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💙side



寝ている芝居をして、照が部屋を出て行くのを感じてから、おもむろに目を開いた。

宙に浮かぶような抱き心地に、思わず頬が緩みそうになった。


実は、照に姫抱きされるの、嫌いじゃない。

てか、好き。

結構、いや、大好き。


ファン向けにふっかを抱えて筋トレする動画を上げているのを見るたびに、何で相手は俺じゃないんだろうと思っていた。

いや、外向けに公開なんか死んでもされたくないけど、一言くらい断りがあったっていいだろ?


俺たち、付き合ってるんだし。


今日は珍しく撮影が巻いて終わり、照に会いたい一心で大好きなサウナも我慢して、照にメッセージを送った。既読はすぐに付いたし、早く帰るね♡という甘々な返信までしといて、結局照は全然帰って来なかった。


何度も帰ろうかなと玄関とソファの間を行き来し、やっぱり諦めきれなくて、手持ち無沙汰に台本を読んでいたらそのまま寝落ちしてしまった。


そして鍵が開き、玄関先でカチャカチャやっている音で目が覚めた。


なんて言おう?


おせぇよ

じゃ、怒ってるみたいだし、

おかえり

じゃ、俺らしくないし……


そんなつまらないことでうじうじ悩んでいる間に、入って来た照の気配に慌てて目を瞑る。


………寝たふりしよ。


それから、なんやかやあって、抱き上げられて、俺は今、寝室に放置されてる。


💙「はぁ、バカか。俺は」


時刻はもう2時前。

帰るにも中途半端な時間。悪いことに、こっちは明日は5時起き。ここは自宅ではないから、帰宅時間を考えるとそれよりも早く起きなければならない。


💙「久々に照とって思ったんだけどな…」


そんなことを一人ごちても仕方のないことだ。


照と会うのは実に1週間ぶり。


束縛は嫌いだとか、パートナーより友達を取るだなんて取材の時は散々言っている俺だけど、照はそのカテゴリーが重なっているからか、会えない日が続くとどうしても寂しくなってしまう。照から見て俺が素っ気なく見えるのは、照の方が俺より構う頻度が高いだけだ。


毎日おはようとおやすみを欠かさない照は、こういう恥ずかしい自分を隠したい俺にとっては都合のいい相手と言えた。


今目が覚めたテイで、起きて行くか。


もう一度、キスくらいはしたい。できればハグもされたい。照の大きくて逞しい身体に包まれると、えも言われない幸福感に包まれる。


💙「照?」


おずおずと、リビングに戻ると、照はいなかった。どうやらシャワーでも浴びてるらしい。

つくづくすれ違いの夜だ。

まさか風呂場に乱入するわけにもいかないし、俺は諦めて寝室へ戻った。






💙「んあ?えっ!!」


ベッドに横になって起きて待っているつもりが、いつの間にか本気でまた寝ていたらしい。目の前には照のあどけない寝顔。 思わず見惚れていたら、スマホが鳴った。


💙「やべ!!!」


着信はマネージャーから。

家に俺がいないんで、きっと電話を掛けてきたのだ。

俺は飛び起きて、ベッドから降りた。


💛「翔太?」


眠い目をこすりながら、起き上がって来た照を、見る。手元のスマホは、それから2度ほどコール音を鳴らして、一度切れた。


💙「キスしろ。そして、抱きしめて?」


照は、訳がわからないまま、それでも俺を全身でぎゅうっと抱くと、キスを落とした。

手の中のスマホがまた鳴る。

俺はスマホを耳に充てながら、口パクでまた来ると言うと、照の家を飛び出した。



💛side



疾風の如く出て行った翔太をぼんやりした頭で見送った。

寝起きでわけわかんなかったけど、特大級のデレを貰った気がする。最後は『愛してる』と言ってなかったか?


落ち着いて考えてみれば、もっと唇を味わいたかったし、翔太の体温を感じたかった。


💛「キスしろって言ってたな」


翔太の要求がストレートかつ無駄がなかったことに、今さらながら笑えてきた。


後で改めて聞いてみたいけど、たぶん、聞いたら絶対怒るやつだ。

俺は幸せな気分で寝床に戻り、バタバタだった昨日からの自分たちの逢瀬を微笑ましく思い返していた。








おわり。


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