「…っクシュン!」とくしゃみをする貴方。
もう暖かな季節になってきたと実感しながら、部屋の埃を掃除しています。
すると、玄関が開く音が聞こえてきました。
掃除を中断して、マスクを外しながらそこへ向かえば、優しい笑顔の彼がいました。
おかめ「〇〇ちゃんただいまぁ〜」
両手を広げて待っているおかめに、貴方は「おかえりなさい」と抱きつこうと駆け寄ると、彼は「…あ」と何かを思い出した顔で貴方を止めます。
おかめ「先に、手洗いうがいお着替えね」
そう言って脱衣所へ行ってしまいました。
貴方は掃除を再開し、区切りのいいところまで終わって背伸びをすると、清潔なシャツに着替えたおかめが後ろから抱きしめてきました。
おかめ「やっと〇〇ちゃんに触れられる」
貴方の肩に顔を埋め、甘えてくる彼はまるで大きな猫のようです。
おかめ「…掃除きつかったでしょ?あとは俺がやるからさ、〇〇ちゃんは休んでて」
おかめは持ってたフローリングワイパーを取って、すいすいと残りの掃除をしてくれます。
「あと床だけだから大丈夫」と貴方は言います。
おかめ「〇〇ちゃんの健康のためだよ、それに床は一番埃まうから、ね、俺にやらせて」
ハウスダストアレルギーで花粉症の貴方にとって、春はとても辛い季節です。
外出するときはマスクと眼鏡が手放せず、埃が少しでもまうだけでくしゃみが止まらなくなり、目が真っ赤になります。
「埃を浴びないように」とおかめに部屋へ連れて行かれ、貴方の好きなお菓子と飲み物を置いていってくれました。
「過保護だなぁ」と呟きながら携帯を見ると、お花見の映像が流れてきました。
花粉症じゃなければこういうのも楽しめるのかな?そう思いながら、清潔な服に着替えます。
おかめ「…お待たせ、掃除終わったよ」
お昼寝をしようと横になったタイミングで、おかめが貴方を呼びに来ました。
寝たふりをしようと思い、そのまま起き上がらずにいると、おかめはベット脇に座り、貴方の頭を撫でます。
おかめ「…んふふ、寝顔かわいい」
独り言を呟きながら貴方の頬を突いたり髪をいじったりします。
おかめ「…最低かもしれないけど、俺ね、〇〇が花粉症なの、ちょっと嬉しいんだ」
意外なことを言うおかめに、内心驚いていますが、貴方は寝たふりを続けます。
おかめ「だって、〇〇が外に出にくいって、俺が大好きな〇〇を閉じ込めてるみたいでドキドキしちゃうんだもん」
ネガティブな事を言われると思ったら、彼自身の独占欲を知ってしまった貴方は、少しの恐怖と愛おしさが芽生えます。
おかめ「…はは、こんな事知られたら引かれるかなぁ」
目を開けると、うっとりとした顔のおかめと目が合います。
おかめ「あ、おはよ〇〇。掃除終わったから降りてきてもいいよ」
彼の独り言を聞かなかったことにして「ありがとう」と言います。
ベッドから起き上がって部屋を出ようとすると、おかめに腕を掴まれます。
おかめ「あのさ、〇〇ちゃん…」
「なに?」振り返ってみると、薄桃色に染まった頬で口を開くおかめと目が合います。
しかし、少しの沈黙の後目を逸らして彼は言いました。
おかめ「やっぱ、なんでもない」
「気になるから教えて」と貴方は言います。
おかめ「…なんて言おうとしたか忘れちゃった」
わざとらしく頬を掻くおかめ。
貴方は何も知らないふりをして「そっか」とだけ言いました。
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