配そうに俺を見つめた。
「大丈夫…じゃないかもね。」
「…」
癒良は黙り込んだ。
「でも、癒良のやりたいことは出来るだけ叶えたい。」
俺が思ったことを口に出したら、癒良はパッと顔を上げた。
「だから、俺が医者に言ってみるよ。」
癒良は、パァアアッと表情をキラキラと輝かせた。
「ありがと!虹!」
癒良はニコニコと嬉しそうだった。
その日の夜のこと。
パァーーンッ
「花火?」
「そうみたいだな。」
急に鳴った音は花火だった。
「虹、この花火どこでやってるの?」
俺も知りたくて、スマホで調べてみた。
「桜町だって。」
「桜町かぁっー!」
パァーーンッ
「わぁぁああ!!」
「あれ、やりたいことリストに、花火見たいって書いてなかった?」
「あ!書いたよ!」
早速願いを1つ叶えられた。嬉しい。
「病室生活で、一回も花火見たことないのか?」
「カーテンしてたから。見えなかった。」
確かに、癒良の部屋の窓にはカーテンがある。
「自分で開けれなかったし、誰もいなかったから。カーテン越しの花火は見た
んだよ。くすんで見えなかったけどね。」
パァーーンッ
「綺麗だね。」
「そうだな。」
あれ?
「癒良って歩けないのか?」
歩けないなんて聞いたことなかった気がする。
「うん。足の筋肉が小さくなっちゃって歩けないんだよね〜」
呆れたように言ったから、そんな気にしてないことかと思った。
けど、俺は気付いた。
癒良は手の爪を擦っていた。
癒良は嘘をついている時に爪を擦ることが多い。
「そんな軽く言うなよ。」
癒良は元々大きい目をもっと大きく見開いた。
「え…?」
「本当は歩けないこと、悲しいんだろ?」
「……」
「ほら、言ってごらん?」
俺は癒良の手を優しく包み込んだ。
「本当は…悲しかった。絶望した。泣くほど辛かった…」
癒良がポロポロと涙をあふれさせた。
涙には花火の純色が映っていた。
「そ、っか…そうか…」
「ねぇ、虹。」
癒良が不意に俺の名前を呼んだ。
「ん?」
癒良は俺の目を見つめて言った。
「ゆら、生まれ変わったら歩けるようになる。だから、一緒に青空の下を歩い
てほしいの。」
癒良が「生まれ変わり」とか信じるんだ…と思った。
「じゃあもし、癒良が生まれ変わったら俺が…癒良を見つけて迎えに行く。」
そう言うと癒良は「うんっ!!」と笑顔で言った。
「ゆらは、虹に見つけてもらえるようにちゃんとアピールするね?」
コテッと首をかしげてニコッと笑った。
その笑顔は花火に照らされていて、とても綺麗だった。
パパパッパァーン!!!パポッポッパパパァーン!!!
桜町のお祭りの花火がラストスパートに入ったのか、黄金色で火花が細かい花
火だった。
「わぁぁあぁあっ!!」
癒良は小さな子供のように声を上げた。
この笑顔が見られなくなるのは、今日を入れてあと18日後か…
それまでに忘れないように、癒良の笑顔を目に焼き付けておかないと。