テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「彼氏が要らない女の心境とは」
インタビュアーの真似事をして、手でマイクを作って芽依の前に差し出すと「は?」と芽依は目を丸くさせた。芽依はその気ではないらしいので、マイクを作った手の上に顎を乗せていじけてみる。
「ちょっと、気になっただけです〜教えて芽依センセー」
「芽依の場合は、単純に楽しくて気持ちいいセックス出来ればOK。好きとか嫌いとかめんどくさいじゃん?疲れるじゃん?だから、彼氏じゃなくてセフレで良いの」
「セフレのこと好きになったこと、ないの?」
「ないない!てか、告られたら冷めるわ。何のためのセフレだよってなる」
あぁぁ、柊も絶対そのパターンだよ。
何故か目に見えるよ。死んだ魚の目でうんざりしている柊が。
「なになに、なーんで気になったの?」
なんでって、柊と芽依は恋愛観が似てるから。果たしてあれが恋愛観に位置づけていいのか分からないけれど、芽依に聞けば、柊のことが間接的に分かるかもしれないって思ったんだ。
「……柊碧音の攻略法、を、知りたくて」
ボソボソとしり込みすると、芽依は嬉しそうに頬を綻ばせた。
「告ればいいじゃん!当たって砕けろだよ〜!てか、脈アリアリだと思うよ?」
実は、当たって砕けてるんですよ、既に。は些細なプライドが邪魔をして、言えなかった。
でも……今度、買い物に行くし、その時に告白して……みる?
ほんの少しの勇気を掴むと、途端にあの日の残像が脳裏で揺れて、ぎゅっとみぞおち辺りが苦しくなる。
いや、やっぱ無理。言ったら今度こそ木っ端微塵に壊れちゃう。
柊と会えなくなるのは嫌。無理。やっぱ、言えない。
壊れるくらいなら、このままで良い。
一度柊の温もりを知ったあたしは、欲深くて卑しい女になったみたいだ。
溜め込んだもやもやを溜息として吐き出すと、芽依はツンとあたしの肩を指でつついた。
振り向くと、芽依はいつもの、にたりとした裏のある笑顔を浮かべているので、ちょっと、いやかなり不安だ。
「ほとちゃん?芽依が好きな物、何か知ってる?」
「え、とりあえず可愛いものとイケメンと、インスタとかTikTok……あとは不倫ドラマ?」
「そ!どろっどろに縺れた恋愛劇、大好きなのよね!」
芽依の目がキラキラに輝いた。さらに、嫌な予感だ。
身構えていると、「これ、見て?」と、芽依はスマホを差し出した。インスタのあるユーザーのページらしい。
ハッピーで溢れる文字と、ハッシュタグで彩られた文章。その隣に添えられた@に続く英文を読み解く。
え、み…?
予感めいたものを感じ取ったその時、芽依のつるんとした指先が画面をタップした。
画面いっぱいに映し出されたのは、オシャレなカフェの写真だった。美味しそうなカフェプレートと、白っぽいテーブルと、エミちゃんらしきネイルが施された手と、向かい側に座るアッシュグレイの髪の男。
写真を撮られているのを知らないのか、その人はスマホを触っているけれど、それは間違いなく……
「エミ、柊くんのこと諦めてないみたいよ?」
柊だ。
それを確認する前から、どくん、と胸の真ん中が嫌な音を鳴らした。
たった何枚かの写真を食い入るように見つめた。柊の顔と全体が映っているのは一枚だけど、その他の写真にも柊と思われる身体のパーツが映り込んでいた。
写真を見る度に、#デート という三文字が視界に映って、どく、どく、ひやりとした音が鳴る。
日付を捉えると、あたしの記憶と何かが結びついた。
こないだの日曜予定があるって言ってたけれど、あれはエミちゃんと会ってたんだ……。
そういえば、日曜以降柊からの連絡は無い。
もしかして、この日、エミちゃんから告白された?それとも……エミちゃんともえっちして、セフレになって、あたしに会う必要性が無くなった?
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
白山小梅
白山小梅
12