テラーノベル
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プロローグ―君は誰で、私はいったい何者か……。
なにもない暗い森の中。霧が立ち込めて雨が滝のように降り全身を濡らす。
「寒い……。」
雨の冷たさが全身に伝わるたびにはっとして、この現状を思い知らせる。雨の冷たさに凍えて震える体を必死に擦る。
果てのない長いながい旅。霧と雨のせいですべてを曖昧にし、こころさえも曖昧にし、俺の心を小舟のように揺らす。
―この旅はいつ終わるのだろう
永遠に続く森の中を俺は歩き続ける。泥濘んだ地面に足を取られて体が大きく傾いて転ぶ。
―これからどうすればいい……。
泥に足を取られ歩くことすら許されない。服に付いた泥には目もくれず、また震える体を擦って歩き始める。豪雨によってどこかへと流れる雨と泥の激しい音がより強く聞こえ始めた頃、自身の手が透き通り始めていた。今に始まったことではないせいなのか俺は悲しみさえ何処かに消えて、何も感じずにただ受け入れた。
俺は雨に濡れて輝く苔の生えた大きな岩に腰を下ろした。
「ここまでか……。」
もっと人を救いたかった。誰も見ることのできない心と向き合って相手の傷を癒やしていく。その仕事をもっとしたかった。
雨風に耐えきれずに乱れた前髪、濡れて少し透けてる白衣を無視して透き通った自分自身の体を抱きしめた。温かささえ感じられないが、今の自分にできることの限界だった。
―一番癒やすべきだったのは患者より、自分自身だったかもしれない。
また歩き続けても行き先は暗く、泥と言う名の闇に飲み込まれてしまいそうだ。
自分の手を天高く伸ばすと太陽の淡い光が手を通り越して俺の顔を情けなく照らす。
―嗚呼…あとはアイツに。
「あとは頼んだぞ、“私”」
コメント
1件
うわ、すごく重くて美しいプロローグでしたね…。主人公が自分を癒せなかった Therapist という設定、霧と雨に象徴される喪失感と「あとは頼んだぞ、“私”」というラストの台詞が効いています。誰かともう一人の自分がいるのか、それとも別の誰かに託したのか、それだけで続きが気になります。文体の透明感が物語のテーマに合っていて、良い導入だと思いました。
#ブラフラ
なみゃ
18
skbn
11
て ぃ あ ら 。
2,014
8