テラーノベル
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蔦の絡まる黒い扉の向こうには、夜の闇が待っていた。恐る恐る進む先には、荒れ果てた庭が広がっている。
二人は闇の中に浮かぶ古びた館へ、吸い寄せられるように歩いていった。館の窓からは、わずかな灯りが漏れている。
「こんばんは〜。誰かいませんか〜?」
人の気配はない。クロの声だけが虚ろに響く。
館の重い戸を押し開けて中を覗いたが、やはり誰もいない。
バサバサバサバサバサバサッ
突然広間の奥から、大きな塊のようなものがすごい勢いで飛んできた。
「うわぁっ、コウモリだ!」
ウルフが悲鳴を上げる。
数百匹ものコウモリが二人の前を掠めて、開け放たれた戸から夜空へと飛び出していった。
「なんだか気味が悪いよ。やっぱり戻ろうよ!」
ウルフは早くも怖気付いている。クロは「なんだよー。『楽ダ』を見つけるためだろ。さあ、行こう!」と、先を歩き始めた。
グゴゴー……ガガゴー……。どこからか奇妙な音がかすかに聞こえてくる。
どちらが言うともなしに音の方へ進むと、地下に通じる階段が現れた。そこにはポツンとコウモリ型の目覚まし時計が置かれ、張り紙がしてある。
『私は今、地下室で深い眠りについている。決して起こしてはいけない。もし眠りを妨げる者がいれば、生き血を吸われると思え。byドラキュラ』
「ドラキュラ!?そうか!ここは吸血鬼の館だったんだね。よ〜し、『楽ダ』のこと尋ねてみようよ!」
ウルフは目覚まし時計を掴むと、地下への階段をあっという間に駆け降りていく。
「あ!ウルフ、待てよ」
クロも慌てて追いかける。
下に向かうにつれて、ひんやりとした空気が体にまとわりつく。グゴゴー……ガガゴー……と言う音も、次第にはっきり聞こえてくる。
階段を降り切ると、目の前に不気味な光景が広がった。だだっ広い地下室一面に、数えきれないほどの棺桶が並んでいる。
「見つけるな」と書かれていたのに、二人はドラキュラの棺桶を探し当ててしまった。中からグーゴーと音が響く。奇妙な音の正体は、ドラキュラのイビキだと分かったその時。
ギロギロギロギロギロギロギロギロギロ!
耳が痛くなるような目覚まし時計の音が、出し抜けに地下室の静寂を破った。ウルフはびっくりして時計を放り投げる。
棺桶の蓋が音もなくスーッと開く。中から青ざめた顔の男がゆらりと身を起こした。
黒いマント、背中にはコウモリのような翼。口の端から覗く鋭い牙からは、ポタポタと赤黒い液体が滴り落ちている。
「お・こ・す・なと書いてあっただろう!」
ゾッとするような低い声だった。
ドラキュラは棺桶から立ち上がり、怒りに満ちた顔つきで二人の方へやってくる。
「ドラキュラを怒らせちゃったよ〜」
ウルフはクロの後ろへ隠れる。
「ウ、ウルフ!逃げるぞ!」
クロたちは夢中で駆け出したが、ドラキュラは翼を広げて子分のコウモリと共に追いかけてくる。鋭く尖った牙がギラリと光る。
クロは、『ドラキュラに血を吸われた者は吸血鬼になり、永遠にドラキュラの子分として生きなければならない』という話を授業で聞いたのを思い出した。絶対に捕まるわけにはいかない。
ドラキュラは既に、二人に覆い被さらんばかり。階段を駆け上がるクロとウルフは、足がもつれて今にも倒れそうだ。
「苦しいよ……。僕、もう走れない……」
ウルフが弱音を吐いた時、クロが叫んだ。
「さっきの扉だ!」
二人は最後の力を振り絞り、蔦の絡まる扉に体当りして、元の扉に囲まれた場所へ転がり出た。
「はぁはぁ……ここまでは追ってこれないみたい……助かった……」
『楽ダ』を手に入れる道のりは、どうもラクではないようである。
ノア
コメント
1件
うわー、今回もドキドキさせられた!第1話で「行くな」って警告されたあの扉の先が、まさか吸血鬼の館だったとはね。クロの「『楽ダ』を見つけるためだろ」って言い放つ強気っぷりと、結局全力で逃げ帰る展開のギャップが面白かった。ドラキュラの「お・こ・す・な」の低い声、めっちゃ怖かった……。でもその直前にウルフが時計を放り投げちゃう間の悪さ、思わず笑っちゃったよ。ラストの「ラクではないようである」って一文で、これからまだまだ試練が続きそうな予感。続きが気になる!