テラーノベル
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買い物を終えて自宅へ戻ると、時計の針は正午を少し回っていた。
午後には事務所でメンバーとマネージャーにすべてを話す予定になっている。
その前に、一人だけ先に伝えたい相手がいた。
佐久間。
阿部とはデビュー前から苦楽を共にしてきた親友だった。
朝、目黒と相談して決めた。
事務所へ向かう前に、佐久間にだけは本当のことを話そう、と。
佐久間に、午後迎えに来て欲しいとメッセージを送ると、すぐに返信が来た。
『もちろん!』
『でも本当に大丈夫なの?』
『昨日まで高熱って聞いてたから心配でさ…。』
『無理だけはしないでね。』
画面を見た阿部は、胸が締めつけられた。
(ごめん、佐久間。)
嘘をついてしまったことが、申し訳なかった。
___________
午後一時。
マンションの前に一台の黒い車が止まる。
運転席の窓が開き、明るい声が響いた。
「あべちゃーん!」
佐久間だった。
「早く乗って! 体調悪いんでしょ? 今日も俺、安全運転だから!」
その声はいつもと変わらない。
だからこそ、阿部の足は止まった。
「……めめ。」
「大丈夫。」
隣に立つ目黒が小さく頷く。
「俺もいる。」
阿部は深呼吸を一つして、車へ歩いていく。
助手席の窓まで来ると、佐久間は笑顔のまま首を傾げた。
「えっと……。」
見知らぬ女の子が立っている。
「ごめんね、今友達待ってて――」
言いかけたところで、目黒が静かに口を開いた。
「佐久間くん。」
「落ち着いて聞いて。」
佐久間の表情が真剣になる。
「どうした?」
目黒は阿部を一度見つめ、それから言った。
「この子が、あべちゃん。」
一瞬、時間が止まる。
「…………え?」
佐久間は阿部を見る。
長い髪。
華奢な身体。
きれいめなナチュラルコーデ。
どう見ても、知らない女の子だった。
「めめ、何言って――」
「……佐久間。」
その声に、佐久間の言葉が止まる。
聞き慣れた呼び方。
少しだけ泣きそうな声。
「俺……。」
阿部は俯いたまま、小さく言った。
「ごめん。」
その瞬間だった。
佐久間の目が大きく見開かれる。
「……あべちゃん?」
阿部はゆっくり頷いた。
「四日前、朝起きたら……こうなってた。」
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#BL
kaede🍁
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おその★
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沈黙が流れる。
佐久間は何度も阿部と目黒を見比べた。
信じられない。
そんな表情だった。
それでも、車を降りると阿部の前まで歩いてくる。
じっと顔を見つめる。
「……その眉毛の下げ方。」
阿部が少しだけ困ったように笑う。
「え?」
「不安になると、そういう顔する。」
佐久間はふっと笑った。
「あとさ。」
「『ごめん』って言う前に、一瞬息止める癖。」
阿部は思わず目を丸くした。
「やっぱり。」
佐久間は安心したように大きく息を吐く。
「本当に、あべちゃんだ。」
次の瞬間。
佐久間はそっと自分より低くなった阿部の頭へ手を乗せた。
ぽん、ぽん、と優しく撫でる。
「いっぱい怖かったね。」
その一言だけだった。
「……っ。」
阿部の目から涙があふれる。
「ごめ……。」
「謝らない。」
佐久間は少しだけ眉をひそめる。
「一番しんどかったのは、あべちゃんじゃん。」
「でも、みんなに迷惑――」
「そんなこと言うな。」
言葉を遮るように、佐久間は力強く言った。
「俺たちはメンバーで、親友だろ?」
「困ってるときに頼られなくて、何の親友なの。」
阿部はとうとう泣き崩れた。
目黒は少し離れた場所でその様子を見守っている。
佐久間は阿部の肩をそっと抱き寄せた。
「大丈夫。」
「今日は俺も一緒にいる。」
「みんなびっくりすると思う。」
「でも、ちゃんとあべちゃんの話を聞いてくれる。」
「だから、一人で全部背負わなくていい。」
阿部は涙をぬぐいながら何度も頷いた。
「……ありがとう、佐久間。」
その呼び方に、佐久間はいつもの明るい笑顔を浮かべる。
「よし!」
「じゃあ、親友と後輩を乗せて出発しますか!」
わざといつもの調子でそう言うと、車のドアを開けた。
その笑顔のおかげで、阿部の心はほんの少しだけ軽くなった。
コメント
2件

長年のメンバーだからちょっとした仕草でわかるんですね。 その明るさが救われていますね。 一歩引いて見守る🖤もかっこいい😎
めちゃくちゃ良かった……!佐久間の「眉毛の下げ方」と「息止める癖」で気づくシーン、親友の解像度の高さに涙出たわ。あべちゃんが「みんなに迷惑」って言いかけるの、めっちゃ分かるけど、それ被せずに受け止めてくれる佐久間の存在感がすごく温かい。この関係性、ずっと見てられる。