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心臓がもたん❤️
撮影が終わった後も、私は自分の唇に残る感触を忘れられなかった。
——涼太の唇が、離れなかった。
それはほんの一瞬の出来事。
けれど、演技ではない何か を感じたのは気のせいではないように思えた。
「……お疲れ」
控室に戻ると、涼太が先にいて、ソファに腰掛けていた。
普段と変わらないように見えるけど、どこか落ち着かない雰囲気が漂っている。
私は何を話せばいいのかわからなくて、黙ったまま荷物を整理し始めた。
だけど——。
「……さっきの、気にしてる?」
涼太の声に、ドキッと心臓が跳ねる。
「え……?」
「……キスのこと」
ズバリと言われて、思わず言葉を詰まらせた。
気にしていないふりをしようと思ったのに、喉がうまく動かない。
「……涼太こそ、気にしてるの?」
やっとの思いで返した言葉に、涼太は小さく笑った。
「……気にしてなかったら、こんなふうに話してないよ」
低く響く声が、静かに胸の奥を揺らす。
やっぱり、涼太も何かを感じていたんだ。
控室の空気が、妙に重くなる。
言葉を探して、視線をさまよわせた瞬間——。
「……あのキス、演技だけじゃなかった」
涼太が、一歩近づいてくる。
距離が近い。心臓がうるさい。
「俺は……まだ、◯◯のことが好きなんだと思う」
その一言が、胸の奥に深く響いた。
目を見開いたまま動けなくなった私を、涼太はじっと見つめてくる。
「……どうする?」
どうする、って。
私だって、本当は——。
次の瞬間、涼太の手が私の頬に触れた。
「……もう一回、キスしてもいい?」
甘い声が、耳元で囁かれる。
私は抗うこともできず、ただ——静かに目を閉じた。