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楽曲「シャルル」 の考察という感じのストーリーにしました!! なにか、アドバイス等あれば是非ください!
「さようなら」
そう、言ったのは、彼女からだった。
だというのに、彼女は涙を流していた。
僕は、彼女の泣いた顔が、嫌だった。
それで、昨日までの楽しい日々が消えゆくのが、嫌だった。
だから、僕は。彼女にこう言ったのだ。
「笑って」と。
花束、などと形容するにはあまりにも質素なものだった。
300円程度のキーホルダーを2つ、ペアルック。彼女の誕生日だった。
彼女に渡して、また笑って、楽しい日を送る、つもりだった。
結局それは理想に終わり、このプレゼントも意味をなさなくなってしまったわけだが。
「はぁ…」
意味もなく、あてもなく、ただ無機質に街を彷徨った。
そして、ただただ呆然と、彼女との『理想の日々』を妄想していた。が。
それも、もういいか。
彼女の事を、考えるのも今では辛い。
そうだ、空っぽなのが1番楽なんだ。
空っぽでいよう。それでいつか、別の人の深い、甘い愛と温もりで満たしてしまえば。
……愛?
あいつ以外を、愛する?
それは、その人の事だけでこんなに悩んで、辛くなれるほどなのか?
その愛は、こんなにも僕を困らせられるほどの物なのか?
…わからない。
それがわからない、からこそ。僕には彼女しかいなかったというのに。
やがて、僕のせせり泣きは慟哭に変わり…。
「何度も、何度だって愛を謳った!謳って、謳って…雲の上、遥か彼方にまで届くほど、謳った!!」
その愛すらも、今となっては我儘が重なった僕たちにドクドクに濁され、見る影もないと言うのか。
「嫌だ、嫌だ!別れたくない!僕は、お前が好きなんだよ…!!」
キリがないほどすれ違って、喧嘩したのがいけなかったのだろうか。
いや、それでも僕は彼女を望んでいたし、それは彼女も同じの筈だ。
あんなに、お互いの理想の日々を語り合った。いつの間に、その日々は、こんなにも遠くなってしまったんだ…!
「最後が喧嘩別れじゃなく、お互い笑えただけ、まだマシってか…」
僕のその寂しげな声は、迫り来る夜に掻き消されて、消えた。
朝日が差し込んで、目が覚める。
「はぁ。」
という、聞き慣れたあの人のため息。
そして、窓から見えるこの町並。
私は、隣町の住みだからわかる、ここは、彼の街。
あぁ、これは夢なんだ。
何日かたっても、まだ貴方は夢に出てくるのね。
…彼は、私の事を忘れているだろうか。いや、そうに決まってる…か。
私から遠ざけておいて、覚えてるはずがない、新しい恋人でも作っている事だろう。
そうでしょう?
私には、恋愛相談をしていた友人がいる、が…この事は黙っておこう。
どれだけ、葛藤に苛まれる日があったとしても……それすら、貴方を愛した証拠になるんなら、悪くはないわね。
飾った恋、飾らない恋。価値観の違い。
無理があったのかもしれない。
刹那、世界は暗転する。やっぱり夢なんだ、と思う。よく出来た世界だ。
そして、次に出てきた世界は。すぐにわかる、これは、私が告白された時の記憶だ。
当時友人だった彼から、着いてきて欲しいと言われ、どんどん人気のない静かな裏山へ歩いていく。
「この辺でいいだろ」
「ど、どうしたの…?」
「……結愛、ここには誰もいない」
「…?ええ、そうね」
「XXX」
えっ。という言葉も発せないまま、私は現実世界に連れ戻される。
1番重要な所を聞けなかったな…。
まぁ、今となってはあの言葉も汚れてる、か。
あんなに、甘かった2人が混ざり合った果てがこれか…。
「…ハハ」
乾いた笑みが漏れる。
でも…
「貴方が離れる痛みまでも、私は愛してるよ…だからこそ、私は…」
そう言って、私はとある言葉を呟いた。
泣いて、泣いて、叫んで。
いつの間にか、夜も明けていた。
そうか、ずっと迷っていたんだ。
だから、変われなかったから、僕等はこうなったんだ。
そうだろう?だって、今のこの状況は、互いの自業自得故にあるのだから。
気づけば、僕は足を動かしていた。
走って、走って、やがて、その山にたどり着いた。
『ずっとお前が好きだった、結愛』
そう、言った場所だ。
ああすればよかった、こうすればよかった。
後悔なんて日に日に増えた。
それもこれも、君に話したかった。
でも、もう僕の隣に君はいない。
どれだけ愛を謳おうと、喧嘩して許して、それの繰り返しじゃダメなんだ。
それじゃ、意味がなかったんだ。
なんで、そんな簡単な事に気がつかなかったんだろう。
でも、だからこそ。
僕は、まだ彼女の事が好きだ……しかし、こんな簡単な事にも気づけないような僕では、彼女を幸せにさせる事は出来ない。
だから……。
………そうして僕は、皮肉にも、僕が告白をして、そして2人が恋人になったこの場所で、思いきり叫んだ。
「笑いあって、さよなら……!!」
と。